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第3章 グリーン経営推進チェックリストの作成および活用
1.評価項目体系およびチェックリストの検討
 平成12年度に検討した評価項目体系(案)および段階評価シート(案)をもとに、委員会での検討内容、事業者による試行結果を踏まえ、「グリーン経営推進チェックリスト」の作成を行った。
(1)評価項目体系の検討
 平成12年度にとりまとめた評価項目体系(案)は表3-1のとおりである。
 本年度は平成12年度の案をもとに、対象とする事業者の規模や取組の現状、国・自治体の施策の動向、(社)全日本トラック協会の「環境基本行動計画」、トラック運送業に対する社会的な要望等を踏まえ、次のような点に留意しつつ検討を行った。また、検討の中間段階で事業者による試行を行い、そこで得られた意見についても反映させた。
 
(検討にあたっての留意事項)

・中小事業者にも取り組みやすく、取組結果が確実に把握可能な項目体系とする。
 
[1]本マニュアルが中小事業者を対象とすることを前提に、「推進マニュアル」の目的を踏まえ、評価項目数を少なくし、内容もできるだけ簡潔なものとする。
[2]業界での取組実績が少ない事項や、主として大規模事業者での取組であると考えられる事項については、評価項目体系に入れずオプションとして示す。
[3]評価項目は、具体的に実効性が期待できるもの、また、客観的な評価ができる項目とする。
[4]段階評価方式により把握・評価を行うことが可能な項目を選定する。
[5]燃費の向上など実行分野に関する事項については、定量的データを把握する。
[6]管理部門(環境保全に関わる方針の展開、推進体制および責任、従業員に対する教育・訓練)に関する評価項目は、とくに重要な事項を除き、「推進体制の整備」に含めることにより、全体の簡素化を図る。
表3-1 平成12年度に検討した評価項目体系(案)
評価 項目
1.環境保全に係る方針の展開 1-1環境方針の策定
1-2環境に係る目標の設定
1-3環境保全に向けた実施計画の策定
1-4目標達成状況等の管理、見直し
2.推進体制および責任 2-1推進体制の整備・権限責任の明確化
3.従業員に対する環境教育・訓練 3-1従業員への教育・訓練
4.環境にやさしい自動車の導入 4-1ディーゼル車最新規制適合車への代替
4-2環境自動車の使用
5.自動車の点検・整備 5-1法定点検等の実施
5-2日常点検・整備の励行
6.エコドライブの実施 6-1エコドライブ推進(取組事項)
6-2エコドライブ推進(推進手法)
7.その他運行に関する環境負荷の低減 7-1環境保全のための機器等の整備
7-2その他運行に関する環境負荷の低減
8.社会とのコミュニケーション 8-1苦情への対応
8-2地域や社会への情報提供
9.自動車の走行状況等に関する定量的データの把握 車種別台数、総走行距離、実車率、輸送量
走行キロ、実車率、輸送量、燃料消費(購入)量、燃費、CO2
 
<オプションとして考えられる事項>
 ・管理部門における環境保全への取組
 ・物流の効率化
 ・廃車リサイクルの推進
 ・社会とのコミュニケーションの推進:関連企業との協力
 ・社会との共生
 
 検討の結果、新たに作成した評価項目体系は、「(4)評価項目体系およびチェックリストの作成」(表3-4「グリーン経営推進チェックリスト」における評価項目の体系)に示す。
(2)チェックリストの内容および形式の検討
 「推進マニュアル」の基本的枠組みをもとに、次の点に留意し検討を行った。
 
(検討にあたっての留意事項)
・チェックリストの内容は、将来、客観的な評価を取り入れることに配慮したものとする。
・チェックリストの表現はできるだけ客観的なものとし、「可能な限り」、「社会的ニーズを踏まえた」等の曖昧な表現は避けるものとする。
 
