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平成12年度調査研究要旨
宮崎県下の物流効率化に対応した拠点整備構想に関する調査研究
 宮崎県は、細島港、宮崎港および油津港の3つの重要港湾を有しており、阪神・京浜との長距離フェリー、韓国、台湾、香港との国際航路など、海上輸送が国内・国際両面の物流において重要な役割を担っている。今後、港湾整備や背後の道路網の充実により、宮崎県の海陸輸送体系の結節点として優位性がさらに高まることが予想される。
 本調査は、細島港、宮崎港および油津港を中心として海上輸送網を活用した効率的な物流システムのあり方とその実現に向けた具体的な方策の検討を行い、各関係者に対する提言としてとりまとめた。
1 宮崎県下主要港湾の将来像と役割分担
(1)細島港:国際貿易の拠点として、アジアを中心とした国際物流機能に重点を置いた機能強化
(2)宮崎港:南九州の物流拠点として、南九州一円を背後圏とした大都市圏との内貿複合一貫輸送の基地としての国内物流機能に重点を置いた機能強化
(3)油津港:県南地域の産業振興の拠点として、地域に密着した港湾機能に重点を置いた強化
2 物流システム構築に向けた方策
(1)消費財(雑貨類)の大都市圏からの直送システムに関する方策
[1]小売業者や卸売業者の物流拠点の宮崎県内への設置促進
[2]大都市圏に立地するメーカーに対する直送化・海運利用の促進
(2)農産品を中心とする県産品の大都市圏向け輸送システムに関する方策
[1]県内農産品の出荷体制の集約化
[2]大都市圏の港湾周辺における物流拠点設置についての検討
(3)中小トラック事業者のネットワーク化と海運利用の促進に関する方策
[1]県内トラック事業者の情報ネットワーク化の支援
[2]求貨・求車情報システムの利用促進
[3]無人航送促進に向けた大都市圏への共同集配・営業拠点の設置促進
(4)特積みトラックをターゲットとした海上輸送網の拡充に関する方策
[1]特積みトラックを想定した川崎〜日向・宮崎航路のフェリーダイヤ見直し
[2]特積みトラック事業者に対する海上輸送利用の促進
(5)アジアからの輸入を中心とした国際物流拠点の形成に関する方策
[1]細島港における定期航路網の拡充
[2]アジアからの輸入貨物を中心とする物流拠点の設置
[3]細島港へのアクセス道路の整備
奄美大島群島と海上交通ネットワークシステムの確立に関する調査研究
 奄美大島群島は、人口の減少や産業の停滞等の問題とともに、道路整備等を含めた交通体系の脆弱さとが相俟って、島民の生活水準は本土と比較して極めて低い状況にある。
 本調査は、奄美大島全体と南部の加計呂麻地域における、交通ネットワークシステム整備のあり方についての方向性を探るとともに、交通体系と地域産業の一体的な整備のあり方を明らかにすることを目的として実施した。
1 奄美大島における総合交通ネットワーク整備の基本方向
(1)海上交通の整備
[1]航路については、船舶の高速化、大型化等が進んでおり、輸送能力及び利便性、快適性ともに改善されつつあるが、今後とも奄美大島と本土とを結ぶ不可欠な交通手段である離島航路の維持・改善に努める。
[2]定期船の寄港する港湾については、外かく・水域施設等の整備を計画的に推進し、港湾機能の向上を図る。その他の港湾についても、各地域の地場産業の振興に対応した整備を進める。
[3]海洋性レクリエーション需要の高まりに対応するため、マリーナや緑地の整備により、豊かなウォーターフロントを生かした快適で親しみのある環境を創出し、魅力ある「みなと」づくりを推進する。
(2)航空交通の整備
[1]航空機の安全運行及び旅客の利便性の向上のための諸施設の整備を図る。
[2]航空路線については、需要の喚起に努め、その動向に応じて、奄美空港と本土等を結ぶ路線の輸送力の増強及び輸送サービスの充実を促進する。
(3)陸上交通の整備
[1]国道等についてはバイパスの整備や急カーブ、急勾配等のあい路区間の整備を図る。
[2]県道については、主要地方道等の幹線的な道路及び生活道路の整備を進める。
[3]市町村道についてはバス路線など住民生活に密接な路線から重点的な整備を推進する。
[4]バス路線については、地域住民の足だけでなく、観光客の観光スポット等へのアクセス手段ともなることから、空港・港湾等の交通拠点や各地域及び観光スポットとの結節を配慮し、需要の動向を勘案しながら便数の増加等輸送サービスの改善・充実を図る。
2 加計呂麻地域における総合交通ネットワーク整備の基本方向
 加計呂麻地域の交通施策を考える上での重要な課題である加計呂麻架橋の建設については、地域住民の日常生活や医療・防災などのほか、観光や農林水産業など地域振興の面で一定の効果が期待できるが、架橋建設による時間短縮効果など費用便益の評価が極めて低い(費用便益比0.16程度)等、多くの課題がある。
