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ありがとうを循環する地域通貨 2
 地域通貨による地域支え合いの形は、時を同じくして日本だけではなく、世界各地でも誕生してきています。ただし地域通貨は、論理的にも実際的にも発展途上にあり、市場経斉との関連度の強いものから、相互扶助に力点を置くものなど様々で簡単に整理できるものではありませんが、ここではまず海外の主なものをご紹介し、次号から国内編に移っていくこととしましょう。
タイムダラー(Time Dollar)
 1980年代初頭にアメリカの法律学者で弁護士のエドカー・カーン博士によって考案された、助け合いの精神に基づいて時間単位でサービス交換をするシステムです。その目的は、コミュニティーの再生、つまり、地域コミュニティーにおいて、人と人とが「国のお金を介在させずに」かかわり、誰もが社会的に価値ある存在として助け合うという血縁ではない拡大家族づくりを目指しており、サービスは青少年の育成や高齢者支援プログラムなど幅広いメニューとなっています。
時間銀行(Banca del Tempo)
 1991年にイタリア・バルマで誕生した時間銀行は、その多くの場合、日常生活周辺の小さな助け合い活動が中心で、交換は30分、1時間といった時間単位でやりとりされ、小切手帳に記入していきます(交通費等その他経費は実費精算)。また、貯めた時間分は短期間に使うことを奨励するシステムで、一方通行的にサービス提供・受給をせず、4、5か月間でその権利は消滅する仕組みです。
レッツ(LETS)
 1983年にカナダのバンクーバー島から始まった地域での交換取引システムのことで、今ではイギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、デンマーク、アメリカ、日本など各地に広がっています。サービスや財(物)を交換する相手と任意に交渉して値決めをし、それぞれが持っている小切手帳などに記入してサービスなどのやりとりをし、事務局に報告します。電子取引を行うところも多くなっています。
イサカアワーズ(Ithaca Houes)
1991年にアメリカのニューヨーク州イサカ市で始まった地域限定紙幣を使ったシステムで、イサカ市を中心に全米に広がっています。精巧なデザインが施された「紙幣」を地元の住民からなる理事会が「中央銀行」として発行し、有機農産物の直販や様々なサービス交換に活用され、地域経済活性化の一翼を担っています。
ヴィアバンク(WIR Bank)
1934年に設立されたスイス各地に拠点を持つ協同組合方式の銀行がヴィアバンクです。ヴィアとはドイツ語の「皆の」という意味と、「ビジネスの輪」の頭文字を取って付けられたもので、中小企業が互いに仕事を融通し合い、取引を活性化することを目的としており、スイス全土の7、8万人の中小企業者が加入しているといわれています。
〈地域通貨・海外の主な分布図〉
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※アルゼンチン以外の南米やアフリカ、東南アジア、ヨーロッパなどでも地域通貨システムを導入しているところはあります。








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