附属書I 投棄することを検討することができる廃棄物その他の物
1 次に掲げる廃棄物その他の物については、第2条及び第3条に定めるこの議定書の目的及び一般的義務に留意し、投棄することを検討することができる。
・1 しゅんせつ物
・2 下水汚泥
・3 魚類残さ又は魚類の産業上の加工作業によって生ずる物質
・4 船舶及びプラットフォームその他の人工海洋構築物
・5 不活性な地質学的無機物質
・6 主として鉄、鋼、コンクリート及び同様に無害な物質から構成される粗大ゴミ(但し、これらの廃棄物については、物理的影響がその関心であり、かつ、投棄以外に利用可能な処分方法がない孤立した共同体を有する小島のような場所において当該廃棄物が生ずるような場合に限定される。)
2 1.4及び1.7に掲げる廃棄物その他の物については、浮遊する残がいを生じさせ又はその他の方法により海洋環境の汚染を増大させるおそれのある物が最大限度まで除去されていることを条件とし、かつ、投棄された物質が、漁ろう又は航行の重大な障害とならないことを条件とし、投棄することを検討することができる。
3 前記にもかかわらず、国際原子力機関が定義しかつ締約国が採択するデ・ミニミス・レベル(免除レベル)の濃度以上の放射能を有する1.1から1.7に掲げる物質については、千九百九十四年二月二十日から二十五年以内に、その後は二十五年ごとに、すべての放射性廃棄物その他の放射性物質(高レベルの放射性廃棄物その他の高レベルの放射性物質を除く。)に関する科学的検討(締約国が適当と認める他の要因を考慮した上で行う。)を完了するものとし、議定書第22条に定める手続に従い、当該物質を投棄することの禁止について検討することを条件とし、投棄することはできない。
海洋投棄が検討される廃棄物その他の物の影響評価」
(WAF、仮訳(案)見直し版)
(LC/SG20/3)
(*日本国政府承認の正式訳ではないが、外務省資料を参考に和訳したもので日本財団助成の浚渫土砂海洋投棄に係る環境影響評価調査研究委員会で使用している資料である。)
一般
1 一定の状況下で投棄を認めたとしても、それは、本附属書に基づき、投棄の必要性を減少させるため更なる努力を行う義務を免れるものではない。
廃棄物防止審査
2 投棄に代わる処理方法を検討するための最初の段階においては、適当な場合には、次の事項の検討を行うべきである。
.1 廃棄物の種類、量及び相対的危険性
.2 生産過程の詳細及び生産過程における廃棄物発生源
.3 次の廃棄物削減・防止技術の可能性
.3.1 生産の見直し
.3.2 健全な生産技術
.3.3 生産過程の変更
.3.4 投入物質の代替
.3.5 生産場所における閉鎖的なリサイクル
3 一般的に、必要な審査により、廃棄物の発生源において廃棄物の発生を防止するのための機会が存在することが判明する場合には、申請者は、関係する地方及び国の機関と協力して、特定の廃棄物の削減目標及び当該目標が達成されることを確保するための予備的な廃棄物発生防止審査を含む廃棄物防止戦略を作成し及び実施することが期待される。許可発給又は許可更新の決定は、そのような過程で作成される廃棄物の削減及び防止の要件が遵守されることを確保するものでなければならない。
4 しゅんせつ物及び下水汚泥については、廃棄物管理の目的は、汚染の発生源を特定し及び規制することにあるべきである。これは、廃棄物発生防止戦略の実施を通じ達成されるべきであり、また、汚染の主要発生源及びその他の発生源の規制に従事する関係する地方の機関と国の機関との間の協力が必要とされるべきである。この目的が達成されるまで、汚染されたしゅんせつ物の問題は、海洋又は陸上における処理技術を利用することにより取り扱うことができる。
廃棄物管理手法についての検討
5 廃棄物その他の物を投棄するための申請において、以下の廃棄物管理手法(番号の順に環境に対する影響が大きくなる)について段階的に適当な検討が行われたことを証明する。
.1 再利用
.2 生産場所以外の場所におけるリサイクル
.3 危険な構成要素の破壊
.4 危険な構成要素を軽減又は除去するための処理
.5 陸上処分、大気への処分及び水域における処分
6 廃棄物その他の物を投棄するための許可は、許可発給当局が、人の健康若しくは環境に対する不当な危険又は不均衡な費用を伴ずに廃棄物を再利用し、リサイクルし又は処理するための適当な機会が存在すると判断する場合には、拒否されなければならない。他の処分方法が現実的に可能かどうかについては、投棄と投棄に代わる処分方法の双方のリスクを比較評価し、検討されるべきである。
化学的、物理的及び生物学的特質
7 廃棄物を詳細に説明し及び特徴づけることは、投棄に代わる処分方法を検討するための重要な前提であり、また、廃棄物を投棄することができるかどうかを決定するための基礎となる。廃棄物が十分に特徴づけられておらず、人の健康及び環境に対する潜在的な影響について適切な検討を行うことができないような場合には、当該廃棄物を投棄することはできない。
