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就任ご挨拶
常務理事 新行内 博幸
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 この5月に鈴木前常務理事の後任として常務理事に就任致しました。どうぞよろしくお願い致します。
 ODA関連の仕事は今回で三度目になります。最初は在外公館勤務の三年間、二度目は(財)国際観光開発研究センターでの二年間です。この計五年間の勤務は私にとりまして非常に印象深いものとなっています。
 在外公館とは在フィリピン日本国大使館であり、ちょうどマルコス政権末期からアキノ政権発足の時代に当たります。また、某総合商社の支店長であった若王子氏が誘拐され、解放された期間ともほぼ一致しています。
 ある休日の午後、一人でマニラ市内ドライブを終え帰宅する途中のエドサ大通りで反対車線を行く装甲車や兵士を満載した車両の車列と出会いました。一大事と思い、大使館に直行するとすでに政務班の大使館員が情報収集に奔走していました。当初は市内の基地等で小競り合いがあり、半日遅れで配達される日経新聞等では流血の紛争などと一面トップで報道されていました。しかし、当のマニラ市内は一部基地周辺地域を除けば当初はいたって平和であり、いつもと変わらない暮らしが続いていました。しかし、数日後には、帰国したマニラ空港で銃弾に倒れた元大統領候補アキノ氏夫人であるコラソン・アキノ夫人を中心にして基地に通ずる道路や基地周辺での大規模な座込みが連日行われるというように変化していきました。また、こうした大衆の不満を敏感に感知して、当初マルコス側と見られていた軍は相次いでアキノ夫人側へ寝返り、マルコス夫妻と一部取り巻きは米軍ヘリでハワイに強制脱出させられて騒乱は数日で幕を閉じ、アキノ夫人を大統領とする政権が誕生したという事の顛末を経験させていただきました。
 (財)国際観光開発研究センター勤務当時、APECの下部機関の観光WG会合が年2回参加各国の持ちまわりで開催されていました。正式代表は運輸省観光部であり、私は会議に先立つ発表の場でのプレゼンテーション要員でした。チリのサンチャゴでの開催の折、明後日はチリを発つと言う日の午後に、あったはずのトラベラーズチェック(TC)が部屋中どこを探しても見当たらなくなりました。結局ホテルに連絡するとともにロンドンの発行元に国際電話をかけ、幸い翌日にサンチャゴ市内の銀行で再発行してもらえることになりました。当日、私を案内した車は別用があり、一時間ほどしたら迎えに来るということで繁華街の銀行で私を下ろし、走り去っていきました。ところが、銀行の作りが違うのでカウンターがどこにあるのかわかりません。また、周囲に人は大勢いるのですが英語は全く通じません。やむなく周囲を見回しながら人を掻き分け中に入っていくと、幸い行員の一人が私を見つけ、手招きするので近づいていくと既にTCを用意して待っていてくれました。パスポートを提示し、彼の目の前で一枚一枚サインをし、再発行も無事に済ませ、事無きを得て帰国しました。後日談ですが、紛失したはずのTCは宿泊した部屋のベッドの下から発見されたそうです。
 二度のODA関連の仕事ではこれらの他にもいろいろな経験をさせていただきました。三度目の勤務ではどんな経験が待ち受けているのでしょうか、楽しみにしています。重ねてどうぞ宜しくお願いします。








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