はじめに
「新老人の会」会長
日野原 重明
「新老人の会」が発足したのは平成十二年の九月末でした。それから一年足らずの間に、会員数は千五百名を超えました。
発足してわずかのうちに、会では「はじめての俳句」「コーラスの集い」「パソコン教室」「世代をつなぐコミュニケーション技法」「戦争体験を語り継ぐ会」などがすでに活動を始めています。
本書は上記のうち「戦争を語り継ぐ会」の成果を問うものです。中央公論社で長く書籍の編集に携わった後、モーツァルトの研究を続け、また日本音楽療法学会の理事で、最近は作曲活動もしておられる本会員の井上太郎氏が一切の編集の労をとってまとめて下さいました。戦中戦後に日本人が受けた苦難の体験を語り継ぐものとして、三十二人の方々から寄せられた貴重な体験記です。
当時のリアルな実記として色濃く描かれているこの記録こそは、戦争体験者としての第一世代が、第二、第三世代の子や孫にじかに語りかける、戦争の引き起こした悲劇の書といえましょう。第一世代の新老人たちが受けた心の傷が第二・第三世代に率直に伝えられることが、二十一世紀に真の平和をもたらす上で有力な手段となり得るものと信じます。