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平成13年度(第45回)船員労働安全衛生月間実施要領
 平成13年度(第45回)船員労働安全衛生月間の実施要領は次のとおりとする。
 本月間の実施に当たっては、実施要綱に掲げる重点対策である、
[1]「「はさまれ」、「転倒」による死傷災害防止の推進」
[2]「漁船における海中転落、海難事故による死亡災害が増加したことにより対応した、漁ろう作業等甲板上における作業での作業用救命衣の着用の徹底の推進」
[3]「高年齢船員の増加に対応した死傷災害防止」
を中心として、最近の各地方(地区)の災害発生状況や事故事例等最近の傾向も踏まえ、海上保安庁、漁業協同組合等との連携を図り、地域の災害実態に即した活動を行うこととする。
 このため、各地方(地区)船員労働安全衛生協議会においては、当該地方(地区)の状況を踏まえて、特に重点的に取り組む方針・事項を可能な範囲で定めること。
 なお、近時の運輸交通分野における、点検・教育訓練等の不十分さに起因していると考えられる事故災害事例にかんがみ、発航前検査・船内教育・操練、作業用救命衣の着用等の法令遵守の徹底を指導する。
 また、船舶所有者に対する作業マニュアルの作成、安全衛生に係る社内研修に家族の参加を図るなど地域単位での研修の実施等について、創意工夫を行い、実効性の向上に向けて適宜見直しを行うなど、自主的な取組みの強化についても積極的な指導・啓発を図ること。
1 船舶及び事業所内の自主総点検並びに防止対策の実施
 船舶所有者及び船員は、本月間の趣旨を十分認識して、企業のトップ自らの指揮監督の下に総括安全衛生担当者等の安全衛生管理責任者並びに船長及び船舶における安全担当者、衛生担当者等を中心として次の事項を実施することとする。
(1) 漁船及び汽船の共通事項
[1]労働時間短縮の積極的推進を行う。
[2]高年齢船員の増加を踏まえ、甲板、作業床等の船内設備への配慮、重量物の取扱い及び作業姿勢等の作業方法並びに照明、騒音、温度等の作業環境の改善に努める。
[3]船内での良好なチームワークを確保するため、作業手順及び作業配置を明確にし、指揮者のもと互いに協力する意思の醸成を図り、意思の伝達や合図は特に大きく明瞭、明確にするよう努める。
[4]生活習慣病に関する健康教育の徹底、健康診断等の実施及び船員災害防止協会が実施する「船員の体と心の健康調べ」の活用により、船員の健康状態を継続的かつ的確に把握し、作業環境の整備や適正配置を行う等適切な健康管理対策を推進する。
[5]中高年齢船員だけでなく若年齢時から各人において、日頃からの生活習慣の改善等生活習慣病に関する予防対策に努める。
[6]船内飲用水の水質検査及び遊離残留塩素の含有率の検査並びにタンク等の洗浄等による適正な水質管理を徹底する。
[7]船員災害防止大会、安全衛生に関する各種講演会、講習会等へ積極的に参加し、災害防止に関するノウハウの修得に努める。
[8]安全衛生に関する改善意見、発明、考案等の提案制度を採用し活用する。
[9]安全衛生に関する企業内表彰を行う。
[10]ファックスだより「船員行政ニュース」、船員災害防止協会発行の季刊誌「船員と災害防止」などにより情報入手し活用する。
[11]船員災害防止協会発行の和英対訳「船員労働安全衛生規則(図解)」や安全作業マニュアル等を船内に備置し外国人船員に活用させる等外国人船員に対する安全衛生教育等を徹底する。
[12]事業場におけるポスター、標語ビラ、垂幕、立看板等の掲示、掲揚を行う。
[13]船舶における緑十字旗の掲揚、ポスター及び標語ビラの掲示、安全担当者及び衛生担当者のバッジ、腕章の着用を励行する。
[14]月間の実施事項の記録及び成果についての検討を行う。
(2) 漁船の場合
[1]地域又は業種単位で船員災害防止のための協議会等の設置を促進し、安全衛生パトロールや安全衛生教育等の共同実施など中小船舶所有者の船員災害防止活動の活性化を図る。
[2]操業形態に合わせて、安全操業ができるような安全上の措置、責任分担等の明確化を図る等、安全管理体制の構築を促進する。
[3]「はさまれ」の防止については、作業開始前の漁ろう装置等の点検、動力伝導装置等の運動部分へのカバーの設置、漁具・漁網の投下及び引上げ等の際の安全確認等の対策を推進する。
