IV 自己攪拌型油分散剤の船舶用散布装置の開発
IV-1 現有油分散剤散布装置の散布性能
1 現有散布装置の要目等
昨年度、市販されている2社の分散剤散布装置(船舶用、通常型分散剤)の散布性能について調査した。
散布装置K、Iは、いずれもスプレーアーム(散布管)方式で、散布管の下方にノズルを装着している。
両散布装置の要目等を表IV-1に散布装置の概略を図IV-1に示す。
表IV-1 現有散布装置の要目等
装置名 |
散布装置K |
散布装置I |
散布管材質 |
ステンレス製 |
ステンレス製 |
散布管寸法 |
3,000mm |
4,000mm |
ノズルの個数 |
3個 |
5個 |
ノズル間隔 |
1,000mm |
800mm |
ノズル散布角度 |
40度 |
25度 |
散布管重量 |
約13kg |
約13kg |
散布形式 |
エンジンポンプ
ポンプ量 約35kg |
エアータンク式
タンク容積200l |
使用圧力 |
0.1〜0.35Mpa |
0.1〜0.4Mpa |
2 試験結果の要約
現有散布装置の性能については、真水を使用して調査した結果を要約とすると以下のとおりである。
(1)粒径については吐出圧により変化し吐出圧が低いほど粒径が大きい。
本調査の吐出圧(0.1〜0.4Mpa)範囲では、散布装置Kの粒径は452〜372μm、散布装置Iは482〜351μmで船舶から散布する通常型油分散剤の粒径としては妥当な大きさといえる。
(2)粒径落下速度は当然粒子が大きいほど早いが落下速度に大きく影響を及ぼす要因として吐出圧が挙げられる。
本調査の叶出圧(0.1〜0.4Mpa)範囲では、散布装置Kは1.76〜2.59m/s、散布装置Iは、2.42〜3.63m/sでノズル噴射角度が小さい散布装置Iが落下速度が早い。
また、両散布装置とも0.5Mpaに吐出圧を上げると霧状の小さな粒子となり空中での滞空時間が長く、風速が早くなると飛散することが懸念される。
(3)吐出圧と吐出量との関係は、吐出圧が高くなるほど叶出量が多くなる。
本調査の吐出圧(0.1〜0.4Mpa)範囲では、散布装置Kは20〜28L/minで40%増、散布装置Iは、12〜18L/minの50%増で叶出圧に対してほぼ比例して増加する。
(4)粘度(水1cSt、高粘度油用9cSt、自己攪拌型30cSt)と叶出量との関係は、吐出圧が一定であれば粘度が9cSt以下ではほぼ同じ吐出量である。また、粘度30cStでは若干吐出量が低下するが、散布調査の段階ではほとんど無視できる範囲である。
(5)吐出圧と散布幅との関係はノズル規格により散布幅が異なるがノズルK、Iとも吐出圧が高くなるほど散布幅が大きくなるがその変化幅は小さい。
(6)現有散布装置K及びIの最小重なり幅の緒元をまとめると以下のとおりとなる。
散布装置 |
噴角 |
吐出圧 |
叶出量 |
ノズル間隔 |
高さ |
重なり幅 |
Kノズル3個 |
40度 |
0.2Mpa |
20.7L/min |
1000mm |
2m |
240mm |
Iノズル5個 |
25度 |
0.3Mpa |
15.3L/min |
800mm |
3m |
70mm |
3 まとめ
現有散布装置の性能については以上の通りであるが、作業船等に装備する場合、両散布装置とも散布管の設置高さの指定がなく、そのため、散布幅や重なり幅が一定でなく過不足散布が懸念される。
また、散布装置Kについては、ノズル間隔(1000mm)が短く、重なり幅の点からはかなり低い位置(2m以下)に設置することが要求される。
更に、散布速度(船速)-散布量(吐出圧)-油層厚さ(油量)に対する適切な散布条件のマニュアルがない機種があり、ユーザー任せの防除処理であるのが現状である。
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図IV-1 現有油分散剤散布装置