 チェックリストの形式は、次のような分かりやすいものとする。
表3-2 チェックリストのイメージ

1.環境保全のための仕組み・体制の整備
 
【環境方針】
□ 会社、事業所等の環境保全への取組を示す環境方針を策定しており、環境方針には法規制の遵守など基本的な取組が示されている〔レベル1〕。
□ 環境方針には法規制の遵守に加えて自主的・積極的な取組を定めている〔レベル2〕。
□ 環境方針は、環境保全への取組状況をもとに、定期的な見直し、改善を行っている〔レベル3〕。
 
【推進体制】
□ 環境保全に関する管理責任者または環境保全を推進するための組織を定めている〔レベル1〕。
□ 管理責任者や組織を従業員に周知し、役割、責任、権限を明確にしている〔レベル2〕。
□ 取組の結果を見ながら、組織や役割、責任、権限の見直しを行っている〔レベル3〕。
 
【従業員に対する環境教育】
□ 環境に関わる法規制や行政指導の内容等を従業員に伝達している〔レベル1〕。
□ 環境意識の向上を図るため、環境方針の徹底や環境に関する一般的な情報の伝達等を定期的に行っている〔レベル2〕。
(3)「グリーン経営推進チェックリスト(素案)」の試行
 検討の過程で、「グリーン経営推進チェックリスト」の内容等について事業者の意見・要望を把握するため試行を行った。
 試行の際に用いたチェックリスト素案については参考資料に添付する。
 
1)試行運用の目的
 試行運用を通して、評価項目およびチェックリストの内容が適切かどうか、またマニュアルの使い勝手等に関して事業者の意見・要望を把握し、その結果を「グリーン経営推進チェックリスト」の見直しに活用する。
 
2)試行運用で用いた「グリーン経営推進チェックリスト」
 「チェックリスト(試行運用版)」は次の点に留意し作成した。
 
・検討がまだ充分でない点検・整備等の項目については、今後のチェックリスト作成の参考とするため実際に取り組んでいる具体的内容を記述してもらうこととする。
・各チェック項目についてはレベルを記載せず、チェックリストの内容が適切かどうかについて意見を聞くものとする。
 
3)試行運用の実施概要
 試行運用の実施概要を表3-3に示す。
表3-3 試行運用の実施概要
実施対象 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県:14社 愛知県3社 大阪府3社 (計20社)
回収状況 13社(回収率65%)
(参考)従業員数1人〜20人:2社、20人〜40人:6社、40人〜60人:2社、60人〜80人:0社、80人〜100人:1社、100人〜:2社
実施期間 平成13年7月上旬〜8月上旬
実施方法 説明会開催時にチェックリストを配付し、郵送により回収
 
4)試行運用で得られた意見等
 評価項目およびその内容については、概ね必要な項目は盛り込まれており、妥当であるとの意見が得られた。また、一部に記入方法が明確でない、記入単位が分からないなどの意見があった。
 なお、試行運用で得られた意見および各評価項目に対する取組状況については、参考資料に掲載した。
(4)評価項目体系およびチェックリストの作成
1)評価項目体系
 以上の検討結果を踏まえ、表3-4に示すような評価項目体系を作成した。
 
(全ての事業者が取り組むべき項目)
評価項目1:環境保全のための仕組み・体制の整備
 企業が環境保全の取組を進めるためには、まず、会社としての取組体制が必要である。ここでは、環境に関する会社の基本方針(環境方針)の策定、取組の責任者や組織、権限等の体制整備、従業員に対する環境教育を対象とした。
 
評価項目2:エコドライブの実施
 「エコドライブ」とは、急発進・急加速・急ブレーキを控える、過積載をしない、経済速度で走る、タイヤの空気圧を適切にするなどの運転方法であり、これにより燃費の向上、NOX・PMの排出削減や、安全管理や事故防止という面でも効果がある取組である。トラック運送業界で緊急の課題となっている燃費の向上、自動車排出ガス対策などを進めるうえで基本となる取組として対象とした。
 