[4]「転倒」防止については、甲板の清掃等漁具・漁網の整理・整頓及び突起物等へのトラマーク表示等を必ず行うなど漁ろう作業中の安全対策を推進する。
[5]「海中転落」等の防止については、個人個人に職務内外を問わず常に職場が海上にあるという特殊性を再確認させるとともに、作業前ミーティングによる安全確認及び安全意識の高揚、漁ろう作業等甲板上における作業の際の命綱(安全ベルトを含む。)又は作業用救命衣の着用、げん梯又は手すり及び踏みさんを施した適切な歩み板の使用の徹底、安全ネット等の使用の励行、荒天時における漁ろう作業の取りやめ等自主的な安全基準の作成の促進等死亡災害の絶滅を目指した、ハード、ソフト両面からの総合的な対策を推進する。
(3) 汽船の場合
[1]荷主、元請オペレーター等を含む船舶所有者の集団で船員災害防止のための協議会等の設置を促進し、安全衛生パトロール、安全衛生教育等の共同実施等中小船舶所有者の船員災害防止活動の活性化を図る。
[2]「はさまれ」の防止については、機械又は動力伝導装置等の運動部分へのおおい等の設置や、梯子、ドア、ハッチ等を固縛するなどの対策を推進する。
[3]「転倒」の防止については、甲板、通路等の清掃及び必要に応じ床面、階段等の滑り止め対策を施し、突起物等へのトラマーク表示等の励行、出入港及び荷役作業時等の滑り止めのついた保護靴の使用及び日常の手入れの励行、係船機械等の整理・整頓等の対策を推進する。
[4]「海中転落」等の防止については、個人個人に職務内外を問わず常に職場が海上にあるという特殊性を再確認させるとともに、作業前ミーティングによる安全確認及び安全意識の高揚、荷役作業等甲板上における作業の際の命綱又は作業用救命衣の着用、げん梯又は手すり及び踏みさんを施した適切な歩み板の使用の徹底、安全ネット等を必ず使用するなど死亡災害の絶滅を目指し対策を推進する。
2 安全衛生に関する訪船指導
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会は、関係者の協力を得て、各地域又は業種の実態に応じて指導すべき船舶を選定の上、安全指導班及び衛生指導班を編成し、次の事項について訪船指導を行うとともに、各地域の実状を踏まえて、これら訪船結果に基づき船舶所有者(事業場)に対する訪問指導についても取り組む。
 特に、その際、中小船舶所有者の所有する船舶及び事業場への指導を強化する。
(1)安全指導班の指導内容
[1]漁船については、波浪や漁ろう作業中の「はさまれ」及び「転倒」による災害を防止するため、別紙1に掲げる事項について指導を行う。さらに沖合底びき網漁業については、作業の標準化による安全確保に関する周知・啓発を行う。
[2]汽船については、「はさまれ」及び「転倒」による災害を防止するため、別紙2に掲げる事項について指導を行う。さらに、内航船における出入港・荷役作業においては作業の標準化による安全確保に関する周知・啓発を行う。
[3]漁船又は汽船における死亡災害を防止するため、別紙3に掲げる事項について指導を行う。
[4]高年齢船員の死傷災害防止対策の推進高年齢船員における死傷災害を防止するため、別紙4に掲げる事項について指導を行う。
(2) 衛生指導班の指導内容
 衛生指導班は、検疫所、保健所、(社)日本海員掖済会、(財)船員保険会等の協力の下に、次に掲げる事項について指導を行う。また、生活習慣病予防のための日常生活のガイドライン、自己診断チェックリスト等の資料を作成し配付するなどの創意工夫に努める。
[1]船内飲用水の水質検査及び遊離残留塩素の含有率の検査、タンク等の洗浄等により適正な水質管理を徹底する。
[2]生活習慣病に関する健康教育の徹底、健康診断の定期的、継続的な受診の徹底、健康相談等の実施及び船員災害防止協会が実施する「船員の体と心の健康調べ」の活用により、船員の健康状態を継続的かつ的確に把握し、作業環境や適正配置を行う等適切な健康管理対策を推進する。
[3]生活習慣病に関しては、中高年齢船員だけでなく若年齢時から、食生活の改善、適度な運動、飲酒・喫煙の節制等による予防対策の推進を図る。
(3) 安全指導班・衛生指導班の共通指導内容
[1]船舶所有者(事業所)に対する指導にあたっては、安全衛生に係る社内研修などを行う際に、可能な場合には船員の家族も含めた研修を行うなど、適宜見直しを行い内容の充実を図るよう指導する。
