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<トピックス>
1. ボスニア・ヘルツェゴビナの「モスタル市公共輸送力復旧計画」に対する無償資金協力について
 我が国政府は、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府に対し「モスタル市公共輸送力復旧計画」の実施に資することを目的として、7億6,900万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、5月15日行われた。
 モスタル市は、ヘルツェゴビナ地方の中心都市で、戦前より多くの企業、教育機関、文化施設が集中していた。しかし、市内を流れるネレトヴァ川をはさんで東にムスリム、西にクロアチア人が居住していたことから、内戦の激戦地となり、川に架かる7橋梁すべてが破壊されたことをはじめ大きな被害を受けた。モスタル市のバス会社の被害も甚大で、バスの多くが戦闘中に破壊・略奪にあったほか、それらを免れたバスも交換部品の調達がままならず稼動できなくなった。
 このため、保有していたバスのうち大半が運転不能となり、事業の約9割、総額約1千万ドルの被害を被った。
 このような状況の下、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府は、モスタル市バス路線の復旧により市民の日常の足を確保し経済活動の活性化を促進すること、および内戦で傷害を受けた市民の通院用の交通手段を確保することを主たる目的とした「モスタル市公共輸送力復旧計画」を策定し、この計画実施のためのバスの購入に必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
 この計画により、モスタル市および周辺町村市民約23万人の交通手段が改善され、市民の社会・経済活動が活発化することなどが期待される。なお、これまで我が国はボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ市やバニャ・ルカ市でも、公共輸送力復旧に対する無償資金協力を実施してきており、先方政府や市民からも高い評価を受けてきている。
2. エルサルバドルに対する円借款の供与について
―エルサルバドル東部の地域開発・物流活発化に貢献―
 
 我が国政府は、エルサルバドル共和国政府に対し、東部の地域開発並びに国際貿易量の増加への対応を支援するため、「ラ・ウニオン県港湾再活性化計画」について、総額112億3,300万円までの円借款を供与することとし、このための書簡の交換が5月17日(日本時間18日)行われた。
「ラ・ウニオン県港湾再活性化計画」
(供与限度額:112億3,300万円)
 
 エルサルバドルでは、国内貨物の4割を海運が取り扱っているが、東部ラ・ウニオン県に位置するクトゥコ港は施設の老朽化により1996年より閉鎖されており、現在は西部のアカフトラ港が利用されている。しかし、同港は自然条件の制約から取扱貨物量に限界があり、特にコンテナ貨物については既にグアテマラ側の港に寄港地を変更する船会社が多くなっている。他方、内戦後の経済成長により同国の国際貿易量は増加してきており、国際貨物のコンテナ化が進んでいる現状に鑑み、それらに対応した港湾の整備が課題とされてきた。
 この計画は、クトゥコ港を国際貿易港として再建するものであり、具体的にはコンテナ・ターミナル、バルク・ターミナルの建設とともに、航路の整備、道路等の港湾関連施設を建設するもの。この計画は、同国の「国家開発計画」において、開発の遅れている同国東部の地域開発の牽引役とされている他、隣接するホンジュラス、ニカラグアを含めた周辺地域の物流の活発化に寄与するものと見込まれている。
 円借款の供与条件は次のとおりである。
(1) 金利:年2.2%
  但し、コンサルタント費用として使用される部分については年0.75%
(2) 償還期間:25年(7年の据置期間を含む)
  但し、コンサルタント費用として使用される部分については
  40年(10年の据置期間を含む)
(3) 調達条件:一般アンタイド
  但し、コンサルタント費用として使用される部分については
  二国間タイド
 なお、今回の円借款供与により、我が国のエルサルバドルに対する円借款の総額は、465億200万円(うち債務繰延16億2,500万円)となる(交換公文ベース)。
3. パラオの「パラオ国際空港ターミナルビル改善計画」に対する無償資金協力について
 我が国政府は、パラオ共和国政府に対し、「パラオ国際空港ターミナルビル改善計画」の実施に資することを目的として、16億9,200万円(平成13年度3億1,800万円、平成14年度13億7,400万円)を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が5月30日行われた。
 独立後間もない(1994年10月独立)パラオは、人口が少なく、国土面積が限られているという状況の下、経済自立を図るため観光資源と水産資源を主要収入源として掲げ、それらの開発を目指している。産業および生活を航空輸送に依存している同国にとって、パラオ国際空港は唯一の国際空港であり、空港旅客は年間12万人、グアムおよびマニラ等への定期便(15往復/週)が運航しており、我が国からもチャーター便(1999年52便)が運航している。
 同空港の旅客ターミナルビルは1984年に完成した2階建ての建物であるが、施工不良によるとみられる構造上の問題から2階テラスに大きなひび割れが生じ、コンクリートが剥離して落下するなど、危険な状態になっている。
 このような状況の下、パラオ政府は利用者の安全を確保するため、「パラオ国際空港ターミナルビル改善計画」を策定し、この計画のため新規ターミナルビルの建設に必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
 この計画への協力により、新ターミナルビルが建設されることによって空港旅客、送迎者および空港関係者の安全が確保されるとともに、同国の観光産業の維持、発展に寄与することが期待される。
4. サモアの「第二次アピア港拡張計画」に対する無償資金協力について
 我が国政府は、サモア独立国政府に対し、「第二次アピア港拡張計画」の実施に資することを目的として、22億4,500万円(平成13年度9億5,900万円、平成14年度8億9,100万円、平成15年度3億9,500万円)を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が5月29日(日本時間30日)行われた。
 サモアは、南太平洋の中央部に位置する典型的な島嶼国であり、国民生活および経済活動は海上輸送に大きく依存している。首都アピアに位置するアピア港は、日本、豪州、欧州諸国等との間に10の国際的航路を有し、外国貿易のほぼすべてを取り扱う同国唯一の国際貿易港と位置づけられており、生活物資の大部分を輸入品に依存する同国にとって生命線とも言うべき港である。
 同港の大型船用の係留施設としては、30年以上前に建設された桟橋式岸壁が1バース(185m)あるが、鋼杭の腐食による老朽化が進んでおり、岸壁は構造強度の低下から荷重制限が課せられる状況となっている。また、大型船舶の長期荷役による他の船舶の沖待ちの増加やコンテナの大型化が進んできていることから、埠頭の使用に著しい支障を来している。
 このような状況の下、サモア政府は、「第二次アピア港拡張計画」を策定し、この計画のための岸壁、防波堤および関連施設の改修に必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。 この計画の実施により、大型タンカー等の寄港および離着岸が安全かつ迅速に行われるようになり、日常生活物資の安定供給が期待される。








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