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その2
神奈川県警察本部警務部長
(神奈川県被害者支援連絡協議会副会長)
金高 雅仁
 
 本日、神奈川県被害者支援センターが設立されましたことを、心よりお祝い申し上げます。また、これまで、設立に向けて諸準備を進めてこられた方々に対し、深甚なる敬意を表する次第であります。
 さて、被害者対策につきましては、平成7年3月に発生した地下鉄サリン事件を契機として犯罪や事故等により、ある日、突然、被害者やその遺族となられた方々の精神的・経済的被害が社会問題化し、この救済について世論をはじめ各方面からの対策強化が求められたのであります。
 このため、平成8年2月に、警察庁において警察が推進すべき被害者対策の基本方針をまとめた被害者対策要綱を制定し、現在、この要綱に基づき、全国の警察が組織を挙げて、被害者支援活動に取り組んでいるところであります。本県警察におきましても、神奈川県警察被害者対策要綱を制定し、警察本部に被害者対策室を設置したほか、警察署には、殺人や強盗等の事件発生直後に、被害者等に対する支援活動を行う指定被害者支援要員制度を運用するため、現在、県下警察署長が1,000名を越える警察職員を支援要員として指定するなど、被害者支援の体制を強化しております。
 また、刑事手続きなどの情報の提供や捜査過程などを連絡する被害者連絡制度を導入しているほか、警察署に相談室を設置したり、屋外で人目に触れずに被害者から話しを聞くための被害者対策車両の導入をしているほか、施設や装備面での整備を順次、行い、さらには、女性警察官による性犯罪被害110番等の相談窓口を開設し、女性の方が相談しやすい環境を整えてきたところであります。しかしながら、被害者の抱える問題は広範多岐にわたっており、警察の被害者支援活動では被害者のニーズに沿った十分な対応ができないため、平成10年12月に関係機関・団体による神奈川県被害者支援連絡協議会を設置したのをはじめ、昨年5月までに、県内の全警察署に、地域の行政機関や団体、企業等の協力により被害者支援ネットワークを設立し、各機関・団体等との緊密な連携と相互協力により、被害者のニーズに対応した各種の支援活動を推進してきたところであります。先ほど、神奈川県被害者支援連絡協議会の繁多会長から設立経緯が報告されましたが、誰にも相談できず、一人で悩んでいる被害者や、心のケアを他県の民間組織に頼って相談している被害者が存在しているにもかかわらず、被害者が相談できる民間組織が神奈川県には存在しなかったことから、繁多会長同様、民間組織を設立する必要性を痛感し、設立に携わる皆様に少しでもお役に立てればということから、設立作業のお手伝いをさせていただいたわけであります。関係者の方々の被害者支援に向けた熱意ある活動によって、「神奈川被害者支援センター」が設立されたことは、警察といたしましても、実に喜ばしいことであり、今後のご活躍に大きな期待を寄せているところであります。終わりに、当センターの運営にご尽力される水木会長はじめ、役員・関係者の皆様、さらには、相談業務に携わるボランティア相談員の皆様に対しまして、心から敬意を表しますとともに、このセンターの末永いご発展、ご活躍を祈念いたしまして、私の祝辞とさせていただきます。
 
街頭キャンペーン
 5月11日、設立総会の終了後、横浜市内の桜木町駅前において、「センターの花」ペチュニア300鉢とリーフレットを2,000枚配布して、センターの活動に対する理解と協力を求めました。
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その3
警察庁長官官房給与厚生課被害者対策室長
安田 貴彦
 