[2]外国人船員に対しては、船員災害防止協会発行の和英対訳「船員労働安全衛生規則(図解)」や安全作業マニュアル等を船内に備置し外国人船員に活用させるなど安全衛生教育等の徹底を図る。
[3]緑十字旗の掲揚、ポスター・標語ビラの掲示、安全担当者・衛生担当者のバッジ、腕章の着用を励行する。
3 サバイバルトレーニング、講習会等の実施
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会は、関係者の協力を得て、生存に必要な知識、技能に関する講習会等を開催し、船員災害防止に関するノウハウの普及促進を図る。特に受講者に対しては、膨脹式救命いかだの展脹等救命設備の取扱いに係る実技訓練の実施及び衛星EPIRB(極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置)、SART(レーダートランスポンダ)等無線救命設備の適切な使用方法等についての教育・訓練に努める。
 また、各種講習会や中小船舶所有者及び現場での安全衛生に関する知識・経験を有する者等で組織された「船員安全衛生推進会」等の場において、船員災害防止協会が作成した「作業の標準化マニュアル」等を活用し指導啓発活動を推進する。
4 安全衛生管理体制に関する指導強化
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会は、関係者の協力を得て、安全衛生管理体制に関する講習会の開催や危険予知訓練等を通じ、安全衛生委員会の活性化を図る。特に、中小船舶所有者のに対して、漁船にあっては地域又は業種単位に船員災害防止のための協議会等、また、汽船にあっては荷主、元請オペレーター等に趣旨の周知を図り、その理解のもとに、これらの者を含む船員災害防止のための協議会等の設置の促進を図り、安全衛生パトロール、安全衛生教育等の共同実施を行わせる等安全衛生管理体制の強化について積極的に指導を行う。
 また、船舶所有者、そのグループ、地区、業種等を対象として、第7次船員災害防止基本計画及び平成13年度船員災害防止実施計画の内容につき積極的な啓発を行い、同計画を踏まえ、かつ、当該船舶所有者に係る船員災害発生状況、その他の個別、具体的な状況を考慮した独自の船員災害防止対策の作成について指導を行う。
 さらに、別紙1から4までの指導等については、船員災害防止協会の安全衛生の資料(ビデオ等)を活用した少人数サークルでの活動等により、安全衛生活動に対する参加意識をもたせ、目標達成感を得られるようにするなど、船舶所有者の取り組みを促進する。
 特に「海難」については、操業海域を同じくする船舶所有者等の団体で安全基準の検討や、同一海域で操業している船舶問で操業中止について互いに相談するシステムを設けるなど、組織的な取り組みが不可欠であることから、より一層安全衛生管理体制に関する指導を強化する。
5 船員災害防止大会、講演会、保護具等展示会の開催
(1) 船員災害防止大会の開催
 船員災害防止協会は船員災害防止大会を開催する。
(2) 講演会等の開催
 協賛者は、安全衛生に関する学識経験者、船員災害防止指導員、地方運輸局長が指定した医師、関係団体等の協力を得て安全衛生に関する講演会、講習会、懇談会、研修会等を開催する。その際は、家族ぐるみでの参加や、簡単な実演を含めるなど創意工夫を行い、内容の充実を図る。
 講演会等の開催に当たっては、漁船における海中転落事故が多発している現状から、漁業基地においては海中転落防止対策、作業用救命衣の着用の励行等について重点を置くほか、開催地域における船員災害の実状等を提案して危険物、有害物による災害防止対策、酸素欠乏による災害防止対策、健康管理対策(生活習慣病の知識と予防対策、エイズに関する正しい知識と予防対策等)、騒音、振動障害の防止対策等について実施するよう配慮する。
 特に、中小船舶所有者及びその船員について、これら講演会等への積極的な参加を促進する。
 また、災害多発地域においては、船舶所有者及び関係者との懇談会等を開催し地域の実態に即した実効ある災害防止対策の推進のための組織の設置等について積極的に指導する。
(3) 保護具等の展示会の開催
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会は、関係団体、メーカー、代理店等の協力を得て船員災害防止大会会場周辺、通船待合所等において、安全衛生保護具、作業用救命衣、保護面、検知器具、水質検査器具等の展示会を開催し、取扱い方法を実演することにより船員災害防止に関するノウハウの普及促進を図る。
