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2.砂浜海岸環境調査マニュアル
2.1 砂浜海岸環境調査マニュアルの策定にあたっての現況整理
(1)砂浜環境の特徴
 ○砂礫から構成され、波浪・潮汐等の外力により、常に不安定な環境にある。
 ○全国の砂浜延長の約43%は、侵食により消失しつつある。
 ○様々な機能を持つ、貴重な環境のひとつ。
  →砂浜の機能:防災機能、利用機能、環境保全機能
 ○環境保全機能としては、生物の生息場としての役割、これらの生物活動による水質浄化の役割などが重要。
 砂浜環境の特徴として第一にあげることができるものとして、“不安定性”をあげることができる。
 砂浜地形は河川からの土砂流出や潮の干満による土砂の堆積、波浪による土砂の侵食・流出の繰り返しにより形成されている。この砂浜地形は、総体として安定しているように見えても、常に波浪などの外力の影響を受けて、刻々と変化している。
 このような不安定な環境を持つ“砂浜”は、昨年度調査において整理したように、様々な機能を持っている貴重な自然資源のひとつであるといえる。
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図2.1 砂浜の機能の全体フレーム(平成12年度報告書より再掲)
(2)砂浜海岸の生物
 砂浜海岸の生態系は、陸域から潮間帯を経て海域部にかけ、様々な生物群により構成されている。
 ○海浜植物群落
 ○陸上昆虫類
 ○鳥類
 ○潮間帯性・潮下帯性マクロベントス
 ○甲殻類、魚類等の遊泳性捕食者
 ○希に海岸を利用する種(ウミガメなど)
 砂浜の変動が激しい地形は、その場に生息する生物相にも大きな影響を及ぼしており、岩盤などの安定した基盤に生息する生物とは異なるこの不安定な環境に適応した生物が分布している。
 図2.2に秋山(2000)1により調査された外房の九十九里浜における砂浜の生物相を示した。この成果によると砂浜の生物相を陸側から順に概観すると以下の生物群をみることができる。
1「千葉県の自然誌 本編7 千葉県の動物2 海の動物」、県史シリーズ46(平成12年3月)
 最も陸側には、クロマツ林に代表される海岸林とハマボウフウ、ハマヒルガオ等の砂丘植生からなる海浜植物群落が分布し、ついで陸上昆虫類、鳥類、潮間帯性〜潮下帯性マクロベントス、より上位の食段階にある甲殻類や魚類、産卵に来遊するアカウミガメなどが紹介されている。
 砂浜の生物相として目立つものとしては、これら九十九里浜を例にした生物群が主なものとなる。これに昨年度本研究において整理した潮間帯を中心とした生物群を加えて、砂浜海岸における環境要素・生物群の関係のイメージ図を図2.3に示した。
 このように砂浜の生物群集は、気象・海象条件や生息場となる砂浜地形・底質等の環境条件のうえに、陸から海にかけて様々な生物群が、密接に関連しあって砂浜特有の生態系を形作っている。昨年度調査では、砂浜海岸の生物相として特に潮間帯のマクロベントスに着目したが、砂浜全体を理解するためには、陸域生物を含めた生物相全体を把握する必要があるであろう。また、砂丘植生や鳥類などは、市民にとっても親しみ易い生物群集であることからも、本年度作成するマニュアルにおいては、これら生物群も対象とした。
 このような視点から、旧環境庁「自然環境保全基礎調査」等の既存情報をもとに、海浜に生息する生物種を整理した。また、数力所のポケットビーチを対象に踏査を行い、砂浜(陸部)に分布する生物について、植物を中心に観察を行った。
 特に陸生の生物群についてみると、植物については、調査研究事例も多く、砂浜環境に適応した種が分布することが良く知られているが、その他の生物群については、断片的な調査成果に限られるようである。
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図2.2 九十九里浜における生物分布模式図(秋山、2000)を一部改変
「千葉県の自然誌 本編7 千葉県の動物2 海の動物」、県史シリーズ46(平成12年3月)
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図2.3 砂浜海岸における環境要素・生物群の関係のイメージ








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