あらすじと音楽
序曲 第1場 マックス
小さな男の子マックスが、白い狼の衣装を着て、部屋の外の廊下で遊んでいる。「ジャングルのテント」に隠れ、おもちゃの兵隊をやっつけたり、テディ・ベアを待ち伏せしたり、たいへんなわんぱくぶりだ。[スケルツィーノ――パントマイム――レチタティーヴォとハミング・ソング――コーダ・レプリーズ]
第2場 ママ
死んだふりをして床に転がっていると、変な音を立てるものが近づいてきてびっくりする。ママが古い掃除機をかけながらやって来たのだ。ママはマックスを叱るが、マックスは,言うことを聞かないでいたずらを続けたので、夕食抜きで寝かされてしまう。[スケルツォA・B――トリオ――スケルツォ・レプリーズ]
第3場 マックスの部屋
むくれたマックスは、野生の森を空想し、両腕を挙げまわりのものに魔法をかける真似をすると、部屋は本当に森に変わってしまう。やがて海とともに小さな帆かけ舟が現れ、マックスはそれに乗り込む.[パントマイムとアリエッタ1――変換の音楽――アリエッタ2(ラグ)――コーダ]
■第1の海の間奏曲
マックスはたったひとりで海に漕ぎ出し、いく日も、いく晩も、何週間も、1年以上も過ぎた。ある夜明け近くには大きな海のかいじゅうが現れるが、マックスが命令するとまた消えていった。やがて島が見えてくる。
第4場 かいじゅうたち
島にはヤシの木や洞窟がある。マックスが舟をつないでいると、遠くから唸り声が聞こえてくる。洞窟からかいじゅうたちが現れて、マックスを脅かす。連中のしぐさはなにやら滑稽だが、いつなんどき手に負えなくなるかわからない。そのへんてこな振る舞いをしばらくじっと見ていたマックスだが、ついにかいじゅうたちをどなりつけ、目玉をにらみつける。するとかいじゅうたちはおとなしくなった。マックスはまわりの様子を調べようとするが、常にかいじゅうたちが忍び寄って来て襲いかかろうとする。そのたびに、マックスは魔法のにらみで連中を服従させるのだった。[レチタチーヴォとムジカ・インテルナ――かいじゅうアンサンブル2(叫び)――パントマイム]
第5場 戴冠式
マックスが腕を挙げると海が消え、空は曇り、稲光がして、森はうっそうとしてくる。小さな山羊のかいじゅうが王冠を運んできて、マックスのまわりで踊り、じらし、王冠をマックスの手の届かないところに置く。かいじゅうたちは列を作り、「かいじゅうたちの王様」としてマックスに冠をかぶせる。[山羊かいじゅうの踊りを伴う変換の音楽――かいじゅうアンサンブル1(歌)――戴冠の音楽]
第6場 かいじゅうたちのどんちゃんさわぎ(ワイルド・ランパス)
お祝いの宴会が始まる。マックスとかいじゅうたちは大騒ぎして、踊りまくる。ばか騒ぎが頂点に達した時、めすのかいじゅうツィッピーが、手がつけられないほどはしゃぎ始める。突然マックスは踊りをやめるよう命令し、連中を夕食抜きで寝かせてしまう。かいじゅうたちは叱られた子供のような反応をするが、すぐにあくびをして寝入ってしまう。[ワルツ、マズルカ――かいじゅうアンサンブル3(あくび)]
第7場 ひとりぼっちのマックス
ひとりになったマックスは、冠をはずし、テントのそばに座り込んで、自分の家のこと、ママのこと、大好きなあたたかいスープのことを思う。そしてかいじゅうたちを起こさないように抜け出し、島の端まで行って舟に乗ろうとする。[アリア]
第8場|別れ
かいじゅうたちは目を覚まし、脅かすように舟に近づいてくる。マックスが舟に乗り込んだとたん、連中は急にやさしげな態度で話しかける。「行かないで。お前を食べちゃいたいほど好きなんだ!」――かいじゅうたちが激していく中、舟は岸を離れる。[かいじゅうアンサンブル4(ささやき)――かいじゅうの五重唱と退場の歌]
■第2の海の間奏曲
ふたたびマックスはたったひとり海の上。やがて森も舟も消えていく。
第9場|マックスの部屋
マックスの部屋が見えてくる。テーブルの上にはお盆。そこには夕食が置いてあったのだ。マックスはスープを見つけて、飲んでみる……まだあたたかかった。[カデンツァ]
国塩哲紀(東京オペラシティ文化財団)