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5.3 分布の要因
 播磨灘におけるダイオキシン類及びPCB等の沿岸域と灘の中央部で高くなる分布特性が、どのような要因によって起こっているのかを検証するために、流れについて考察を行った。
 真鍋によると、播磨灘の潮汐流は、備讃瀬戸と明石海峡の地形的影響を受け、播磨灘北部海域の潮汐流は全般に海岸線に沿う方向に流れている。明石海峡、備讃瀬戸および鳴門海峡などでは、早い潮汐流(4〜6kt)が見られ、その他の海域では微弱(0.2〜0.4kt)である。灘中央部付近の流速は海峡部からの距離および中央部の容積から見て、さらに緩やかな流れになるものと予想され、海底直上での流速は、より微弱と考えられる。
 また、図−5.5に潮汐残差流の分布を示したが、播磨灘北部では潮汐残差流よりも潮汐流が遥かに卓越しているので、潮汐の往復流は汚染物質を灘の外へ運び出し、海峡通過時の海水の撹乱が汚染物質の希釈に効果を示しているものと思われる。
 したがって、汚染物質の濃度低下に対する潮汐残差流の物質輸送の効果は低くとも、潮汐流による撹乱および拡散の効果が顕著に作用し、このことが既往調査のダイオキシン類の結果でも、播磨灘北部の明石海峡付近で砂・礫が残り、結果として比較的低い値(0.084〜0,17pg-TEQ/g・dry)を示した要因となっていると考えられる。
 また、播磨灘中央部の流れは微弱なものであり、大きく時計回りに廻る流れがあることから堆積しやすい状況にある。このことが今回のダイオキシン類の調査結果でも、播磨灘中央部で比較的高い値(St.8、St.6:8.8〜9.0pg-TEQ/g・dry)を示した要因となっていると考えられる。
出典:真鍋武彦(1992),瀬戸内海東部海域における堆積物の汚染,瀬戸内海科学,Vol.4,No.3,p235−240
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図−5.5 播磨灘における潮流残差流 (単位=cm/sec)
出典:真鍋武彦(1992),瀬戸内海東部海域における堆積物の汚染,瀬戸内海科学,Vol.4,No.3,p235-240








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