6 総合的な健康状態を把握するための「船員の体と心の健康調べ」診断の活用の推進
 船員災害防止協会は、「船員の体と心の健康調べ」(船員個人又は組織内の船員全員を対象として行う○×式の健康診断)の周知・宣伝を行い、活用を積極的に推進する。
7 医療関係機関等との連携等
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会は、(社)日本海員掖済会、(財)船員保険会、地方運輸局長が指定した医師等の協力を得て、特定日を設けて当該病院、診療所その他船員が利用するのに便利な場所に臨時の無料健康相談所を開設する。
 開設に当たっては、船員が有効に活用できるよう事前に趣旨、場所、日時等について周知徹底を図る。
 なお、健康相談に当たっては、生活習慣病を中心とした疾病予防、特に中高年齢船員を対象とした予防検査の受診の促進について配慮する。
 また、医療関係機関等の協力を得て、生活習慣病予防のための日常生活ガイドライン、自己診断チェックリスト等の資料を作成し配付するなどの創意工夫に努める。
8 船員の労働条件の改善の推進
 主唱者、協賛者及び協力者は、船員の安全と健康を維持増進するため、十分な乗組員数の確保及び労働時間短縮等労働条件の改善の積極的推進を図る。
 特に、指定漁船に乗り組む海員の法定労働時間については、段階的に短縮することとしており、平成11年4月からは、操業期間中を除き週44時間(ただし、停泊中は週40時間)となり、平成13年4月からは操業期間中を除き週40時間労働制に移行したところである。そのため、その円滑な実施につき更に関係者に対する周知を図ることとする。
9 テレビ、ポスター、垂幕等による広報活動
(1) テレビ、新聞による広報等
 主唱者、協賛者及び協力者は、テレビ、ラジオ、ホームページ、ファクシミリ、新聞、雑誌、自治体の広報誌等を通じて本月間の広報を行う。
 また、ファックスだより「船員行政ニュース」、船員災害防止協会発行の季刊誌「船員と災害防止」等による情報入手と活用の推進を図る。
(2) ポスター、標語ビラ及びパンフレットの作成配布 船員災害防止協会は、ポスター、標語ビラ及びパンフレットを一括作成する。
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会及び協力者は、これらポスター等を船舶所有者及び船舶に広くゆきわたるように配布するほか、官公署、海事関係者の事務所、通船待合所、造船所その他関係者の目のつきやすい場所に掲示する。
(3) 垂幕、横幕、立看板等の掲揚、掲示
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会及び協力者は、月間の名称、期間等をいれた垂幕、横幕、立看板等を作成し、官公署、海事関係者の事務所、通船待合所、造船所その他関係者の目のつきやすい場所に掲揚、掲示する。
(4) 緑十字旗の掲揚等
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会及び協力者は、全船舶に緑十字旗の掲揚を指導する。
 また、ポスター及び標語ビラの掲示、安全担当者及び衛生担当者のバッジ、腕章の着用についても指導する。
(5) 家族に対する協力の呼びかけ
 地方(地区)船員労働安全衛生協議会及び協力者は、船員の家族に対し、講習会等を通じて災害防止のための協力を呼びかける。
10 安全衛生に関する標語、体験記及び意見の募集
(1) 船員災害防止協会は、安全衛生に関する標語、体験記及び意見の募集を行い、入賞作品は、船員災害防止協会発行の季刊誌「船員と災害防止」等において発表する。
(2) 国土交通省は、上記(1)の入賞作品についてファックスだより「船員行政ニュース」で紹介する。
(3) 船員災害防止協会は、船員労働安全衛生に関して成果を上げた事例(ゼロディフェクト(無失点)による経営改善、小集団勉強会活動、ソフト・ハードの一体となった取り組み等)等を募集し、費用対効果等を勘案したうえ優秀な事例等については、船員災害防止協会発行の季刊誌「船員と災害防止」等において発表する。
11 船員労働安全衛生功績者の表彰
