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競技運営 (総括)
1.組織
(1) 専門責任体制
 大会運営本部のもとに競技会場部を置き、安田幸男AOC事務局長が統括した。佐藤典スポーツディレクターは、IWGAとの連絡調整に当たった。
 31競技毎に専門の担当者2人を配置し、この2人がそれぞれの競技運営・会場運営に当たった。大会期間中は、本部の競技会場部4人が24時間体制で、各競技専門担当者との連絡調整を行った。
 この専門責任体制は2000年4月からスタートし、各担当者は各競技団体調整担当窓口であるテクニカルデリゲート(TD)及びIFと、競技用具の手配・輸送方法、施設整備等について幾度となく協議を重ねた。唯一、水上スキー・ベアフット用ボートのIF手配の約束が守られなかったことが非常に残念であるが、結果的には、各競技毎の2人の専門責任体制が各競技をスムーズに運営できた要因だと考えられる。

(2) 基本的な運営体制
 各競技会場には、競技会場本部を置き、各競技専門担当者2名がそれぞれ競技運営部長と会場運営部長に就き、責任者として運営を実施し、AOC本部との調整を行った。
 主に以下の班体制・係を基本としていたが、各競技会場毎に競技及び会場の特性に合わせて、運営体制を決定した。
 
競技会場本部  
競技運営部  
 競技運営部長  
 総務班 総務係、役員・審判員係
 選手・器具管理班 選手管理・召集・誘導係、器具運搬係
 競技進行班 競技会場係、練習会場係
 競技記録班 記録係、速報係
   
会場運営部  
 会場運営部長  
 総務班 総務係、庶務係、接遇・控え室係、受付案内・入場券販売係、ボランティア係
 報道広報班 報道・放送係、広報係
 施設管理班 施設管理係、清掃美化係、会場設営係
 警備交通班 警備係、観客整理係、駐車場係
 医療救護班 救護係
 式典表彰班 進行係、表彰係、選手確保・誘導係、音響係・放送係、掲揚係
 
(3) 当日の連絡体制
 各競技においては毎日、競技開始前と終了後に、選手のスターティングリストや競技スケジュール確認のためのミーティングが持たれた。
 変更等があった場合には、TDから各競技専門担当者に、そして競技会場部およびメーンプレスセンターに連絡が入り、メーンプレスセンターでは、報道関係者に最新の選手リストや最新のスケジュールが配布された。

