日本財団 図書館


母と子の健康管理
母子保健に関する知識の普及
 母と子の健康を守り子どもを健全に育成するためには、母性や乳幼児の保護者が母子保健に関する正しい十分な知識を持ち、状況に応じて自ら判断できる能力を涵養することが必要です。
 このために保健所や市町村では思春期保健教室(学校と連携して、思春期の子どもたちが赤ちゃんや幼児に接しながら、保健教育を学ぶ)、両(母)親学級、育児教室などを開き、家族計画や妊娠中の生活、遺伝や母子の疾病、栄養指導、育児に関することなどをテーマに講習会を行うほか、個別指導の場を設ける等、日常の生活習慣の指導や正しい保健知識の普及を図っています。
妊娠の届出と母子健康手帳
 妊産婦や乳幼児の健康診査や保健指導など母子保健に関する各種の施策が、それぞれの対象に適切に行き届くようにするためには、市町村長や保健所長が妊娠している人を早期に把握しておくことが必要です。
 そのため、母子保健法では妊娠したことがわかったら、できるだけ早く市町村長に届け出るように規定しています。
 この届け出によって母子健康手帳や妊娠健康診査受診票が交付されます。母子健康手帳は、妊娠、出産、育児から小学校入学までの一貫した健康記録であると共に、予防接種の接種証明にもなる大切な手帳です。
 妊娠届をしなかったために母子健康手帳の交付を受けなかった場合は出産後でも交付されますし、2人以上の子を出生した時は、その子の数に応じた母子健康手帳が交付されます。また、手帳を破損や紛失した場合は再交付を受けることができます。
低体重児の届出
 出生時の体重が2,500g未満の乳児を低体重児といいます。低体重児は正常の新生児に比べ生理的にいろいろな問題があることが多く、疾病にもかかりやすく死亡率も高いため、母子保健法では低体重児が生まれたら保護者は速やかに保健所長に届け出なければならないこととしています。
 この届出は未熟児の出生をすみやかに把握し、早期に適切な養育が行われるよう指導援助をするものであり、届出を受理した保健所長は、保健婦等の家庭訪問による養育指導を行うほか、入院を必要とする未熟児に対しては医療の給付を行っています。
保健指導
 保健指導は母子保健の基本的対策の一つであり、特に妊婦への適切な指導は、妊婦中毒症等の疾病や未熟児出生等の減少のために重要な対策です。
 このため、母子保健法では市町村は妊産婦や乳幼児の保護者に対して妊娠、出産、育児に関する必要な保健指導を行い、あるいは医師、保健婦、助産婦について保健指導を受けるように勧奨しなければならないこととしています。この保健指導は個別あるいは集団で行うものと、保健婦や助産婦、看護婦等が家庭を訪問して指導するものとがあります。
z0001_51.jpg
健康診査等
 妊産婦や乳幼児の健康診査は、安全な分娩と健康な子の出生の基礎的条件であり、また異常を早期に発見し、早期に適切な措置をする上で極めて重要なものです。この健康診査には、市町村が集団で実施するものと病院や診療所に委託して行うものがあります。
1 妊産婦健康診査
 すこやかな赤ちゃんの出生や発育のためには、まずお母さん自身が丈夫でなければなりません。妊産婦の健康診査は、病気や異常などの早期発見・早期治療を目的として市町村で行われております。その内容は地域の実情に応じて違います。
2 乳幼児健康診査
 市町村では小学校までの乳幼児に対して、必要に応じて健康診査を実施しています。乳児については市町村が交付する受診票により医療機関において健康診査を受けることができるようになっています。
3 1歳6か月児健康診査
 1歳6か月位になると、歩行や言語などの身体や精神の発育状態が容易に把握できるようになります。そこで運動機能や視聴覚等の障害、精神発達の遅滞など障害をもった子どもを早期に発見、適切な指導を行い、心身障害の進行を未然に防止するとともに、生活習慣の自立やむし歯の予防、幼児の栄養や育児に関する指導などを行い、健康の保持増進を図るため、市町村が1歳6か月の時点で健康診査を行うことになっています。
 これにより異常が認められた場合には、各専門機関で精密健康診査が受けられます。
4 3歳児健康診査
 3歳児(満3歳)は、身体の発育や精神の発達からみて最も重要な時期です。母子保健法では、市町村が全ての3歳児に対して、発育の状況や栄養の状態、疾病や異常の有無、精神発達の状況、歯の疾病や異常の有無等について健康診査を実施しなければならないと定めています。この健診により異常が認められた場合には、各専門機関で精密健康診査が受けられます。
5 先天性代謝異常等検査
 フェニールケトン尿症などの先天性代謝異常及び先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を早期に発見、早期に治療することによって、知的障害等の心身障害を防止することができます。先天性代謝異常症は数万人に1人という非常にまれな病気ですが、この病気を発見するために血液による検査が行われています。
 この検査は、病院で生後5〜7日の赤ちゃんの足の裏からごく少量の血液をろ紙に採って行います。これを各都道府県の検査機関で検査し、異常が認められた赤ちゃんには公費による医療の給付が行われています。
 また、本疾患の治療に必要な特殊調合されたミルク「特殊ミルク」を登録医療機関に供給しています。
 検査は現在、次の6つの疾病について行われています。
 
