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私とボランティア
その1
 去年の夏の初め、夕食の支度をしていた私は、テレビのニュースを見て、思わず手を止めてしまいました。
 それは、私が今までしたかったこと…犯罪被害者ボランティアについての話だったからです。
 その時は、片手間で聞いていたので連絡先を聞き逃してしまいましたが、翌朝、必死になって探し、ようやくテレビ局の方から教えて頂きました。
 こうして私はボランティアセミナーに参加することができ、読書会に通い、さまざまなことを学んできました。
 セミナーでは、犯罪に遭われた方々のお話を伺ったり、先生方やカウンセラーの方からも色々と教えいただいているうちに、支援の難しさ、重さを改めて感じずにはいられませんでした。
 今、何ができるのかと云われたら口ごもってしまうかもしれません、でも何かしたい、させて欲しい、その為にこれからも少しずつステップを重ねていくつもりです。
 平穏な日々を送っていた方が、ある日突然被害者となられ、苦しい日々に堪えてゆかなければならなくなった時、寄り添うようなことができたらと心から思っています。
 私に、犯罪被害者支援のボランティアをさせてください!
中村 智子
その2
 被害者支援都民センターのボランティア研修を受け始めて、一年余りが過ぎた。その間、心理的な勉強はとても難しく、何度となく自信を無くし落ち込んだこともあったが、仲間に支えられ、励まされ今日に至っている。
 研修のメンバーに《雨女》と言われる人が居るのか、研修日はいつも雨にたたられ、また「今日の研修では何を学べたのだろうか」と、まるで自信をなくした身で、ビショビショになりながら、トボトボと駅まで肩を落としながら帰ったこともなんとなく懐かしい。
 最近は実地研修に入り、メンバーの誰かれもに活気が出てきたように思う。各所の見学場所がわからなかったり、集合の時間などがはっきり伝達されていなかったりと、小さなハプニングもあったが、何事も経験で、同じような失敗を繰り返すことは無いだろうと思っている。
 「空いている時間を人のために」と言って、ボランティアに参加する人が多いと聞く。が、本当は「自分のために参加させてもらう」と言う気持ちにならなければいけないのではないかと思う。
 この被害者支援の研修を受ける二年ほど前、朗読ボランティアの研修を受けたことがある。目の不自由な人に本を読んでテープに収めたり、直接に会って新聞や雑誌などを読むボランティア活動を区役所の広報で知り応募したのだ。
 実際に発声練習をしたり、言い回しがおかしいと注意もされたが、指導をしてくれた会長から、ボランティアの心得として常に心しなくてはいけないことのひとつとして、「相手は、自分より常識も知識も上であると思わなければいけない」と、言われたことがあった。
 自分が上の立場に立ったつもりで物事を教えてはいけないことを教えてくれたのだと思う。被害者支援都民センターのボランティアと朗読ボランティアとは違うかもしれないが、どちらも考え方の基本としては同じだと思う。何事にも「謙虚な」気持ちになって行動することを忘れてはならないのだ。
 被害者の気持ちが分かり得ないこともあるかもしれないが、今までの人生で色々と経験してきたことの中から、何か役に立ててもらえることがあるかもしれないと思っている。
 結婚や子育て、そして仕事を興し、またその仕事をたたみ、と様々な世間を見せてもらってきた。嫌な事があったり、先が見えなくて悩んだりもしたが、それでも今日まで無事に至っているのは「人に助けられ、教えられて来た」ことだと思っている。
 仕事をやめた現在、今こそこれまで世間から受けてきた色々な恩恵を、社会に還元する時期だと思い、できるだけの協力を惜しまないつもりである。これまでの人生経験が少しでも役に立つことがあれば、こんなに嬉しいことはない。
 被害者支援で何ができるかまだ未知数だが、何事も吸収すると言う、勉強の心で続けていきたいと思う。幸いなことに、人より?元気なことが私の取り柄である。
田中 静枝








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