評価項目3:低公害車の導入
 自動車の走行により排出されるCO2や大気汚染物質を削減するためには、低公害車やディーゼル車の最新規制適合車を導入することが最も効果的であり、業態に合った低公害車の導入や最新規制適合ディーゼル車の前倒しでの導入を計画的に進めることが必要である。このため、「低公害車開発・普及アクションプラン」の趣旨を踏まえた低公害車の導入、最新規制適合ディーゼル車や地域で定める低公害車等に関する制度に関する項目等を対象とした。
 
評価項目4:自動車の点検整備
 自動車の点検整備は車両の安全確保や環境保全機能の維持のために行なうものであるが、環境保全の観点からはCO2の削減や黒煙等自動車排出ガスの削減対策を進めるうえで最も重要な取組の一つである。ここでは、点検・整備責任者の任命、ドライバーへの教育や情報の提供、点検・整備結果の把握等の体制整備、整備依頼時の車両の状況に基づく具体的な指示、車両の使用状況をもととした独自の点検・整備基準(走行距離、点検期間など)の設定と実施を対象項目とした。
 
評価項目5:廃車・廃棄物の排出抑制、適正処理およびリサイクルの推進
 車両の使用に伴う環境保全対策だけでなく、廃車等に際しての二次公害の防止や、資源の有効活用等もトラック運送事業者にとって重要な取組である。ここでは、廃車や点検・整備に伴って生じる廃油、廃タイヤ等の処理に際しての二次公害の防止、廃棄物等のリサイクルの推進を観点から評価項目とした。
 
 以上のほか、事業者が任意に取り組む項目として、「A.管理部門における環境保全」、「B.輸送効率化の推進」、「C.社会とのコミュニケーション」を例示した。
表3-4 「グリーン経営推進チェックリスト」における評価項目の体系
評価項目
大項目 小項目(具体的取組内容)
1.環境保全のための仕組み・体制の整備 環境方針
推進体制
従業員に対する環境教育
2.エコドライブの実施 燃費等に関する定量的な目標の設定等
エコドライブのための実施体制
アイドリングストップの励行
推進手段等の整備
3.低公害車の導入 低公害車等:導入目標の設定と取組
最新規制適合ディーゼル車:導入目標の設定と取組
地域で定める低公害車等に関する制度への取組
4.自動車の点検・整備 点検・整備のための実施体制
車両の状態に基づく適切な点検・整備
法定点検に加えて、厳しい使われ方等も考慮した独自の基準による点検・整備の実施 エアフィルタ関連
エンジンオイル関連
燃料噴射系関連
その他
5.廃車・廃棄物の排出抑制、適正処理およびリサイクルの推進 廃車・廃棄物の適正な管理
廃梱包材の排出抑制
A.管理部門における環境保全  
B.輸送効率化の推進  
C.社会とのコミュニケーション  
 
