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(1)低公害車の開発・普及等
 低公害車の開発・普及は、運輸部門における二酸化炭素排出量削減対策の最大の柱である一方で、自動車に起因する大気汚染問題へ対応するための排出ガス対策としても非常に重要です。
 
[1]低公害車の種類と特徴
 既に実用段階にある低公害車には、CNG(圧縮天然ガス)自動車、電気自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車及び低燃費かつ低排出ガス認定車(注)があります。また、現在開発中の次世代低公害車としては、大型ディーゼル車代替としてのジメチルエーテル自動車やスーパークリーンディーゼル車、理論的には排出ガスを全く出さない燃料電池自動車等があります(「低公害車の特徴」参照)。これらの環境負荷を低減した低公害車の開発・普及を促進するため、現在、以下の取組みが行われています。
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資料提供:ホンダ  公道走行試験実施中の燃料電池自動車
 
●低公害車の特徴
  車種名 特徴
実用段階にある低公害車 低燃費かつ低排出ガス認定車 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基づく燃料基準(トップランナー基準)早期達成車で、かつ、「低排出ガス車認定実施要領」に基づく低排出ガス認定車。
ハイブリッド自動車 内燃機関とバッテリー等複数の動力源を組み合わせて低公害化や省エネルギー化を図った自動車。動力の組み合わせ方により、シリーズ方式、パラレル方式等があり、我が国では乗用車、バス等がすでに市販化されている。
CNG(圧縮天然ガス)自動車 高圧で圧縮した天然ガスを燃料とする自動車。技術的課題として、燃料タンクの小型化、出力の向上等があげられる。二酸化炭素排出量はガソリン車に比べて2〜3割少なくなるほか、NOx排出量が少なく、PMが排出されないなどの環境上の利点がある。
メタノール自動車 メタノールを燃料とする自動車。オクタン価は非常に高いが、エネルギー密度が低いため、ガソリン車の2倍程度のタンク容量・重量が必要である。排出ガスにPMが含まれていないほか、ディーゼル車に比べてNOxの排出量が削減できる。
電気自動車 バッテリーに蓄えられた電気を動力としているため、走行時に排出ガスが全く排出されない。充電時間やインフラ整備、コスト、航続距離等、依然として解決すべき課題が残されている。
次世代低公害車 DME(ジメチルエーテル)自動車 天然ガスまたはバイオマスから製造され、比較的低圧での液体貯蔵が可能であるDMEを燃料とする自動車。ディーゼルエンジンに適用可能であり、また、PMが排出されない。世界的に開発はまだ始められたばかりである。
燃料電池自動車 燃料電池は水素と酸素を反応させて電力を得るシステムであり、従来のエンジンと比べて高効率である。水素を直接貯蔵する方式と、メタノール、ガソリン等の炭化水素を改質して水素を得る場合に分けられ、前者は走行時の排出ガスが全くなく、後者でもNOx、CO2などの排出物はガソリンエンジンに比べて大幅に低減する。
次世代ハイブリッド自動車 既存のハイブリッド自動車と比較し、エンジン効率が最適となるポイントで運行を行い、より効率的な減速時のエネルギー回生システムや高性能蓄電システムを搭載したハイブリッド自動車であり、低燃費、低排出ガスの実現が可能である。
スーパークリーンディーゼル車 コモンレール直噴技術等の採用による一層の高効率化に加え、PM対策としてDPF等の後処理技術開発などにより、排出ガス性能や燃費性能が飛躍的に向上したディーゼル車である。
LNG(液化天然ガス)自動車 天然ガスを低温・高圧化し、液体で搭載した自動車。同一サイズのタンクを搭載するCNG車に比べて一充填あたりの航続距離が長く、長距離輸送大型トラックや高速バスヘの適用性が検討されているが、燃料の貯蔵技術が課題となっている。
太陽電池自動車 太陽光エネルギーを利用するため、走行時の排出ガスが出ないが、走行パワーが小さいこと、太陽電池の耐久性が低いこと、コストが高いことなど、実用化に向けての課題が多い。
GTL(合成液体燃料)自動車 天然ガス等の合成による不純物の少ない液体炭化水素系燃料を使用する自動車。GTL燃料には硫黄分が含まれていないため、硫黄酸化物が排出されない。
ガスタービン自動車 小型のガスタービンを動力とする自動車。燃料に対する許容性の広さが特徴に挙げられ、天然ガスやLPG、軽油なども利用可能である。
バイオディーゼル車 菜種、大豆、ヒマワリ等の植物油をエステル化することにより得られるディーゼル油と類似の燃料を用い、既存のディーゼルエンジンを改造せずに利用できる。総合的エネルギー効率も類似しているが、植物起源であり、ライフサイクルでのCO2排出量は少ない。
 
(注)低燃費かつ低排出ガス認定車
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[2]低公害車開発・普及促進のための具体的方策
■低公害車開発普及アクションプラン
 低公害車の開発・普及を促進するため、2001年7月、国土交通省、経済産業省、環境省の3省で「低公害車開発普及アクションプラン」を策定しました。
 同アクションプランでは、政府として普及に取り組むべき「低公害車」の範囲を明確にし、普及目標について「2010年度までのできるだけ早い時期に1000万台以上」と定め、3省で密接連携して低公害車の開発・普及に取り組んでいくこととし、その具体的な方策を示しています。
 
■今後の低公害車開発・普及に向けた総合戦略の策定
 2001年5月に「環境自動車開発・普及総合戦略会議」が国土交通省に設置され、低公害車の開発・普及戦略や次世代低公害車の開発戦略について検討が行われました。
 同会議では、政府による低公害車率先導入の方針等の動きや、大都市圏における大気汚染問題への取り組みの緊急性に鑑みて2001年7月に、三大都市圏でCNGバス・トラックなどを集中的に導入する等の緊急提言がとりまとめられました。
 同年12月19日には、同会議において、低公害車の開発・普及を推進していくための基本戦略を示した報告書を取りまとめました。具体的には、2010年までの低公害車の開発・普及戦略として、以下のことが示されています。
 
[1]国の支援や、開発の前提となる燃料品質向上等を図りながら、より環境性能の高い低公害車の開発を進める。
[2]低公害車普及のため自動車グリーン化税制の活用等の支援を進める。また、量産効果、規制緩和等による低公害車の価格引き下げ、CNGスタンド等燃料スタンドの整備や利便性向上を進める必要がある。
[3]低公害車の開発・普及にあわせ、交通流対策、物流の効率化等により円滑な交通流対策の確保や交通量の抑制を図る。
 
 また、2010年以降の実用化を目指した次世代低公害車開発にあたっての戦略としては、以下のことが示されています。
 
[1]乗用車については燃費の向上を重視し、一台当たりの二酸化炭素排出量を現状の1/2程度を目指す。大型車については排出ガスの低減を重視し、NOxは2005年の規制値の1/10以下、PMは排出ゼロ又はゼロに近いレベルをそれぞれ目指す。
[2]対応車種としては、大型トラック・バスについては、次世代ハイブリッド自動車、ジメチルエーテル(DME)自動車、スーパークリーンディーゼル車等が考えられる。
[3]そのため、産官学の役割を明確化の上、国際的調和も図りつつ開発を進める必要がある。
 
 同会議報告書に示された総合戦略を踏まえて今後の低公害車の開発・普及に向けた施策が推進されていくことになります。
●わが国における低公害車(低燃費低排出ガス認定車を除く※)の普及台数
※低燃費かつ低排出ガス認定車については、低排出ガス認定制度が平成12年度に創設されたため、平成12年度から普及が始まっており、同年度おいて約57万台が登録されています。
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