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(2)交通流対策の推進
 現在の我が国では、交通渋滞による経済的損失が年間12兆円と試算されているほか、CO2は全国の総排出量の約2割、NOxでは大都市における総排出量の4割が、それぞれ自動車に起因しているなど、「クルマ社会」の抱える問題が深刻化しています。
 
■道路整備等の推進
 都市部の渋滞による平均走行速度の低下が自動車からの二酸化炭素、NOx、PMの排出量を増大させている状況を踏まえ、環状道路等幹線道路ネットワークの整備や交差点立体化踏切道改良等を着に行うとともに、高度道路交通システム(ITS)の構築、路上工事の縮減、駐停車対策等が推進されています。
 
■交通需要マネジメント(TDM)の推進
 渋滞緩和を図り自動車による環境負荷の低減等を進めてこのような問題の解決を図るには、自動車交通量の調整を図るため、公共交通機関の利用促進や物流の効率化を図りつつ、併せて低公害車の導入等を一体的に進めることが効果的です。しかしながら、関係者が多岐にわたることや経済的な負担が見込まれることにより、このような取り組みの実現が図られない場合があります。このような状況を踏まえ、国土交通省では警察庁と連携し、「交通需要マネジメント(TDM)実証実験制度」を2001年度に創設しました。この制度は、地域における自動車交通量の調整、事業者による交通事業の改善等を行う実験事業について、渋滞緩和や環境面の効果が見込まれるとして両省庁が認定したものに対して、国と地域で支援を行うものです。実験事業の一環として、低公害車、低硫黄軽油等の導入も行う場合には、これらも助成の対象となります。
 
●TDM(交通需要マネジメント)実証実験への支援
 国土交通省では、「快適で環境にやさしい都市交通」の実現を目指し、関係機関とともにTDM実証実験を行って自動車交通を調整する都市で、公共交通のサービス水準向上、環境自動車の計画的導入、都市内物流の効率化等の実験事業に助成しています。
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●TDM実証実験の具体例
北海道札幌市 都心部で100円バス(注1)を運行するとともに、併せて、インターネット等を通じたバス運行情報の提供、当該バス路線上の道路での違法駐停車を抑制する取組み等を行う。
埼玉県さいたま市 2002年サッカーW杯開催時における環境にやさしいバス輸送の活用を視野に入れ、市内の路線バスについて割引バスカードの販売、サイクルアンドバスライドの推進等を通じてバス利用の促進を図るとともに、併せて、バス路線に係る道路での違法駐停車を抑制する取組みを進めるほか、路線バスについては使用燃料の低硫黄軽油への転換及びDPF(ディーゼル微粒子除去装置)の装着を行う。
神奈川県川崎市 臨海部地域においてPTPS(注2)を使用して路線バスの定時運行を確保するとともに、併せて、路線バスの使用燃料を低公害の軽質軽油に転換する。また、貨物トラックについて、工場出荷待ち車両の路上駐停車を抑制する取組みを行うとともに、併せて、軽質軽油利用への転換を促進する。
愛知県名古屋市 名古屋市南部地域における渋滞緩和及び環境負荷低減を図るため、バスの定時運行が確保されるよう道路管理者においてテラス型バス停を増設した上で、名古屋市交通局が市内路線バスにCNGバスの導入及びDPF装着と併せた低硫黄軽油の導入を行う。
名古屋南部地域中心とした愛知県 愛知県内の物流事業者のトラックを対象に、国道23号等から伊勢湾岸自動車道への迂回通行の促進を図るとともに、併せて、CNG(圧縮天然ガス)使用車両の導入を促進する。
福岡県北九州市 北九州都市モノレール沿線の渋滞緩和を図るため、市によるマイカー自粛よびかけを実施した上で、市及びモノレール事業者が、モノレール駅及び団地に駐輪場を整備し電気自転車をレンタサイクルとして配備するサイクルアンドモノライドを、小倉都心部への通勤・通学者を対象として実施する。
長崎県長崎市等 観光客がその手荷物のためにタクシー・レンタカーを用いた移動や手荷物を宿泊施設へ預けるため移動することに起因する交通渋滞を緩和するため、長崎県観光連盟等によるマイカー自粛よびかけを実施した上で、長崎空港から観光地間、観光地から観光地間の公共交通機関の利用が促進されるよう、宅配事業者が長崎空港に到着した観光客の手荷物を空港で受け取り宿泊先のホテルまで割引料金で配送する事業を行う。
大分県日出町 テーマパーク(ハーモニーランド)周辺におけるマイカー来園者による交通渋滞を緩和するため、町によるマイカー自粛よびかけを実施した上で、来園者の公共交通機関利用が促進されるよう、鉄道事業者及びテーマパークが共同して入園料割引と鉄道割引等を組み合わせて販売するとともに、バス事業者が駅から列車到着時刻に合わせた接続バスを運行する。
沖縄県那覇市、浦添市、宜野湾市 宜野湾市に大規模な駐車場を設置した上で同駐車場から那覇市内へ路線バスを運行するパークアンドライド(注3)の導入により自動車通勤者をバス利用へ誘導するとともに、併せて、当該バス路線上の道路で違法駐停車を抑制する取組みを行う。
○上記以外に2001年度TDM実証実験が実施された都市
青森県青森市、宮城県仙台市、福島県会津若松市、福島県福島市、埼玉県桶川市、東京都千代田区丸の内、石川県金沢市、愛媛県松山市、山口県山口市
 








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