 このため、加計呂麻架橋については、今後、社会経済状況の変化や財政環境などの動向を十分見極めつつ、大島本島南部地域における離島航路の維持改善、道路・巷湾の整備など総合的な交通ネットワークの整備促進をはかりながら、今後の課題として検討することが適当である。
 従って、当面、地域住民から強い要請があり、また、住民生活や経済活動にとって緊急かつ重要な課題となっている道路や港湾などの整備、離島航路の維持・充実などの促進が望ましい。
長崎県における海上旅客輸送のバリアフリー化促進に関する調査研究
 長崎県における海上旅客輸送のバリアフリー化に対応した施設整備等の促進に向けて、旅客船事業者や港湾管理者等に求められる取り組みについて提言を行うものである。
1 長崎県における海上旅客輸送のバリアフリー化の位置づけ
 長崎県は多数の離島を有しており、20万人近い人々が生活している。離島部には約4万人の高齢者、約1万人の身障者が居住している。
 こうしたことから、そのバリアフリー化実現に向けて、事業者の自助努力を待つばかりでなく、行政等の各関係主体が適切な負担を行った上で、一体となって推進していく必要がある。
2 旅客船事業者におけるバリアフリー化の位置づけ
 旅客船事業者は、交通バリアフリー法の制定により、バリアフリー化の実現に対しても責務を負うこととなった。
 旅客船事業者においては、高齢者・身障者を含めて誰もが利用しやすい航路の実現は、島民の島外への外出行動あるいは島外からの観光客誘致の双方において、需要の拡大にも寄与するものである。旅客船事業者は、こうした需要拡大の側面にも注目し、バリアフリー化に対して取り組んでいくことが期待される。
3 高齢者・身障者のさまざまな移動特性・ニーズに配慮したバリアフリー化
 高齢者・身障者における移動の制約は、年齢や障害の種類・程度等によって多様であり、バリアフリー化を進める際には、こうした特性や各地域の利用者ニーズを踏まえ、きめ細かな対応を行っていく必要がある。
4 既存施設・船舶におけるバリアフリー化の推進
 交通バリアフリー法では、施設・船舶の新設時には「移動円滑化基準」への適合を義務づける一方、既存の施設・船舶のバリアフリー化は努力義務となっている。このため、既存の施設・船舶においては、次回の更新時までバリアフリー化が進まない恐れもあるが、一般に船舶は十数年以上の長期にわたって使用されることを考えると、既存の施設・船舶においても積極的にバリアフリー化を進めていくことが必要である。
<既存施設・船舶におけるバリアフリー化目標例>
* 乗下船時の介助を前提としつつも、車いす使用者および全盲者が乗船できること。
* 船内で車いす使用者および全盲者が一人でトイレを使用できること。
* 運航情報等を視覚障害者及び聴覚障害者にわかりやすく提供すること。
北部九州圏における海上貨物輸送と鉄道貨物輸送の連携に関する調査研究  −中間報告−
 本調査は、海上貨物輸送と鉄道貨物輸送の連携の現状や荷主企業等のニーズ、国内外の先行事例等を把握し、海上貨物輸送と鉄道貨物輸送の連携した輸送システムのあり方やその実現に向けた課題等を検討し、提言として取りまとめることを目的として実施するものである。
1 海上貨物輸送と鉄道貨物輸送の連携システム構築に向けた施策の方向性
(1)国内鉄道貨物輸送と国際海上貨物輸送との連携システム構築に向けた施策の方向性
[1]生産消費地の鉄道貨物駅におけるストック機能増強による配車の効率化や輸送の共同化による集配送のコスト削減
[2]トラック事業者と鉄道事業者の連携による他の貨物との融通配車など、帰り荷の確保による端末輸送コストの削減方策の検討
[3]貨物駅周辺のアクセス道路の整備による端末輸送の円滑化
[4]船社やフォワーダー、荷主の連携によるロットのとりまとめや帰り荷の確保などへの取り組み
[5]シーアンドレール輸送を利用する輸出入貨物に対応する外貿コンテナターミナルの明確化による荷役、横持ち輸送の効率化
(2)海上貨物輸送と海外鉄道貨物輸送との連携システム構築に向けた施策の方向性
[1]北九州港と相手先港間の航路の頻度不足に対応した、海外鉄道関係者とフォワーダーの密接な情報交換と連携による最適な輸送スケジュールの設定
[2]相手先港湾管理者等との密接な情報交換と連携による円滑なサービスの確保
[3]帰り荷の確保に向けた取り組みの強化
[4]中国鉄道当局、船社とフォワーダーの連携による中国鉄道と国際海上輸送の円滑なダイヤ接続に向けた調整
[5]中国鉄道当局との密接な情報交換と連携による安定的かつ円滑な輸送の確保
[6]ランドブリッジ沿線諸国との連携、調整による国境通過に係る手続きの簡素化と時間、コスト削減への取り組み
[7]輸送の効率性向上に向けたロットのとりまとめへの取り組み








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