日本財団 図書館


巻頭言No.37
働く人と学生のボランティア参加の仕組みを
さわやか福祉財団理事長 堀田 力
この2、3年がチャンス
 私がボランティアの世界に飛び込んで、今年で10年になる。スタートした当時の思いは、1993年出版の「再びの生きがい」(講談社)に書いているが、その中で、「二、三十年後には、サラリーマンおよそ五千万人のうち、一千万人、また、七百万人余と推定される大学生、高校生のうち二百万人は、ボランティア活動に参加してほしい」と書いている。
 スタートした当時に立てた、20年後にボランティア団体5000、参加者1200万人という目標は、おおよそ予定どおりの伸び方で進んできていると思うが、サラリーマンと学生の参加については、はかばかしいとはいえない。
 私たちも、彼らが参加しやすくなる環境をつくるため、いろいろな仕組みを提案してきたが、これから2、3年が、しっかりした土台を築くチャンスであると考えている。
勤労者マルチライフ支援事業
 土台となる仕組みの一つが、厚生労働省支援で行う「勤労者マルチライフ支援事業」である。我が財団は、かねてから「社会貢献マーケット」をつくり、ボランティア活動に参加したい勤労者や企業と、参加を受け入れたいボランティア団体とが同じ場所に集まり、昔の「市場」のように人が集まって好みのものを手に入れる機会をつくろうと提唱し、小規模ながら広場をつくってきた。「勤労者マルチライフ支援事業」は、これを都道府県規模で、ITも活用して実現しようというものである。このプランを協議した勤労者マルチライフ支援事業推進会議は、私が座長を務め、また、運営を協議する分科会では、社会参加システム推進グループリーダーの蒲田尚史君が活躍した。このプランの核となるのは、各都道府県にある経営者協会と、対応するNPOであって、それぞれにプロジェクトマネジャー(PM)を養成し、企業サイドのPMが、担当地域の企業からボランティア活動に参加したい勤労者やそのOBを募り、NPOサイドのPMが、彼らを受け入れるNPOを探して両者をマッチングするというのが事業の骨格である。PMの情報源として、ボランティア情報データベースソフトも開発し、維持する。
 まず、モデル地域として、群馬、茨城、東京、神奈川、愛知、大阪、岡山、広島などを選び、本年度から本格的にスタートし、プログラム推進用の予算も付いている。3年後には、このプログラムによりどれだけのボランティアが生まれたかを評価する予定であるが、現状からすれば、成功はかなり難しい。よほどNPO側で積極的に動き、魅力的な受け皿をつくらなければ、働いている人は、容易には参加しないと思われるからである。
 しかし、せっかくのチャンスである。たとえば、「地域通貨」などは、参加しやすい活動であり、これを各地に広めるなど、みんなで協力して、何としても成功させたい。
 また、連合や、旭化成など個別企業も、このようなマッチングを進めようとしている。これらとも、しっかりネットワークを組んで進めたい。
文部科学省の社会貢献学習
 勤労者マルチライフ支援事業とネットワークを組むのが望ましいのは、文部科学省の総合的学習の時間や、これから制度化される「奉仕活動」のカリキュラムによる社会貢献学習である。勤労者やそのOBがボランティアとして、社会貢献学習の指導に参加すれば、内容も充実し、教師側も助かるであろう。そしてそれが、生徒たちが高校、大学に進んでからボランティア活動に参加するためのしっかりした素地をつくることは、疑いないところであろう。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION