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仕事探しもNPOがお手伝い
生きがいにあふれた公益的で有償の仕事をつくる
 生きがいしごとサポートセンター(兵庫県)
 
新たな道に挑戦したいとサラリーマンからNPOの世界へ
 個々にNPO活動を行う団体だけでなく、NPO団体の立ち上げや活動そのものを支援する「中間支援組織」と呼ばれるNPOも登場している。兵庫県神戸市東灘区に拠点を構えるNPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(通称・CS神戸)もその一つだ。
 CS神戸は、阪神・淡路大震災をきっかけに生まれたボランティアグループ「東灘・地域助け合いネットワーク」の代表として活躍してきた中村順子さん(54歳)が中心となって96年10月に設立されたNPOで(本誌96年12月号既報)、拠点提供や資金助成、グループづくりのコンサルテーションなどを通じて、これまでに30以上のNPOグループを支援してきた実績を持つ。また支援をするだけでなく、NPOの社会的基盤を強化するために自らも、自主事業や受託事業、研修調査、講座事業などの様々なプログラムを行っているが、その一つに、神戸市中央区の県中央労働センターに拠点を置く「生きがいしごとサポートセンター(愛称・ワラビー)」の運営がある。
 このワラビーは兵庫県が企画公募した事業をCS神戸が受託したことで生まれたNPOで、2000年10月から同団体の専任プロジェクトスタッフによって運営されている。事業内容は、有償で公益的な仕事をしたい人と、してほしい人や団体を募集・登録し、両者をマッチングさせたり、NPO起業の支援などを行うといういわば「NPO版ハローワーク(職業安定所)」。センターマネジャーを務める国枝哲男さん(51歳)は、アパレルメーカーに勤めていた現役のサラリーマンからの転身組である。
 
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CS神戸が運営する障害者らの手作り品ショップ「神戸ふれあい工房」は、神戸市社会福祉協議会からの委託事業
 
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神戸北野坂で車イスの人を介助するための道路状況、トイレ調査の様子
 
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センターマネジャーの国枝哲男さん
 
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ワラビー交流会の様子。仲間たちが会って自己紹介、交流をする会
 
 「会社を通じてある福祉財団の設立にかかわったのをきっかけに、NPOに関心を持つようになったんです。それで、もっとNPOのことを勉強してみたいと、CS神戸が行う「NPO起業研究員(インターンシップ)」の第1期研修生に応募。自分の空いている時間に自由に参加できる上、費用は6か月間で6万円。これで勉強ができるなら安いもの。当初はその程度の軽い気持ちだったんですが、研修の過程で県の企画公募の企画づくりを任され、おまけにその事業を受託してしまった。それで中村理事長から、“あなたが企画を立てたんだから、あなたがやりいな”と背中を押され、逃げられなくなってしまいまして(笑)」
 国枝さんは冗談めかして就任のいきさつをこう語るが、現状のNPO活動に、家族が安心して暮らせるだけの収入は期待できない。それゆえ、会社の上司や同僚からは「管理職のポストを捨ててまでやる仕事じゃない」とさんざん引き止められ、「生活はどうするのよ」と妻からもなじられた。だがスタッフのカバン持ちのようにして、CS神戸が手がける各種NPO事業の現場に出入りしているうちに、いつの間にか、地域のニーズに応えて助け合い、共生する社会を追求するための有償の事業を起こす「コミュニティ・ビジネス」という新たな領域に惹かれている自分がいた。そして、国枝さんは覚悟を決めた。
 「幸い長男はすでに社会人3年生。長女も来春から大手外資会社に就職が決まったので、教育費もかからなくなる。家のローンももう終わっていた。ならばこのままダラダラと会社勤めを続けるよりも、新たな道に挑戦したい。今ならまだ、その体力も気力もある。定年まであと10年は待てないと思ったんです」
市民の潜在能力を引き出して起業を支援していきたい
 ワラビーの開設から約1年。これまでの登録者数は約300名を超えた。その内訳は学生から主婦、会社員、定年退職者と年齢も肩書もさまざまなら、求める仕事内容もまたさまざまだ。
 「このセンターの最大の特徴は、単にマッチングを行うだけでなく、求職者に対してはCS神戸がネットワークしている各種NPO団体での実地研修への参加や資金計画の相談、起業化の補助などを含めて、その人のライフスタイルに合わせて、提案をしていくところにあります。ミッション(使命感)がなければNPO活動やコミュニティ・ビジネスはできませんから、相談に際してはこれまでの経歴から現在の生活、将来の夢まで語り合うので、人生相談のようになることも多く、相談者のライフデザインを描く」という国枝さん。
 そうした面談の結果、たとえば「子どもの教育に関心があり、将来は教育関係のコミュニティ・ビジネスを立ち止げたいと考え、積極的に勉強中」という元高校教諭の30代の男性には、若者のサポートを行うフリースクールのNPOを紹介し、研修しながら起業を図ることを提案。「ボランティア活動をしながら両親の介護を経験。何か自分にあったものがないか模索中」という60代男性には、まずは各NPO団体での実習を提案、そのアレンジも担うといった形で便宜を提供してきた。
 さらにコミュニティ・ビジネスの勉強会やNPO活動に役立つ会計やパソコン教室の開催なども行っており、自分で起業していくぐらいの熱意を持って扉を叩けば、さまざまな道が開かれているという。すでにワラビーの支援を受けて、高齢者や障害者を対象とした地域密着型のIT(情報技術)をべースとした生きがいづくりの支援活動を始めた団体も誕生している。
 「お金やモノだけがすべてじゃない。地域に密着しながら自分の持っている潜在能力を発揮して小さな経済を生み出し、地域の活性化につなげることができれば、そこには“地域に役立てる”という自身の“生きがい”も生まれてくるはず」と国枝さんは言う。それは自らの経験から発せられる言葉でもあるのだろう。
 「この1年は、生きがいのある仕事を模索している人々の多さに目を見張り、ユニークなコミニュティ・ビジネスプランを温めている人々の発想に勇気づけられた。だからこそ今後は地域のニーズを把握し、起業に結び付けることに力点を置いて、“NPOで食える団体”を創り出していきたい。そうした成功事例をつくることが労働市場を活性化させ、雇用の拡大にもつながると思いますからね」
 日本ではまだ、NPOにかかわる現役世代の男性はごく少数派。だが新しい社会システムを構築するという目標に向かって突き進む国枝さんの瞳は、まるで少年のような明るい輝きを放つ。
 「娘が社会人1年生なら、親父の私もNPO活動の1年生。同じ1年生として、お前には負けないぞという気持ちで、今はとてもワクワクしてるんです」








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