(1) 船員災害防止協会は、船員の安全衛生に功績のあった者の表彰を行う。
(2) 企業は、安全衛生に関する功績等に対する表彰を行う。
12 船員労働安全衛生月間の諸活動実施状況の取りまとめ等
 月間の活動の実施者においては、可能な範囲で参加者等の反応等活動の成果を調査する。また、国土交通省は月間活動の実施状況について、地方運輸局ごとに、協賛者、協力者、実施者から報告を求め、月間の実施結果を取りまとめるとともに、可能な限り、安全衛生対策についてその認知度の向上、導入実績等に照らし、費用対効果の要素も勘案してその評価を行い、今後の改善点、課題、問題点等につき整理する。
漁船における波浪や漁ろう作業中の「はさまれ」及び「転倒」による災害防止〈別紙1〉
ア 作業開始前には、漁ろう装置等の点検を行うとともに、動力伝導装置等の運動部分には、カバーを適宜設ける等必要な措置を講ずる。
イ 漁具・漁網の投下及び引き上げ、さらには漁獲物を外す際、指や手をはさまれないよう細心の注意をはらうとともに、走行中の漁具、漁網がからんだりもつれたりした場合は、機械を停止する等安全な状態となったことを確認してから作業を行う。
ウ 索具又は荷役装置等の振れ回りにより危害を受けるおそれのある場所には、むやみに立ち入らせないようにする。
エ 甲板及び通路等の水、魚の血のり・うろこ等を適宜清掃し、また、必要に応じ床面のマットの敷設又は砂入りペイントの塗布を行い滑らない状態に保持する。
オ 漁ろう作業等においては、滑り止めのついた長靴等の使用の励行を図る。
カ 階段の昇降は、急に駆け上がったり、駆け降りたりせず片手は必ず手すりをつかみ重くかさ張る荷物は、一度に運ばない。 なお、階段には適宜滑り止め、トラマークを施す。
キ 漁具・漁網はみだりに放置せず、整理・整頓の励行を図るとともに、突起物へのトラマークの表示及び被覆等必要な措置を講ずる。
ク 上甲板に波浪が打ち込む場合、また、波浪が打ち込まなくても船体の動揺が激しく転倒災害のおそれのある場合は、やむを得ない作業を除いて甲板上の作業を中止する等状況に応じた措置を講ずる。
汽船における「はさまれ」及び「転倒」による災害防止〈別紙2〉
ア 索具又は荷役装置等の振れ回りにより危害を受けるおそれのある場所には、むやみに立ち入らせないようにする。
イ 機械又は動力伝導装置等の運動部分には、おおい等を設けることにより、それらとの接触から防護するとともに、そのおそれのある場所にはむやみに立ち入らせないようにする。
ウ 動力機関等の修理作業等を行う場合には、修理部分を動力源から遮断するなど、動力源からの影響を受けないように適当な安全措置を講ずる。
エ 梯子、ドア、ハッチ等は、船体の動揺により動かないよう固縛する等して固定する。
オ 甲板及び通路等の水、油等を適宜清掃し、また、必要に応じ床面のマットの敷設又は砂入りペイントの塗布を行い滑らない状態に保持する。なお、甲板上の通路の突起物又は係留索には、トラマークや目立ち易いもので表示して注意を喚起する等の措置を講ずる。
カ 階段の昇降は、急に駆け上がったり駆け降りたりせず、片手は必ず手すりをつかみ、重くかさ張る荷物は一度に運ばない。なお、階段には適宜滑り止め、トラマークを施す。
キ 出入港及び荷役作業等においては、滑り止めのついた保護靴を使用するとともに、靴底にスラッジ及びゴミ等がつまっていないよう日常の手入れの励行に努める。また、積雪、結氷など気象条件の変化にも注意する。
ク 索具、機械部品、ハンマー等はむやみに放置せず、整理・整頓の励行を図るとともに、作業中はまたいだり、乗ったりしない。
ケ船体の動揺が激しいときは、安全な足場の確保に心掛け、身体の安定を保つよう努めるとともに、やむを得ない作業を除いて甲板上の作業を中止する等状況に応じた措置により「転倒」の防止対策を講じる。
コ錆打ち・塗装作業等、踏み台を用いての作業に当たっては、踏み台に滑り止めを施すとともに、面倒がらずに、作業対象に応じて踏み台を移動するよう努める。
漁船又は汽船における死亡災害防止〈別紙3〉
1「海中転落」による死亡災害防止対策の推進
ア 作業開始前には「作業前ミーティング」を行い、作業方法・手順、気象・海象の状況等を周知するとともに、作業以外における乗下船等においても安全確認及び安全意識の高揚を徹底する。
イ 漁具・漁網等を海中へ送り出し、又は巻き込む場合における漁具・漁網等には、むやみに身体を触れさせたり、若しくは、またがらせたりせず、又は作業に従事する者以外の者をこれに近寄らせない。
