日本財団 図書館


犯罪被害者支援フォーラム
inあきたに参加して



秋田県生涯学習センター3階講堂を会場に県内ではじめての「犯罪被害者支援フォーラムinあきた」が開催された。
前半が基調講演、後半がパネルディスカッションという2部構成で進められた。平日の日中にもかかわらず多くの参加者を得て、改めて犯罪被害者支援への関心の高さがうかがわれた。
「癒されぬ輪禍〜交通事故被害者の訴え」と題した、被害者自助グループ茅ヶ崎を主催している渡辺冶重氏の基調講演は、平成7年に交通事故により長男を亡くされた経験をもとにした講演だった。
事故後の被害者側と加害者側のおかれた状況の落差というのは、当事者になって初めてわかったとの事。被害者には何もなく、情報すらどうしたら入手できるのかわからず、家族もそれぞれつらくて支え合うことが難しいためバラバラになりやすいこと。しかし、加害者側はそれをきっかけにして家族が団結し結びつきが強まること。
理不尽な現実が次々に話された。被害者が何重にも追い込まれていく辛さは計り知れないものがあった。「集中力もなくなり、人に逢うのも怖くなり、日常生活もできない。救いの無い状況の中で、被害者は自分でしていかなければならないのだ」という言葉は重く響いた。人権が自動的に与えられる加害者に比して「権利は主張して与えられるものだ」と獲得していかなければならない被害者。
一体これはどういうことなのだろうか。今日までなぜこの問題は放っておかれたのだろうか。
渡辺氏は、教育の重要性ということもあげられていた。現在の教育では「理不尽なことは起こるのだ」という視点が欠如していることを指摘し、「誰でも被害者になりうるのだ」「理解されるためにも被害者が声を出していかねばならない」と訴えられた。この言葉は我々が心に刻み込んでいかねばならないと感じた。誰かの問題ではなく誰にでも起こるのだということは、どこかで他人事だと考えて生活していることへの警鐘と思う。被害者になってから考えるのでは遅いのだということに向き合わねば、被害者が味わい続けている問題は解決につながっていかないのだ。
休憩後のパネルディスカッションは、コーディネーターの佐藤順子氏(臨床心理士)より2つの時間軸−現在と未来(これから)−という視点の提起があり、それに沿って進行された。
安田貴彦氏(警察庁犯罪被害者対策室長)からは全国的な状況が、佐藤怜氏(秋田被害者支援センター会長)からは秋田県の状況が、渡辺氏からは被害者の状況が語られた。
立場により問題のとらえ方も異なり、それぞれが連携して協力していくことが重要だとの思いを抱いたが、聴衆との質疑応答でも議論が深まり手ごたえのある会だった。
最後に、被害者支援とは渡辺氏の言葉に尽きるのかもしれない。「人間として当然持っているいたわりの意識」、被害者学とは「愛」という基本を忘れてはいけないのだろう。
U.K
 
2001年秋期合同研修会
第6回犯罪被害者支援フォーラム
 
11月18日(日)から19日(月)の両日東京にて、2001年全国犯罪被害者支援ネットワーク秋期合同研修会と第6回犯罪被害者支援フォーラムが開催され、当センターより役員他相談員7名が参加した。全国の仲間たちと交流を深め、被害者支援について多くを学んできました。フォーラムでは、小泉純一郎内閣総理大臣の祝辞や功労者の表彰がありました。また、同志社総長 日本被害者学会理事長大谷實氏の「犯罪被害者問題の30年」と題する記念講演があり、被害者については話題にすることもできない時代があったということを知りました。2日間にわたる研修は、大変実りのある研修でした。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION