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平成十二年度 剣詩舞道大学大学院
■平成十三年二月三日(土)〜二月四日(日)
■船の科学館オーロラホール
内容の濃い各授業に、真摯な態度で臨む受講生たち。
 今回で二回目となる剣詩舞道大学大学院が、船の科学館で行われました。二日間にわたる質の高い講義に、受講生全員真剣な面持ちで取り組んでいました。その真摯な態度は、剣詩舞にかける意欲、情熱を感じさせるものでした。
二月三日(土)
 冬の寒さが落ち着いたかのような、暖かな日差しの三日、船の科学館は全国から選ばれた剣詩舞道大学大学院受講生でにぎわっていました。
 午後一時少し前、オーロラホールに集まった受講生に対して、矢萩保三事務局長から事務局通達があり、剣詩舞道大学大学院の意義が述べられました。また、今回はセレモニー的な要素を割愛し、実技重視の大学院であることが告げられました。そして、開講の言葉を山岡哲山専務理事が述べられると、笹川鎮江会長が挨拶のために登壇されました。そのお言葉の中で「剣詩舞道は日本人自身が育てた伝統芸道であり、各方面から期待されています。各人が発展させるという意識を持ち、真摯に剣詩舞道と取り組んでください」と話されました。会長の挨拶が済むと、いよいよ課業が始まりました。
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開講式で挨拶する笹川鎮江会長
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開講のことばを述べる山岡哲山専務理事
 
 最初の講義は河田神泉副会長による「剣詩舞指導者への期待」でした。内容は「昭和三十四年に吟剣詩舞道憲章が制定されて以来、日本独自の伝統芸術として発展してきた剣詩舞ですが、他の芸術、沖縄舞踊やモダン・バレエなども参考にしながら、剣詩舞道に迫っていく気構えを発揮して欲しいし、芸の研鑽が青少年の育成につながるものだと思う」と語られました。
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剣詩舞指導者への期待を述べる河田神泉副会長
 
 つづいて入倉昭星常任理事が「剣詩舞道指導者への提言」を話されました。「剣詩舞はレベルアップしてきたし、会員も増えてきましたが、さらなる会員の獲得は指導者が芸術的、人間的魅力をつけること。肩書きだけでものを言うのではなく、ユーモアやウィット、明るさも必要だ。そして、指導者として、この人のためならという人になる、人を安心させる人になる、人から求められる人になる、この人にまた会いたいと思われる人になる、ここ一番で腹がくくれる人になる、人に好かれる人になる」など、指導者としての条件を提言されていました。
 
「剣詩舞の演技研究」を担当した剣詩舞世話役の皆さん(写真は講義順)
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 役員の講義のあと、休息をはさんで午後からは他ジャンルの芸術が披露されました。まず舞踊家の榊原喜与子先生による「沖縄舞踊の鑑賞とその振付について」でした。女踊りといわれる踊りの形を実演し、その振りの解説を丁寧になさっていました。最後に「古典は基本に帰り、一からやってください」とアドバイスしていました。次は舞踊家の金森勢先生が「モダン・バレエの鑑賞とその振付について」を担当しました。ここでは、ひとつの試みとして、金森先生がモダン・バレエで「春望」(杜甫作、笹川鎮江会長吟詠テープ)を舞いました。その振付解説では、苦労しましたを連発し、会場を笑わせていました。
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榊原喜与子講師(左)と共演の粉川敬心氏(右)
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受講生からの質問に答える金森勢講師
 
 夕食のあと、五時からは「剣詩舞の演技研究(優勝演舞ビデオ鑑賞と振付説明)」が行われました。講義は剣舞少年の部「八幡公」(平成十一年度)、剣舞一般一部「戌辰の作」(平成十一年度)、詩舞少年の部「早に白帝城を発す」(平成十二年度)、詩舞一般一部「春夜洛城に笛を聞く」(平成十二年度)、群舞詩舞の部「帰省」(平成九年度)、群舞詩舞の部「梅花」(平成十一年度)のビデオを見ながら、振付けた宗家や会長が解説を加え、受講生から質問を受けながら答えていく形式で行われました。活発な質疑応答が繰り返され、内容の濃い講義となりました。
 
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意見交換会では受講生から活発な意見か述べられた
 
二月四日(日)
 朝九時から課業が開始されました。初めの講義は日本大学芸術学部講師の石川健次郎先生の「現代剣詩舞を考える」でした。話の内容は「いま日本の伝統芸能そのものが悩みを持っている西洋音楽の到来で変化がおきているが、舞踊美学の立場から剣詩舞を考えてみたい。舞踊とは美しい感動を与えることである。日本舞踊の現状を知らせることで剣詩舞のこれからを考え、あわせて吟詠家の協力なくしては、絶対に剣詩舞の発展もありえない」と、現状に甘えず、新しい剣詩舞の創造を提言していました。
 
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「私も昔、モダン・バレエを稽古したことかあります」と意見を述べられる石川健次郎講師
 
 つづいて狂言大蔵流東次郎家四世の山本東次郎先生による「狂言における舞の表現」が行なわれました。狂言の振りをわかりやすく解説していただき、剣詩舞にも大いに参考になったことでしょう。
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狂言における舞を披露する山本東次郎講師
 
 午後からは、前日に引き続き「剣詩舞の演技研究(優勝演舞ビデオ鑑賞と振付説明)」が開かれました。群舞剣舞の部「坂本竜馬」(平成九年度)、群舞剣舞の部「加波山詠史」(平成十一年度)の二題が紹介され、解説のあと質疑応答がありました。
 課業の最後は入倉昭星常任理事が進行役になり、意見交換会が行なわれました。質問は北海道地区から坂上邦苑さん、東日本地区は小松櫻光さん、中部地区は今泉昭剣さん、近畿地区は上羽美風さん、中国地区は谷野恍風さん、四国地区は神田秀翆さん、九州地区は葵秀鳳さんが代表で行ないました。質問内容は「高齢者への指導はどうすればいいのか」「群舞の場合、演舞の中間で演舞者の一部が抜ける場合の採点はどうなるか」など、演じている人ならではの身近な疑問が多く寄せられていました。
 活発な意見交換が終わると閉講式が行われ、笹川鎮江会長がお元気な姿で代表者へ修了証書を渡されました。そして、?群華要常任理事が高らかに閉講の言葉を述べると、剣詩舞道大学大学院も無事に全課程を終了することができました。本栖湖で行われる「夏季吟道大学」と比べると、一泊二日という短い時間でしたが、それだけ内容も充実しており、受講生にとってこれからの糧になったことでしょうし、船の科学館を後にする人々の輝いた顔を見れば、それが間違いのないことだと確信できました。
 
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閉講式で笹川鎮江会長から各地区代表者に修了証書が授与された
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閉講のことばを述べる?群華要常任理事








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