ウ 漁ろう装置の運転、漁具・漁網等の走行の調整等の作業に従事する者の服装は、袖口、上衣のすそ等を締め付ける等巻き込まれるおそれのないものとする。
工 作業開始前に漁ろう装置及びその付属装具の点検を行うとともに、走行中の漁具・漁網等がからんだり、もつれたりした場合は装置を停止する等安全な状態となったことを確認してから行う。
オ 甲板上又は通路等は整理・整頓し、つまずいたり、滑るおそれのあるものを散乱させない。特に、水、油、魚の血のり、うろこ等により滑り易い状態にある場合は、適宜清掃する。このほか、滑り止めのついた長靴等を着用させる。
力 船外との通行の安全を図るため、げん梯又は手すり及び踏みさんを施した適切な歩み板の使用を厳守するとともに、潮位又は喫水の増減、船体の動揺等で歩み板等が不安定な状態にならないよう確実に取り付けるほか、夜間には必要な照明を施す。また、安全ネットの使用の励行、船内便所の整備改善と使用の徹底を図る。
キ スリップウエイ、魚とりこみげん門等の海中転落のおそれがある場所は、使用時を除き、チェーン、安全ネット、仕切板等で閉鎖する。
ク 上甲板に波浪が打ち込むような荒天時には、貨物の固縛作業等やむを得ない作業を除いて甲板上の作業は行わないことはもちろんであるが、波浪の大きいときは看視員を配置し、波浪の打込み、船体の大きな動揺等作業に危険を及ぼす状態について警告等を行う。
ケ 「海中転落」のおそれのある作業においては、当該作業の内容に応じ、命綱(安全ベルトを含む。)又は作業用救命衣を使用させる。 また、海中転落のおそれのある場所の付近には、救命浮環等を常時配置しておく。 特に、漁ろう作業等甲板上における作業では、必ず命綱(安全ベルトを含む。)又は作業用救命衣を使用させることとし、荒天時や止むを得ずげん外に乗り出す時は命綱を使用し、寒冷海域で操業する漁船においては、イマーションスーツの搭載を推進する。
2「海難」による死亡災害の防止対策の推進
ア 荒天時は波浪に起因する海難が多いことから、波浪の影響を直接受けやすい小型の船舶(曳船、漁船等)においては、より一層安全についての指導啓発活動を推進する。 また、特に漁航においては、波浪による死亡災害の多いことから、荒天時における漁ろう作業の取りやめ等について、操業海域を同じくする船舶所有者又は漁業協同組合等の団体で安全基準の検討を行うための場を設けるほか、同一海域で操業している船舶間で操業中止について互いに相談するシステムを設ける等自主的な安全基準の作成を促進する。
イ 近年の大規模な海難には必ずしも荒天でない場合にも発生しているケースもあることから、自船の復原力(船の傾きを直す力)についての関心を高める。
ウ 航海や漁船操業については気象、海象情報の入手、分析の充実を図り、様々な状況を想定して危険を予知し、セーフサイドに立った対応を図る。
エ 作業用救命衣の着用等を励行することはもとより、海難時の生存者の体験記等の情報を収集し、万が一に備えてサバイバルのためのトレーニングを行う等自己防衛に取り組む。
3「はさまれ」、「巻き込まれ」による死亡災害防止対策の推進
ア 動力機械による災害は、重大災害につながる危険性が高いことから・作業前ミーティング等において注意喚起するとともに、作業方法・手順の周知及び安全確認の徹底を図る。
イ 動力機械の非常停止等非常時に迅速に対応できるような作業配置への見直し、非常停止操作等動力機械の取扱いに関する教育・訓練を徹底する。
高年齢船員における死傷災害防止対策〈別紙4〉
ア 高年齢船員が自らの体力等を適切に把握し、かつ、慣れた作業も初心に返り作業にあたる。
イ 作業の際は、作業台を用意するなどより適正な姿勢を確保し、中腰、前かがみを避け、特に重量物取扱い時には注意する。また、船舶の揺れが激しいときは、特に身体支持に気を付ける。
ウ 乗組員の良好なチームワークを確保するため、作業手順及び作業配置を明確にし、指揮者のもと互いに協力する意思の醸成を図り、意思の伝達や合図は特に大きく明瞭、明確な方法を用いて連絡する。
エ 甲板及び階段等に適宜滑り止め等を施し、さらに必要な箇所の照明を明るくする等船内環境の整備に努める。








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