8 廃棄物及びその構成要素を特徴づけるに当たり、次の事項を考慮する。
.1 起源、総量、形態及び平均的な組成
.2 物理的、化学的、生化学的及び生物学的特質
.3 毒性
.4 物理的、化学的及び生物学的持続性(残留性)
.5 生物又は堆積物中における蓄積及び生物学的変換
行動基準
9 各締約国は、人の健康及び海洋環境に対する潜在的な影響に基づいて、投棄が検討される廃棄物及びその構成物を審査するための機能を提供するために、国の行動基準を作成する。同基準において審査する物質を選択するに当たっては、人類の活動により影響を受ける発生源からの毒性及び持続性を有し、生体に蓄積する物質(例えば、カドミウム、水銀、有機ハロゲン、石油炭化水素、並びに、適当な場合には、ひ素、鉛、銅、亜鉛、ベリリウム、クロム、ニッケル及びバナジウム、有機けい素化合物、シアン化合物、ふっ化物、及び駆除剤又はその副産物で有機ハロゲンが含まれないもの)を優先する。同基準は、廃棄物を防止するための更なる検討の制度としても使用することができる。
10 行動基準は、上限値を特定するものとする。また、下限値を特定することもできる。上位の基準は、人の健康又は海洋生態系を代表する繊細な海洋生物に対する急性の又は慢性の影響を妨げるために設定されるべきである。行動基準を適用することによって、廃棄物は三つの潜在的種類に分かれることとなる。
.1 関係する上位の基準を超えて特定の物質を含む又は生物学的反応を起こす廃棄物は、処理技術又過程を通じ投棄が容認できるようになる場合を除き、投棄することはできない。
.2 関係する下位の基準を下回り特定の物質を含む又は生物学的反応を起こす廃棄物は、投棄との関連において、環境に対する懸念は少ないと考えるべきである。
.3 関係する上位の基準を下回るが下位の基準を超えて特定の物質を含む又は生物学的反応を起こす廃棄物は、投棄することが適当であるかを決定するに先立ち、更なる詳細な検討が必要である。
投棄場所の選択
11 投棄場所を選択するために必要な情報は次の事項を含む。
.1 水柱及び海底の物理的、化学的及び生物学的特性
.2 検討されている水域における海洋のアメニティ(快適利用)区域、価値のある区域及びその他に利用されている区域の位置
.3 海洋環境における既存の物質の流れとの関連で、投棄によって生じる含有物フラックスの評価
.4 経済的及び作業上の実現可能性
潜在的影響の検討
12 潜在的影響を検討することにより、海洋又は陸上処分により予見される結果に関する簡潔な説明、すなわち「影響仮説」を立てるべきである。影響仮説は、提案された処分方法を承認するか、拒否するかを決定し、及び、環境を監視するための要件を決定するための基礎を提供する。
13 かかる検討により、廃棄物の特性、提案された投棄場所の状況、海流、提案された処理技術に関する情報が統合され、また、人の健康、生物資源、快適性(アメニティ)及び海洋の他の適切な利用に対する潜在的な(起こり得る)影響が特定されるべきである。
14 各処分方法の分析は、人の健康に対する危険、環境に対する損害・事故等の危険要素、経済性及び将来的な利用の排除等を比較検討して検討されるべきである。かかる検討の結果、適切な情報が入手できないために、提案された処分方法による影響を把握することができない場合には、かかる処分方法については引き続き検討を行うべきではない。また、比較検討によって、投棄による処分は好ましくないことが判明する場合には、投棄の許可は与えられるべきではない。
15 それぞれの検討によって出される結論は、投棄を許可又は拒否する決定を支持する記述であるべきである。
モニタリング
16 モニタリングは、許可条件が満たされていること(遵守に関するモニタリング)並びに許可の見直し及び投棄場所の選択過程の間になされた検討が環境及び人の健康を保護するために正確かつ十分であったこと(現場モニタリング)を実証するために行われる。当該モニタリング計画が目的を明確に特定していることが大切である。
許可及び許可条件
17 許可を発給する決定は、すべての影響評価が完了し及びモニタリング要件が決定される場合のみ、行われるべきである。許可に関する規定は、実現可能な限り、環境への撹乱及び損害を最小化し、並びに環境に対する利益を最大化することを確保する。発給されたいずれの許可も次の事項に関するデータ及び情報を含むものとする。
.1 投棄される物質の形態及び発生源
.2 投棄場所の位置
.3 投棄方法
.4 モニタリング及び報告の要件
18 許可は、モニタリング結果及びモニタリング計画の目的を考慮し、定期的に見直されるべきである。モニタリング結果の見直しは、現場での計画を継続すべきか、修正すべきか、又は終結すべきかを指示し、また、許可の継続、変更又は取り消しに関する決定に貢献する。これは、人の健康及び海洋環境を保護するための重要なフィードバック制度を提供する。