2.競技チケット及び観客対応
(1) チケット販売後の日程変更
 各競技の観戦前売チケットの販売を開会式の半年前から開始した。AOCは、チケット発売後は競技日程の変更を避けるように事前に各IFに繰り返し要請した。しかしながら、本番1〜2ヶ月前になって、体操系競技とローラーホッケーで、日程変更が生じ、ファウストボールでは1チームが不参加となったため、競技日程の変更を余儀なくされた。このため、日程変更を知らずにいた前売り券購入者から、苦情が寄せられた。
 また、空手道においては2日目の競技スケジュールを数名の競技進行者のみの独断で変更してしまい、取材に行った報道関係者からの苦情でAOCも初めて知った、という事態があった。このため、AOCは空手道のIFに対し抗議文を出し、他のIFに対しても競技日程を勝手に変更することの無いよう文書で申し入れた。
(2) 休憩時間を必要とする競技チケット
 フィンスイミング、ライフセービング、ローラーホッケーは、同一日の競技中に、数時間の休憩時間を取らざるを得ない競技であるが、この休憩時間中に、観客が一斉に帰ってしまい、競技再開時には観客もマスコミもほとんどいない、という現象が生じた。
 AOCではこれを避けるため、当日券を二度に分けて販売するなど試みたが、次回大会からは、該当IFでも、この問題を検討すべきである。
(3) まとめ
 大会前からのTDとの周到な打ち合わせにより、各競技とも競技日数は適正であった。ラハティ大会の反省を生かし、終了時間が早まりそうな競技にあってはあらかじめ観客との交流イベントやエキシビションマッチを用意することで、観客を退屈させない工夫をした。その結果、観客からは大好評を得た。
3.競技数と参加者数
(1) 各競技の参加選手
 参加競技と参加者数はIWGAが決定し、各IFに招待状と実施種目、授与メダル数、選手・役員数、AOC提供の宿泊日数等を明記したパスポートを発送した。
 参加選手数は、ほとんどの競技で予定数を下回り、補充の効かない直前での不参加表明が多かった。団体競技でも直前のキャンセルがあり、競技日程や配宿作業などに大きな影響を被った。いくつかのIFからは、減った選手数分を役員数に振り替えるよう要請されたが、AOCは受け入れなかった。
 参加者の変更は、AOCの予測をはるかに超えて多く、しかも、競技開始直前まで続き、開会式の8週間前までの参加申請というルールは、全くの有名無実だった。
(2) 各競技の役員
 IWGAから発送されたパスポート記載の役員数では競技運営ができないIFが多い。この場合、開催国の競技団体に多大な経費負担が掛かるが、これを負担しようという意志のあるIFは少なく、今後のワールドゲームズ運営にとって大きな課題である。
 日本の国内競技連盟及び秋田県の競技団体の協力なしには第6回ワールドゲームズの成功はあり得なかった。
 大会に参加したIF役員数は、IWGAがパスポートで承認した数をはるかに上回った。パスポート内の役員数は420人余りであったが、実際は1,861人が参加した。これらの役員は主に監督、コーチ、トレーナー、審判員などのほか、日本の国内競技連盟からの競技運営要員だった。
4.競技レベル
 IWGAと秋田県の間で交わされた契約書では、IWGAは、ワールドゲームズの競技レベルが世界最高水準となることを保障し、参加各IFもトップレベルの選手を派遣することに最大限の努力を払うことになっていた。しかし、日本でも人気のあるいくつかの競技では、直前まで選手が決まらず、そのレベルも世界トップであるかどうか疑問の声もあった。
 IWGAのサポートも得られたが、結局はAOCが、マスコミの認知度の高い競技のIFと直接交渉をせざるを得ず、また、交渉結果は、必ずしも満足できるものではなかった。
5.広域開催
 秋田大会はワールドゲームズ史上初めての広域開催となった。ボウリング、コーフボール、水上スキー、パラシューティングなどの競技が、秋田市から車で1時間程度かかる場所で開催された。
 しかし、それぞれの開催場所で選手・役員のもてなしに気を配り、様々なイベントで大会の盛り上げを図ったため、これら競技のIFからは好評を得た。
 また、本部ホテルからこれら開催場所まで競技時間に合わせ毎日シャトルバスを運行したほか、上記4競技では他競技との交流を図るために、宿泊を一泊多くすることでIWGAと合意した。
6.観客数
 競技観戦の入場者総数はAOCの予想を大幅に上回った。日本国内ではほとんど知名度がなく、観客数の予想さえ困難だった競技もある中での盛況ぶりであった。感動を呼んだ開会式が、その後の各競技に波及したものと思われる。特に、パラシューティングは、期間中約3万人の観客があり、最高の観客数を記録した。
 前売り券の売れ行きは、一部競技を除いてさほど芳しくなかったが、当日券は、多くの競技において発売1時間後には売り切れた。ただ、競技運営上、数時間の休憩時間を置かざるを得ない前述した3競技においては、当日券が売り切れているにもかかわらず、再開後の会場には空席が目立ち、再開後の入場券を求めてきた人々から「席が空いているのにどうして入場できないのだ」との苦情があった。
7.課題
 AOCとしては、今後のワールドゲームズの発展のために以下の三点についての課題を解決する必要があると考えている。
 
(1) 開催直前まで選手の参加が確定しないため、期待感の醸成につながらない。とりわけトップレベルの選手の参加決定が、メディアに対して重要なPR機会となることを認識する必要がある。
(2) ワールドゲームズヘの参加ルールの詳細が、各IFから参加資格を得た国内競技団体(NF)に伝えられていないため、IWGAパスポート記載人数に与えられた権利(費用負担の原則)とそれ以外の参加者に与えられた権利とに、参加NFは区別が付いていない。この点については、IWGAの確認も不十分ではないかと思われる。
(3) TDの処遇をきちんとしていない。すなわち、各IFは大会準備期間中、代表者であるTDに情報提供や経済的な面で何らの支援もしていない。
 競技の知名度が開催国で低い場合やT Dが開催国に住んでいない場合には、さらにその必要性が高い。








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