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2 道路交通環境対策の推進
 低公害車の開発・普及及び交通流対策は、地球温暖化対策のみならず、自動車から排出されるNOx.PMを始めとする有害物質による大気汚染に対応するための道路交通環境対策としても重要な施策であり、前述のとおり様々な対策が取り組まれています。道路交通環境対策としては、この他に次のような施策を推進しています。
(1)排出ガス規制の強化
 大都市地域を中心とした窒素酸化物(NOx)による大気汚染については、旧自動車NOx法(1992年制定)に基づく規制などの諸施策が実施されてきましたが、自動車交通量の増大などの理由により、二酸化窒素の大気環境基準の達成が困難になってきました。一方、粒子状物質(PM)による大気汚染も厳しい状況にあり、特にディーゼル車から排出されるPMについては、発ガン性のおそれがある物質として、国民の健康への悪影響が懸念されています。
 このため、NOxに対する従来の施策を強化するとともに、自動車交通に起因するPMの削減を図るため、自動車NOx法の改正法案が第151回通常国会に提出され、2001年6月に成立しました。これにより、排出を規制する物質にNOxだけでなくPMが追加され、また、対策地域を拡大するとともに、現に使用されているディーゼル車の排出ガス規制が段階的に強化されます。また、トラック・バス事業者に対しては国土交通大臣が必要な指導・勧告等を行い、一層の排ガス対策が実施されることになります。
 
●自動車NOx・PM法について
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(2)CNGバス・トラックの短期集中導入及びDPFの導入促進
 環境自動車開発・普及総合戦略会議における緊急提言や低公害車開発普及アクションプランにおいても、CNG自動車などのすでに実用段階にある低公害車の短期集中的な導入に取り組む必要性が指摘されているところです。2002年度には、三大都市圏のバス・トラック事業者を対象に、地方公共団体と協調してCNGバス・トラック等の低公害車及びDPFの導入に対する支援措置を創設しています。
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DPFの種類
  名称 メーカー 価格 備考
高硫黄軽油対応型 交互再生式DPF いすゞセラミック (部品費)
大型:約340万円
中型:約115万円
小型:約85万円
(改造費)
小型の場合約25万円
DPF取り付けスペースの確保等の車両構造上の制約がある。
低硫黄軽油対応型 連続再生式DPF
(NO2による酸化方式(CRT))
ジョンソンマッセイ (部品費)
大型:55〜80万円
中型:20〜60万円
小型:11〜17万円
(改造費)
2〜3万円
低硫黄軽油でないと、フィルターの目づまりが生ずる。
連続再生式DPF
(触媒による酸化方式(CSF))
エンゲルバード (部品費)
中・大型:50〜70万円
(改造費)
2〜3万円
高硫黄軽油でも使用できるが、高負担時にサルフェートが生じ、PMの低減率が低くなる。
(注)
 1.現行の硫黄分の許容限度は日・欧とも500ppm
 2.石油連盟は、PMの排出量をディーゼル新長期目標レベルに低減した自動車が平成15年(2003年)から平成16年(2004年)にかけて市場に供給開始される際に、低硫黄軽油を部分供給することを表明している。
 