 本日、ここに首都圏では東京に引き続いて二番目、全国では丁度20ヶ所目になる民間の犯罪被害者支援組織である神奈川被害者支援センターが設立されましたことに心よりお祝いを申し述べたいと思います。そして、こうして設立になるまでの間、ご尽力をいただきました皆様のご苦労に対しまして感謝と敬意を申し述べたいと思います。
 〜中略〜
 犯罪被害者を巡る社会の動向は、ここ最近めまぐるしく展開しております。法律だけを見ましても、昨年には、犯罪被害者保護二法が可決成立して、施設の整理を必要とする部分を除き既に施行されております。また、個別の被害類型に対応したものとして、ストーカー規制法、あるいは児童虐待防止法を整備したほか、少年法の改正もなされています。また、今国会におきましては、犯罪被害者等給付金支給法が改正され、DVの防止法、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律が制定されるなど、犯罪被害者に対する関心が叫ばれているところです。この裏を返せば、実は私どもが認識する以上に多くの犯罪被害者や遺族の方々が、制度が不備であったり、あるいは社会が無関心であったりという中で、不条理な犯罪被害に苦しみ、また様々な怒り悲しみを抱えながら黙って耐えてこられたという実情がありました。それは、犯罪被害者の中のニーズシステムがいかに切実で支援が求められていたかということを反映したものにほかならないことも忘れてはならないと思います。
 先ほど、警務部長から警察の取り組みについてご説明がありました。そして、今申し上げましたように、今国会におきまして犯罪被害者等給付金支給法が改正されました。これは、20年ぶりに大きな改正で、後ほど、神奈川県警察の方から皆様にご報告させていただけることと思いますが、若干私も触れさせていただきます。これは、被害者の方々にお金を差し上げるという制度であり、この部分について大幅に拡充をいたしました。この7月1日から施行されますが、従来の制度に比べ、予算の額で3倍位になるかと思います。支給される被害者の方々も7倍位には拡大されると思います。
 そして、そういった金銭的な給付を拡大させただけではなく、被害者の方々の多様なニーズにいろいろな手法で応えてゆこうということで、警察自身が被害者に対して行う援助の在り方、あるいは民間の被害者援助団体の活動、とりわけなるべく早い段階で直接的に援助をしていただけるような活動の特色を、警察の制度に盛り込んだ幅広い体制とさせていただいております。特に民間の団体についてもう少しお話しさせていただきますと、一定の要件を満たした法人格のある民間の団体を、例えば神奈川県の公安委員会が指定をさせていただき、被害者の方々が安心して相談できる団体ですよということを明らかにするとともに、被害者に関する情報を団体の方にご提供させていただいて、団体から直接被害者へ支援を提供していただくということができればと考えたシステムでございます。この部分については、来年の4月1日から施行されるものであります。
 警察は、ご案内のとおり被害者の方に最も早い段階で接する機関でございます。そういった意味で、今後も警察が被害者支援全体の中で調整役みたいな立場で頑張っていかなければならないということは当然ですけれども、被害者のニーズは、実に多様でございます。決して警察のみでは対応できませんし、また、公的機関のみでも無理でございます。そればかりか民間の方々であるからこそ被害者の支えになれる部分も多いにあるのではないかと思っております。
 〜中略〜
 いよいよ明日からは電話相談が始まりますけれども、いろいろな問題があろうかと思います。お金の問題もありますし、人材の問題もあります。あるいは、援助の幅を広げていこうと思えば、トレーニングなどが必要になってまいります。団体が出来上がりましたが、これから、いろいろなご苦労があろうかと思います。しかしながら、私どもの先輩でもありますアメリカにノバという団体がございます。
 これは、25年以上前から活動している団体でございます。ここの事務局長でマリーアンヌという人がいらっしゃいます。この方がある女性活動家の言葉を引用して「この被害者の支援の運動を続けていれば、現時点に生まれたことに誇りを持ち、明るい未来に対する安心感を持ち、そして、我々の人生の中で我々の持っている力と尊厳を共感し、そして正義のために捧げたのだということを確信を持って言えるのだ。」と言っておられます。
 私どもも皆さんもこういった言葉を信じて被害者支援に向けて前進して行けるかと思います。神奈川被害者支援センターの活動が明日から始まるわけですけれど、センターと警察と関係の皆様の今後ますますのご発展とご活躍と、このセンターの活動によりまして一人でも多くの神奈川県における被害者の方々が勇気づけられることを念願いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。
 
シンボルマークについて
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由来
被害者の心(ハート)に希望の光があたり、心の中に新たな道が開けてきたところを表現したものです。
作成者
このシンボルマークは、鎌倉を中心に活躍するイラストレーター岸田シュウセイさんが作成したものです。








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