4.3.3 粒径別ダイオキシン
1)粒径別ダイオキシン
(1)土質試験結果
土質試験結果を表−4.7に示す。St.3はシルト+粘土分が99%、St.7では、シルト+粘土分が55%であった。
表−4.7 土質試験結果
(2)上澄中の粒子の結果
St.3及びSt.7における上澄中の粒子(3時間静置後、24時間静置後)をコールターカウンターにより測定した結果を資料編付図−2に示した。これによると、中央粒径はSt.3で5.04−6.35μm、St.7で2.52−3.17μmであった。St.3の中央粒径の粒子数は、3時間で約10万個/mLが24時間で約4万個/mL、st.7では3時間で約230万個/mLが24時間で約40万個/mLと減少しているが、粒径分布に差は生じなかった。
St.3及びSt.7における上澄中の粒子(3hr)の濁度、SS、VSSの確認結果を表−4.8に示す。これによると、SS濃度はSt.3で32mg/L、St.7で59mg/Lであった。
表−4.8 濁度、SS、VSSの確認結果
地点名 |
濁度(度) |
SS(mg/L) |
VSS(mg/L) |
TOC(mg/L) |
St.3 |
沈降3hr |
19 |
32 |
4 |
2.9 |
St.7 |
沈降3hr |
230 |
59 |
4 |
11.3 |
(3)ダイオキシン類分析結果
St.3及びSt.7において実施した粒径別ダイオキシン類の重量組成比で換算した分析結果を表−4.9に示す。ここで、粘土分はダイオキシン類の濃度がpg/Lなので、各SS濃度(St.3:32mg/L、St.7:59mg/L)より1g当たりに換算した値を表に示した。それによると、St.3におけるダイオキシン類の毒性等量は、砂が15pg-TEQ/g、シルト・粘土分が9.7pg-TEQ/g、粘土分(沈降3hr)が24pg-TEQ/gとなっていた。同様にSt.7におけるダイオキシン類の毒性等量は、砂が1.3pg-TEQ/g、シルト・粘土分が7.0pg-TEQ/g、粘土分(沈降3hr)が160pg-TEQ/gとなっていた。
粒径別ダイオキシン類の濃度は、粒径が細かくなるに従って、ダイオキシン類濃度も高くなる傾向にあった。
表−4.9 粒径別ダイオキシン類分析結果
(拡大画面: 48 KB)

注)
1.毒性等量:2,3,7,8−TeCDD毒性等量を示す。
2.毒性等価係数は以下の係数を適用した。
PCDDs,PCDFs:WHO−TEF(1998)
Co−PCBs:WHO−TEF(1998)
4.毒性等量は検出下限未満のものは、試料における検出下限の1/2の値を用いて算出したものである。
底質1g中の粒径別に含まれるダイオキシン類の量を算定した。算定は、表−4.9に示す粒径別ダイオキシン類分析結果に重量組成比を乗じて砂、シルト・粘土分、粘土分の底質1g中のダイオキシン類の量を求め、この合計値を底泥(2mm以下)とした。
その結果、粒径が細かくなるに従い、含有しているダイオキシン類も多くなる傾向にあり、最も多く含有しているのはシルト・粘土分であった。
表−4.10 底質1g中の粒径別に含まれるダイオキシン類の量
(拡大画面: 53 KB)

注)
1.砂分、シルト・粘土分、粘土分の表中の値は、表−4.9に示すダイオキシン類分析結果に重量組成比を乗じて求めた。
2.※印の底泥(2mm以下)の値は、砂、シルト・粘土分を加算した計算値として表示した。
計算値と実測値との差は、ダイオキシン類のTotal毒性等量から見ると3〜23%の変動となった。
表−4.11 St,3における1g中の粒径別ダイオキシン類濃度
単位:pg-TEQ/g-dry
注)※砂、シルト分の計算値として表示
表−4.12 St.7における1g中の粒径別ダイオキシン類濃度
単位:pg-TEQ/g-dry
注)※砂、シルト分の計算値として表示
さらに、粒径別ダイオキシン類の同族体比較を図−4.9に示す。
それによると、St.7の砂(75μm以上)、シルト・粘土分(75μm以下)、3時間後の上澄中の粒子(3hr)を比較すると粒径の違いによるダイオキシン類の組成に差は見られなかった。
(拡大画面: 63 KB)
図−4.9 粒径別ダイオキシン類(同族体比較 St.7)
2)浮遊粒子中のダイオキシン類
底泥の撹乱に伴う浮遊粒子中のダイオキシン類が水質に及ぼす影響を把握するため、播磨灘(St.3)の表層泥を懸濁した場合の水中のダイオキシン類分析を行った。
表層泥1kgをイオン交換水4Lに撹拌し、3時間後、24時間後の上水中のダイオキシン類濃度、SS、TOC(全有機体炭素)を測定した。
その結果を表−4.15に示す。SS濃度は、混合直後、3時間後、24時間後と経過するうちに、77,500mg/L、32mg/L、10mg/Lと減少し、混合直後から24時間後には、7,750分の1に減少した。
同じくダイオキシン類では、混合直後、3時間後、24時間後と経過するうちに、620 pg-TEQ/L、0.75pg-TEQ/L、0.42pg−TEQ/Lと減少し、混合直後から24時間後には、1,500分の1に減少した。
混合直後と24時間後を比較すると、SS濃度の減少比率に比べ、ダイオキシン類及びTOC濃度の減少比率は少ない。
表−4.15 実験結果
時間 |
TOC濃度
(mg/L) |
SS濃度
(mg/L) |
PCDDs+PCDFs
(pg-TEQ/L) |
Co-PCBs
(pg-TEQ/L) |
ダイオキシン類
(pg-TEQ/L) |
混合直後 |
4,500*4 |
77,500*1 |
580*3 |
36*3 |
620*3 |
3時間後 |
2.9 |
32*2
(VSS:4) |
0.69 |
0.059 |
0.75 |
24時間後 |
2.2 |
10*2
(VSS:2) |
0.38 |
0.038 |
0.42 |
注)
1.SS濃度77,500mg/Lは、底泥1kg、イオン交換水4L、泥分0.31より求めた。
2.実測SS濃度
3.St.3の底泥中のダイオキシンの分析結果からSS濃度を乗じて求めた。
4.St.3の底泥中のTOCの分析結果からSS濃度を乗じて求めた。