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3.2 既存交通調査
チッタゴンを対象とした都市交通の関連調査として以下のものを示す。
 
(1)CDA、Provide for the development,improvement and expansion of the city,1961
 1961年にCDAより提出された、住宅地域、商業地域、工業地域指定などの土地利用計画を中心としたマスタープラン。特に、交通関係の調査は含んでいなかったが、最初のマスタープランであったという理由で参照する。主に地図・図面で構成され、組織制度提案などの政策に関する議論を含まなかった。
 この計画の策定及び実施機関であるCDAが十分な実施体制を整備できなかったため、この計画は30年間以上無視されつづけることとなった。
 
(2)UNDP/UNCHS、Chittagon Metropolitan Master Plan,1992-1995
 1990年から1994年にかけて実施された都市交通調査を元に策定された都市総合開発計画。CMMP1995という名前で参照されることも多い。調査分野は、土地利用・総合計画、交通計画、排水・雨水計画の3分野を対象とした。
 調査内容は、分野ごとに、行政組織の組織改革をまとめた「Structure Plan」、1995年から2015年を計画対象年とした長期政策をまとめた「Strategy Plan」もしくは「Urban Development Plan(UDP)」、具体的な施設計画、交通需要分析などの短期施策をまとめた「Detailed Area Plan」の3つで構成されている。この中で、1994年から2011年までの道路を中心とした交通施設整備の投資計画が、合計で40億タカを見込んでいる。
 チッタゴン市ではこの調査報告を元に、1993年から交通施設整備計画を策定し中央政府に予算申請をしたものの、手続きの遅延、政権交代などにより承認されたのは1999年であった。市域の拡大、モータリゼーションの進展などから市やCDAではより新しいマスタープランを策定することを計画している。
 
(3)CCC、海岸道路などのRoad Network development Plan,2000
 チッタゴン市では現状の60平方マイルの市行政管轄区域を2倍の120平方マイルに拡大することを計画中である。チッタゴン市は港湾施設を中心とした産業構成となっているため、港湾機能を最大限活用するマスタープラン、交通計画を立てる必要がある。チッタゴン市では、40〜50年の長期的視点に立って土地利用計画の再構成を試みたいとしている。
 本調査はこのような視点を持ちながら道路ネットワークの短期的な整備を目論んだ計画として位置付けられるものと考えられる。主要な目的は、郊外地域での物流拠点の開発、海岸道路開発と貨物交通の誘導施策、併せて、鉄道開発、バスターミナルの開発、車両の改善を提案している。
 ここで提案されている道路リンクを図3-9に示す。
z3015_01.jpg
図3-9 チッタゴン市の道路管理図面と投資対象とされている道路リンク

(4)FPC、Chittagon:Planned Urbanisation,2000
 チッタゴン市内の有力企業や大学・諸団体に所属するボランティアが組織しているNPO「Forum of Planned Chittagon:FPC」が提唱している計画であるが、基本的にはCCMP1995の要約版であり、会員が解説を加えている。
 FPCはCCMP1995がチッタゴン唯一の都市交通計画であることを重要視し、系統だった開発計画が進められることを提唱している。2000年11月には独自にセミナーを開催した。
3.3 都市内公共交通の運行状況
3.3.1 バス路線
 既存路線、及び、その頻度を表3-3に示す。BRTA、BRTC、チッタゴン市では運行図面を作成していない。このため、本路線一覧は今回の調査のためにCCCが作成した。BRTC運行のバスは運行スケジュールが決められているが、交通渋滞により遵守は難しく、8割程度の達成率である(頻度の予定が日あたり30〜35本に対し、平均28本)。その他のバスは乗客がある程度集まると出発する。
表3-3 チッタゴン市の都市内バス路線
No 路線名称 営業距離(km) バス種類 日あたり運行本数
1 Oxyzen to Jetty No.15 15 Bus 35
Minibus 54
2 Oxyzen to Cutgor 14 Bus 36
Minibus 51
3 Fateyabad to New Market 7 Bus 32
Minibus 59
4 Bahaddar Hat BT to EPZ 7 Bus 34
Minibus 53
5 Bahaddar Hat BT to New Market 4 Bus 42
Minibus 63
6 Bahaddar Hat BT to New Market thru Tiger Pass 4 Bus 37
Minibus 50
7 Shah Amanat Bridge to New Market 7 Bus 33
Minibus 35
EPZ:Export Processing Zone:チッタゴン特別非課税地域、BT:バスターミナル
バス種類 バス運行者 運行するバスの座席数
Bus 公営、CBOA 30〜50
Minibus Ridar 18
Duranta 17
Diganta 18
Navana 15
Ranger 22
出所:CCC
3.3.2 運行状況
 調査団はBRTC所有の2階建てバス(路線4、New Market 9:00発EPZ行)に試乗した。そのときの走行状況は以下のとおり。
表3-4 バスの運行状況
地点 時刻 距離
(km)
走行速度
(km/h)
備考
New market 9:00 --- ---  
Agrabad 9:15 1.8 7.2 信号制御なしの交差点多く、渋滞する。
Container terminal gate 9:25 1.0 6.0
Rotary (custom house) 9:29 1.0 15.0 郊外部につき、走行状況はよい。
出所:本調査
 バスに行き先表示はないが、現地の人は運行会社名により判断できるようである。
 車内はあまり清掃されておらず、窓は開閉できないが、シートの状態はよい。客席には路線案内や広告などは一切ない。利用者の一人にインタビューしたところ、「終点近くに店があるため普段からバスに乗っている、乗れないときはパラトランジットを使うがバスのほうが広く、眺めがいいので好んで乗車している」という回答を得た。
3.3.3 労務環境
 運行時間は午前6時から午後10時である。BRTCの運転手は午前6時から夜10時まで通しで勤務し、2日に一日勤務するが、民間のバス運転手やパラトランジットは6時から14時、14時から22時までの2交代制を取る。BRTCの運転手37人の平均月収は4,000タカである。
3.3.4 運賃
 運賃は中央政府により統制されているが、今回の調査ではさまざまな機関から回答を得た。基本的に対距離制である。
 まず、1992年調査時における交通機関の運賃詳細は下表3-5に示す。
表3-5 都市内の交通機関運賃
交通手段 料金(タカ/km)
大型バス(BRTC) 0.25
ミニバス(民間業者) 0.31
テンポ(路線運行) 1.00
リキショー 2.5(車両あたり運賃、ほとんどが交渉による)
ベビータクシー 5.0(車両あたり運賃、ほとんどが交渉による)
出所:UNDP調査
BRTAからは1989年の資料を基に以下のような回答を得た。
表3-6 都市内の交通機関運賃(1989年資料)
交通手段 BRTA提示(タカ/km)
大型バス(BRTC、民間業者) 0.32
ミニバス(民間業者) 0.35
ヒューマンホーラー --
出所:BRTA Gazzete,1989
 現況のデータから得られた運賃が以下のものである。CCCから現状の運行状況に基づくデータを提供された。BRTCでは自社資料より提供されたデータに当たる。
表3-7 都市内の交通機関運賃(現況)
交通手段 CCC調べ(タカ/km) BRTCインタビュー
大型バス(BRTC) 0.75 0.47
ミニバス(民間業者) 1.00 -
ヒューマンホーラー 5.00 -
出所:CCC、BRTC(本調査)
3.3.5バスターミナル・バスデポ
 チッタゴン市内には都市内バスのためのバスターミナルは整備されていない。
 都市間バスのBahaddar Hatターミナルが起終点として機能しているが、駐車空間と停留所、売店機能だけであり、市内路線間の乗り換えなどを考慮しているものではない。
 現在、CCCやBRTAは、市内バスのBahaddar Hatバスターミナル周辺でのバス運行の効率化、安全性の向上について検討しており、一方通行規制や専用レーンの導入を交えた計画を策定中である。
 
