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2.1.1 特殊救難隊のメンタルヘルスマネジメントに関する研究
東京医科歯科大学 眞野 喜洋
(財)救急振興財団 荻原 隆二
東京医科歯科大学 上村 美智留
奥田 三奈
1.目的
 特殊救難隊をモデルケースとした海上危険作業従事者の実態調査を基に精神的健康度調査を進め、メンタルヘルスマネジメントを実施することにより精神的ストレスの軽減、業務の効率的推進及び同業務に従事する者の安全管理について提言を行う。
2.方法
 対象となった特殊救難隊員28名を2群にわけ、A群に「構造化されたストレスマネジメントプログラム」を、B群に教育的介入のみを行った。
 介入は毎週1回90分、計5回で終了するものである。
 A群に対して行った「構造化されたストレスマネジメントプログラム」とは、ストレスに関連するテーマを決め、心理社会的教育を入れながら、それに関する自分自身の話を参加者が話し合うグループディスカッションを行った後に、BGMと漸進的筋弛緩法および自律訓練法のナレーションを録音した13分間のカセットテープを聞きながらリラクゼーショントレーニングを実施しするもので、教育、ディスカッション、トレーニングの3要素で構成される。一方、B群に対して行った教育的介入は、ストレスに関する心理社会的教育を90分行うものである。
3.分析対象
 全員(男性28名)のうち全測定に参加できた20名である。
4.介入時期
 2000年5月下旬から5週間が介入期間である。8名の脱落原因は、1名は入院、1名は海外派遣、他6名は配置転換であった。
5.評価手法
 精神的健康度の判定には、Profile of Mood States(POMS)、General Health Questionnaire-30(GHQ-30)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HAD)を用いた。免疫機能の評価指標として、Natural Killer(NK)細胞活性の測定を行った。
 POMSとは、McNairらによって開発されたもので、被験者がおかれた状態により変化する一時的な感情・気分の状態を測定するものである。GHQ-30は、Goldberg.D.Pによって神経症のスクリーニングを目的に開発されたものである。HADは、ZigmondとSnaithによる開発で、身体症状を除いた不安、抑うつの状態を測定するものである。これらの心理テストの日本語版の信頼性と妥当性はすでに検証されている。
 なお、NK細胞活性の評価は、51Cr遊離法のE/T比10:1および20:1の平均値を用いた。
6.評価時期
 各指標を用いた測定は、介入第1日目の開始前、介入終了後1週間以内、終了3ヵ月後、8ヵ月後、15ヵ月後に行った。なお、それぞれの測定時間は、午前10時から12時までの間に統一した。
7.統計的手法
 介入前と基準値の比較は、one sample t-testを行った。
 2群間の比較には、Mann-WhitneyのU検定を用いた。
 介入前(介入前)と、介入終了後1週間以内、介入終了後3ヵ月、8ヵ月、15ヵ月のそれぞれの比較には、Wilcoxonの符号付順位検定を用いた。
 なお、NK細胞活性の2群間の比較および介入前(介入前)と、介入終了後1週間以内、介入終了後3ヵ月、8ヵ月、15ヵ月のそれぞれの比較については、pairedt-testを行った。








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