2)チェックリストの内容
 評価項目体系に基づくチェックリストの内容は、次に示す評価項目ごとの「取組のポイント」に沿って作成した。
 作成したチェックリストについては、巻末に「グリーン経営推進チェックリストと記入の手引き」として添付しているので、そちらを参照されたい。
表3-5 評価項目と取組のポイント
評価項目 取組のポイント
大項目 小項目
1.環境保全のための仕組み・体制の整備 ・環境方針
・推進体制
・従業員に対する環境教育
 環境保全への取組を進めるためには、まず、企業として何のために、何を目的に取組を進めるかなどを会社の方針(環境方針)として示したうえで、取組のための責任者や組織、権限等を決めておく必要である。また、実際に環境保全の取組を行う従業員に対する環境教育を進めることも重要である。
2.エコドライブの実施 ・燃費等に関する定量的な目標の設定等
・エコドライブのための実施体制
・アイドリングストップの励行
・推進手段等の整備
 エコドライブを会社として実施し、燃費の改善や環境負荷の低減を図るためには、まず、日頃から燃費管理を徹底して行い、それをもとに燃費の改善目標を設定することが必要である。次いで、エコドライブ推進のための責任者を設置し、計画的な取組を進めることとなる。さらに、実際にエコドライブに取り組むドライバーへの教育や指導を行うことも重要である。また、会社としてエコドライブの結果を把握したり、ドライバーがエコドライブに取り組みやすいような装置や機器の導入も重要である。
 エコドライブを進めるためには、その他にも様々な取組が考えられるが、ここでは、是非取り組んで欲しい項目を取り上げた。
3.低公害車の導入 ・低公害車等の導入目標の設定と取組
・最新規制適ディーゼル車の導入目標の設定と取組
・地域で定める低公害車等に関する制度への取組
 自動車からのCO2や大気汚染物質を削減するためには、低公害車やディーゼル車の最新規制適合車を導入することが最も効果的である。このため、低公害車について業態に合った車種を選定し、計画的な導入を進める必要がある。最新規制適合ディーゼル車についても、できるだけ前倒しで導入する計画を設定することが期待されている。
 また、東京都等では粒子状物質排出基準を満たさないディーゼル車が都内を走行するためには粒子状物質減少装置(DPF、酸化触媒)の装着を条例で義務づけているので、これらについても計画的な取組を進めることが必要である。
4.自動車の点検・整備 ・点検・整備のための実施体制
・車両の状態に基づく適切な点検・整備
・法定点検に加えて、厳しい使われ方等も考慮した独自の基準による点検・整備の実施
 自動車の走行に伴うCO2や大気汚染物質の排出を適正な状況に保つためには、法に定められた点検・整備を実施することが不可欠であるが、それに加えて、車両の使用状況等を見ながら適切な点検・整備を進めることが必要である。そのためには、まず、点検・整備責任者の任命、ドライバーへの教育や情報の提供、点検・整備結果の把握等の体制を整えることが必要である。また、日常から車両の状況を把握し、整備の依頼時に、その結果を伝えたり、車両の使用状況によっては、会社として独自の点検・整備基準(走行距離、点検期間等)を設けて点検・整備を進めることが要求される。
5.廃車・廃棄物の排出抑制、適正処理およびリサイクルの推進 ・廃車・廃棄物の適正な管理
・廃梱包材の排出抑制
 廃車に際しては、廃車自体を適切に行うとともに、廃車に伴なう二次的な公害の発生防止や、再生可能な部品が捨てられたりすることがないようにすることも重要である。このためには廃車に際しては、廃棄物の処理やリサイクルを適切に実施している業者に委託することが必要である。
 また、輸送にあたって不可欠な梱包材の排出抑制についても、ドライバーへの指導や目標管理などの仕組みを設定することが必要である。
A.管理部門における環境保全  管理部門における環境保全への主要な取組としては、グリーン購入や電気・紙等の節約、分別によるごみの発生抑制がある。これらの取組は、事業者が明確な方針を示すことによって取組が可能であり、既に取り組んでいる事業者が多く、より組織的に取り組むことにより、確実に経費の削減を図ることができる項目である。
B.輸送効率化の推進  積載率の向上や走行距離の削減等の輸送の効率化は、燃料の節約などに役立ち、環境経営を進めるうえで重要な取組であるが、実際に取り組む場合には荷主や他業者との協力が必要になるなどの問題がある。また、事業規模、業種・業態により、できる取組とできない取組がある。既に輸送の効率化に取り組んでいる場合やこれから取り組もうと考えている場合には、チェックリストの例を参考に組織的な取組が期待される。
C.社会とのコミュニケーション  事業活動を進めるうえで、地域社会と良好な関係を保つことが重要である。そのためには、まず、排ガスや騒音などの苦情に対し素早く対応できる体制を作ることが必要である。また、環境保全活動に関する情報を公表したり、地域と協働して様々な取組を行うことも必要である。








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