<協会だより>
1.研修事業
標記事業に、以下の参加者が有り、期間中それぞれの専門分野に係わる講義を受けると共に関連施設の見学を行った。
国名 |
分野 |
参加者氏名 |
所属機関・役職 |
期間(日数) |
シリア |
鉄道 |
Mr.Abdul Mounem Al Boum |
シリア国鉄車両局長 |
13.11.27〜12.8(12) |
Mr.Ammar Abbasi |
シリア国鉄信号通信局電気課長 |
Mr.Samir Mohammed |
シリア国鉄軌道技師 |
2.海外調査ニュース
●情報収集事業
調査団名 アジア・大洋州B班
対象国 ミャンマー
調査分野 鉄道
調査期間(日数) 13.9.20〜10.3(14)
参加会員名 (株)パシフィック コンサルタンツ インターナショナル、復建調査設計(株)
1.調査の背景
ミャンマー鉄道(以下MR)についての日本の協力は1984年のヤンゴン環状線電化計画JICA調査、1987年MR軌道、通信、信号改良JICA調査がなされた。後者の調査ではヤンゴンーマンダレイ間改良が最優先区間として選定された。
1980年代に旧OECFにより車両購入および修繕設備、レール購入の借款が供与された。その後日本からMRへの公的援助は途絶えている。このようにMRにおいては戦後わずかな改良しか行っておらず、大量の老朽化した設備の更新、近代化など大きな改良が積み残されている。
1997年にJARTSとPCIによりヤンゴンーマンダレイ間改良計画の見直しが行われ、ヤンゴンーマンダレイ間の改良が最重要であるとの再確認を行った。
先進国からの援助が途絶えた1990年代にはOPEC、中国、ユーゴスラビアなどよりローンを得て機関車、客車、貨車購入、通信・信号改良、レール購入などを行っている。
今回のJTCAによる調査は最優先路線であるヤンゴンーマンダレイ間の幹線を対象として行った。しかしながら財源の制約から依然として大規模な改良は望めないので、現在の制約下における日本および先進国からの援助として可能性のある協力、将来のODA再開に備えて準備しておく事項およびMRの現有設備と能力で実現可能な改良項目の調査を行った。
2.調査内容
MRでは緊急を要するもの、長期ビジョンに基づくもの或は手持ちの資機材により改良可能な施策を実現すべきプロジェクトを計画しており、これに対する外国からのODAを期待している。現在実行中、或は緊急を要するプロジェクトは以下のようである。
1)鉄道学園プロジェクト:長期間を要する人材育成のため、MRの発展のための人造りプロジェクトである。用地は既に確保されており、日本政府に対する協力要請も既になされている。
2)被災橋梁の復旧:今年6月に車両もろともに流失した幹線の橋梁について(現在仮復旧されている)復旧工事のためにJICA災害復旧援助を期待している。要請は既に提出されている。
3)ヤンゴンーニャンピレン間軌道更新計画:当区間は現在OPECローン及び独自財源により軌道改良工事が行われている。しかしこの予算は必要額の20%程度しかない。当事業に対してはJICA専門家による技術指導及び追加資金の援助が期待されている。
4)水没区間の嵩上げプロジェクト:当幹線の一部区間は年に数回水没し、幹線輸送および沿線住民の生活を阻害している。日本から民生安定、人道援助の観点での協力を期待している。
5)軌道改良:線路状態が全線に亘り悪化しており、列車動揺が激しくなっている。JICA専門家が技術支援と計画立案支援を行えばMRの現有能力で改善は可能である。
6)橋梁リハビリ:当幹線でMRが9ケ所の橋梁は危険と判断して応急処理を行っている。JICA専門家によりその他の橋梁も含めて科学的に危険度の判定をすることが望まれる。JICAは2001年度に短期専門家の派遣を計画している。
7)ヤンゴン環状線改良:社会経済復興に伴うヤンゴン市内の交通混雑対策として本件をBOTなど新手法による事業化調査として検討する。大気汚染防止、エネルギーの効率的利用等環境面からもヤンゴン環状線を改良し発展させる事が望まれる。
鉄道は総合産業であるため軌道、車両、通信・信号及び施設の保守・運用、営業施策、教育・訓練等全てをバランスして改良向上されなければならない。上記に引き続き中期、長期にわたる改良計画を作成し、効果的な投資を行い設備の機能改善が図られる事が期待される。
○案件形成事業
調査件名 |
  |
フィリピン国ミンダナオ島鉄道建設計画 |
対象国 |
  |
フィリピン |
調査分野 |
  |
鉄道 |
調査期間(日数) |
  |
13.9.25〜10.12(18) |
参加会員名 |
  |
(株)パシフィック コンサルタンツ インターナショナル |
(1)プロジェクトの経緯
1994年にローカルファンドにより、ミンダナオ鉄道建設計画のプレF/Sがローカルコンサルタントによって実施された。この調査は、イリガンーカガヤンデオローダバオに至る全長約420kmのプレF/Sである。ディーゼル機関車牽引による旅客および貨物輸送を目的に、単線鉄道システムの事業化可能性が調査された。調査結果に拠れば、開業後の土地価格上昇を配慮しているためEIRR=25%と報告されている。その後、カナダ、WB等の援助による延長約1,700kmにわたる鉄道計画のF/S実施が計画されたが、ミンダナオにおける政情の不安定化もあり本格的な調査は実施されていない。
政権交代に伴い、アロヨ新政権の旧ラモス政権との関係や、ミンダナオ出身者が政府機関要職を占めていることから推察すると、新政権はミンダナオ開発政策に推進路線をとると思われ、安定化は急速に進むと考えられる。ミンダナオの発展(鉱物資源、農産物の輸出等)はフィリピンにとって最重要課題の一つであることから、交通インフラ整備の一環としての鉄道建設は、同地域における重要プロジェクトである。
(2)調査の目的
過去の調査に基づく需要量および現在の輸送状況を考慮すると、単線、ディーゼルロコによる旅客、貨物輸送システムの導入が現実的なシステムであると考えられる。また、鉄道計画路線の沿線開発についても、その可能性の検討および提案を行うことを目的とした。
調査地域はミンダナオ島内の主要都市であるイリガン、カガヤンデオロ、ブツアン、パガディアン、ダバオの5市とした。
(3)調査内容
ミンダナオ鉄道プロジェクトに関する現地調査は対象とする下記の区間において実施し、プレF/S区間としては、最も優先度が高いと思われるイリガンーカガヤンデオロの路線を対象として行った。なお、この路線計画は、1995年ローカルコンサルタントによって実施されたF/S調査の鉄道ネットワークを大幅に見直したものであり、その比較を行った。
イリガンーカガヤンデオロ |
83km |
(プレF/Sを実施) |
カガヤンデオローブツアン |
162km |
(技術的評価) |
ブツアンーダバオ |
252km |
(技術的評価) |
路線延長 合計 |
497km |
|
上記区間(イリガン−カガヤンデオロ間)において交通量データがないことから、同区間を対象にして2カ所で交通量調査を実施した。
(4)調査結果
本鉄道建設プロジェクトは、単線、ディーゼルロコによる旅客・貨物輸送システムの導入が現実的であると思われるが、ミンダナオ地域に鉄道運営の経験が無いことからフィリピン国鉄と地方政府の連携や新たな運営機関の設立を含めた関係部署間の調整が必要と考えられる。
また、計画路線の沿線開発についても事業誘致のための積極的な活動が望まれる。
以上を踏まえ、本案件に係る資金調達方策について助言を行うとともに我が国JBICローンが適用可能となるための条件についても助言を行った。