 BRTCは大型バス100台の駐車容量を持つ広大なバスデポ施設を所有しているが、事業の不採算からバス車両の更新・導入が不可能となったため、部品取り車両の物置となっているのが現状である。また、敷地が広大であるため半分を農地として貸し出している。
3.3.6 タクシー・パラトランジットの運行状況
 チッタゴン市内のパラトランジットに当たる交通機関は、リキショー、ベビータクシー(小型の3輪車、2,3人乗り)、オートテンポ(テンポ、小型の3輪車、4,5人乗り)、ヒューマンホーラー(18人乗り)、ミニバス(15〜20人乗り)などがある。パラトランジットの台数に関する詳細なデータは存在しないが、リキショーはチッタゴン市内に10万台以上走行しているといわれている。また、パラトランジット運行をはじめとする交通事業に携わる人口はおよそ12万人であり、これはチッタゴン市の雇用人口の25%に当たる。
 
 リキショーは拠点内の交通手段として運行しており、料金も安く、市民の足として活躍している。リキショーは道路を走行するが、交通ルールの不徹底や走行帯の不備から走行速度の違う車両の混合がみられ、交通渋滞の原因になっている。また、バングラデシュ国内の専門家によると、リキショーの運転手は、リキショーの楔形形状を利用して、前輪だけ車両間に割り込むことで走路を確保しようとする。この種の行動は、交差点内の車両密度を増大させるため交差点内の渋滞を拠り深刻化している。交差点内やロータリー内における客待ちのリキショーにより発生する道路容量の低下よりも重大な課題である。
 
 ベビータクシーやテンポは比較的運行距離が長く、短距離トリップからチッタゴン市内の拠点間を結ぶ中距離トリップまでの交通行動を分担している。イタリア製ベスパの2サイクル中古エンジンを搭載しているため、大気汚染に与える影響が大きい。バス停周辺での停車が多く、バスと競合する。リキショー、テンポともに個人事業者が多く、規制を発行しても徹底するのが難しい。
 
 ヒューマンホーラーは小型トラック車両を旅客輸送用に改造したものである。インドから輸入され、旧型のバスと比較し燃費や積載効率が良い。このため、近年、バス事業者は所有するミニバスを売却したりリースしたりして、ヒューマンホーラーによる営業を行うようになった。収益が高いため、銀行融資や車両リースにより事業を展開している例も少なくない。
 
 民間のバス事業者にとってバスの購入相場は一台あたり約250万タカであり、これを購入する際のローンの頭金は80万〜100万タカである。一方、ヒューマンホーラーは頭金が少なくすむ(30〜40万タカ)ため、どうしてもヒューマンホーラーの台数が増える構造にある。チッタゴン市内のヒューマンホーラーは現在約650〜700台に達しており、都市内路線バスの運行と競合している。ヒューマンホーラーの運行はBRTAの管理対象にないため、路線申請はしていない。








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