●フェニールケトン尿症
●楓糖尿症(メープルシロップ尿症)
●ホモシスチン尿症
●ガラクトース血症
●先天性副腎過形成症
●先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
 
6 神経芽細胞腫検査
 乳幼児に発生する神経芽細胞腫(小児がんの一種)の早期発見・早期治療を図るため、マス・スクリーニング検査を行っています。これは、生後6か月ごろの赤ちゃんの尿を採り各都道府県の検査機関で検査しますが、異常が認められた赤ちゃんには、公費による医療の給付が行われています。
7 B型肝炎母子感染防止対策
 B型肝炎の撲滅を図るため、地域の実情に応じて妊娠初期の妊婦の血液を検査機関で検査することにより、B型肝炎ウイルスの保有者である妊婦を発見する事業を市町村が行っています。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のために
 乳幼児突然死症候群は、健康であった乳幼児が突然死亡する原因が不明な症候群です。欧米ではうつぶせ寝、喫煙、人工栄養、厚着の4つが危険因子とされています。そこで予防するために、
●赤ちゃんを寝かせる時は、あお向け寝にしましよう。
*医学上の理由から医師がうつぶせ寝を勧める場合もあるので、この様な時は医師の指導に従います。
●妊娠中や赤ちゃんの周囲で、煙草を吸わないようにしましよう。これは身近な人の理解も大切ですので日頃から協力を求めましよう。
●できるだけ母乳で育てましょう。
z0001_52.jpg
医療の給付
未熟児養育医療の給付
 出生時の体重が2500g未満の低体重児は、保健所に届け出ることになっています。
 保健所ではこの届出により、保健婦が訪問指導を行います。入院させて養育する必要のある未熟児に対しては、養育医療の給付が行われています。
育成医療の給付
 肢体不自由児等身体に障害のある児童であって、治療効果が期待できる疾患については、医療費の給付が行われています。
 給付の対象となる疾患は次の通りです。
 
●肢体不自由によるもの
●視覚障害によるもの
●聴覚、平衡機能障害によるもの
●音声、言語、そしゃく機能障害によるもの
●内臓障害によるもの(心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう、直腸及び小腸機能障害を除く内臓障害については、先天性のものに限る)
 
給付の申請は、本人にかわって保護者が都道府県知事に対して行います。
小児慢性特定疾患に対する医療費の援助
 小児の慢性疾患のうち特定の疾患については、その治療方法の確立と普及を図るための研究が行われています。これらの疾病はその治療に相当の期間を要し医療費も高額となるので、患者家庭の医療費の負担軽減を図るため医療給付が行われています。
 給付の対象となる疾患は次の10疾患群です。
 
1 悪性新生物 2 慢性腎疾患 3 ぜんそく
4 慢性心疾患 5 内分泌疾患 6 膠原病
7 糖尿病 8 先天性代謝異常 9 血友病等血液疾患
10 神経・筋疾患    
z0001_53.jpg








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION