漢詩初学者講座 伊藤竹外
吟詠家に漢詩のすすめ―(四十五)
伊藤竹外
伊藤竹外先生プロフィール
愛媛漢詩連盟会長
(18吟社、会員200名、毎月指導、添削)
六六庵吟詠会総本部会長(吟歴60年)
財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
財団法人日本吟剣詩舞振興会理事
平成5年 文部大臣地域文化功労賞
平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞
著書 豫州漢詩集(編著)
南海風雅集(編著)(2版)
漢詩入門の手引き(10版)他。
一、添削は四多の一つ
詩の上達の秘訣は古より三多と言って(一)多讀(二)多作(三)多商量が伝えられています。多商量とは賈島の推敲の例の如く自ら量り考え思索を費やすことですが、この推敲は初級は初級なりの、中級は中級なりの勉強の範囲の中での推敲であって指導者の添削から受ける深さや学問には到底及びつかないことが多いと思います。
毎月、筆者は県内外吟社及びこの講座の投稿詩を加えて二百首に及ぶ添削は「一字の師」どころか二十八字中、二十字まで直すこともあって辞書も今だに二百回以上を繙き正に四苦八苦の連日に追われています。
それでも「目からうろこの落ちた思いです」とか「二十年前の線から又一年生に帰って勉強し直します」とか「添削を受けドキッとした感動が深く、詩とは驚きだと発見しました」などの礼状に接すると私も又励みになります。曽て数十年前から小原六六庵、新野斜村、高橋藍川、太刀掛呂山先生などから添削を受けて開眼した恩恵は図り知れないものがあり、今そのお返しのため努力しているところです。
添削の多くは平仄の誤用の他、措辞、脈絡の不自然なもの、起承、転結が二句一章になっていないもの、同類の字句を重ねたもの、俗語や常識語を応用するものなど随所に見受けられます。この添削を受けたら熟読玩味し、この添削を三多に加えて一層勉学に励んでほしいものであります。
二、課題「歳晩書懐」について
この題は毎月の例題の中で年末に多く出されるものですが、大方の作詩家なら手慣れた表現と内容で簡単そうですが、さて今年は全く異なります。米国にテロが勃発し、乗っ取った航空機を百十階建の国際ビル二棟に自爆して崩壊せしめて多数の死傷者を出し、これに対する報復戦争が中東に起り、日本でも自衛隊法を改正して海外に協力艦艇を派遣するなど、世界の平和は一朝にして壊え深刻な不安を迎えての歳晩ですから常識的な作詩では倒底、書懐とはなり得ません。
三、生の俗語は詩にならない
ところが、これまで全く経験のない情景と内容ですから過去の如何なる詩語集にも見当らないため各位皆それぞれ苦労したものと思います。次の如き新聞記事から応用した生の俗語は詩的表現でないことは明らかです。
乱神 自爆殺傷 兇暴 残虐 暴虐 革命 暴力 蠻奴 など
四、起承句と転結句の脈絡しないもの
五、添削実例
漠然とした表現は舌足らずだが、具体的にあれもこれもと詰め合わせての表現では焦点が定まらなくなる。