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規制年次 H元年規制(注1) H6年規制 H10年規制 H15年規制 H17年規制(注3)
(短期規制) (長期規制) (新短期規制) (新長期規制)
DPFの種類 交互再生式 連続再生式 連続再生式 連続再生式 連続再生式
交互再生式 交互再生式 交互再生式 交互再生式
備考 ・改正NOx法によって特定地域内で使用不可 ・改正NOx法によって特定地域内で使用不可 ・TDM実証実験として、低硫黄軽油の優先供給が行われる地域において、低硫黄軽油の導入時に補助 ・自工会は低硫黄軽油の供給を前提に、新長期規制並みPM低減車のみ供給予定 ・低硫黄軽油が前提
・改正NOx法の適用猶予期間が3年以上ある場合に、DPF装着を補助
・TDM実証実験として、低硫黄軽油の優先供給が行われる地域において、低硫黄軽油の導入時に補助
※ディーゼル貨物車(車両総重量3.5トン超12トン以下)の排出ガス規制値及び規制年次を記載した。
(注1)PMの排出ガス規制は平成6年度から開始されており、短期規制の平成元年当時は未規制。本資料では、未規制車の実勢PM排出量を100%とおいた。
(注2)DPF装着効果は、交互再生式DPFを装着した場合のいすゞ自動車試算を用いて、PM排出量が削減されると仮定した。
(注3)中環審第3次答申では平成19年度を目途とするとされているが、これが平成17年度に前倒しされると仮定した。
(3)次世代低公害車開発促進
 開発途上にある次世代低公害車について、独立行政法人交通安全環境研究所を中核的研究機関として、産官学の連携により、安全・環境面の技術基準及び評価方法を整備することにより、現行の大型ディーゼル車等に代替する次世代低公害車の早期実用化を促進します。
(4)自動車燃料のグリーン化
 技術的には、自動車の燃費と排ガス性能はトレードオフの関係にあり、両者を高いレベルで両立させるには、燃料の性状を向上させることが前提となっています。
 また、前述のDPFには、硫黄分が少ない燃料を使用しないと適切に動作しないものがあり、道路交通環境の改善のためには、自動車燃料のグリーン化が不可欠です。
 このような観点から、従来500ppm以下であった軽油の硫黄分を2004年末までに50ppmに低減させることとなっています。なお、石油連盟ではこれを前倒しして、低硫黄軽油について、2003年までに大都市部において供給することを既に表明しています。また、ガソリンについても低硫黄化を図る等、更なる改善を図ります。
 一方で、欧州においては、ガソリンや軽油のゼロ硫黄化(ガソリンや軽油に含まれる硫黄成分を10ppm以下にすること)に向け、燃料性状の一層の向上が図られています。
 我が国においても、燃費、排出ガス水準を抜本的に改善するためには、燃料の低硫黄化を一層進め、これにより低公害車の開発を促進することが求められています。
(5)特殊自動車からの排出ガス規制
 大都市を中心とした大気環境を改善するためには、大都市地域におけるNOxの約2割を排出する特殊自動車(フォークリフト等)について排出ガス対策を講じる必要があります。このため、ディーゼル特殊自動車に対して、2003年10月から排出ガス規制が新たに導入されることになりました。
(6)ディーゼル車の排出ガス抑制のためのその他の施策
[1]整備不良車両の排除
 自動車による環境負荷の低減を図るためには、使用過程において常に排出ガス性能が維持されていることが必要です。排出ガス性能が維持されず、整備不良の車両は、通常の車両に比べてNOxやPMの排出量が多く、環境を汚染します。
 こうした車両から排出される排気ガスの削減を図るには、効果的な点検整備を行うことが必要です。整備事業者及び運送事業者が行った点検整備によって、半分以上の車両に関し、10%以上黒煙の排出削減効果がみられるというデータも発表されています。
 今後は、整備事業者による入庫車両の点検の実施や、運送事業者による保有車両の自主的な点検を進めるとともに、街頭検査の実施による取締りの強化等総合的な施策を一層講じていくことが必要です。
[2]不正軽油の不使用の徹底
 不正軽油(粗悪軽油)とは、軽油引取税の脱税を目的として、都道府県知事の承認を得ずに、軽油にA重油等を混合し販売されるものです。不正軽油をディーゼルトラックに使用した場合、大気汚染が進行し、NOxが最大で35%、PMが最大で17%増加するとも言われています。こうした不正軽油による使用を制限するためには、取締りの強化を図るとともに、不正軽油の観点も含めた安全・環境対策として自動車ユーザーに「一定以上の品質の燃料」の使用を義務づけることを検討することが必要です。








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