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第二十九回全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会
■平成十三年三月四日(日)
■東京・三田・笹川記念会館国際ホール
主催:財団法人日本吟剣詩舞振興会
少壮吟士候補二名、誕生。
研鑚が実を結ぶ、高水準の決選大会。
 財団主催コンクールの中でも、極めて厳しい審査基準で知られる全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会が三月四日、笹川記念会館において開催されました。第二十九回となる今回も、百四十名の吟詠家が果敢に挑戦。名誉ある少壮吟士の称号をめざして、日頃の精進を発揮していました。
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財団を代表して挨拶する河田神泉副会長
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開会の辞を述べる山岡哲山専務理事
 
 早朝九時、客席はすでに満席。多くの吟詠愛好家の期待が注がれる中、開会セレモニーの幕が切って落とされました。まず、山岡哲山専務理事が開会の辞を述べ、国歌斉唱のあと河田神泉副会長が財団を代表して挨拶に立ち、「ぜひ日頃の成果を私たちに聞かせ、感動させてください」と出吟者にエールを送られていました。つづいて、競吟実施要項が説明され、審査員が紹介されると、いよいよ競吟が開始されました。
 このコンクールは声の美しさ、発声の自然さ、声量の豊かさ、声の明瞭さ、節回しのよさなどが審査されるだけではなく、音程に合っているか、伴奏テープと調和しているか、アクセントや鼻濁音が正確に表現されているか、さらには舞台マナー、吟詠マナー、社会人としてのエチケットが備わっているかといった、人間性までも審査対象となり、それゆえに財団主催のコンクールの中でも、特に厳しいコンクールとして知られています。それだけに挑戦する方にとっても、大きな緊張感のなかでの決選大会となったことでしょう。
 北は北海道から南は九州まで、都道府県大会、地区大会を勝ち抜いてきた精鋭百四十名は、日頃の研鑚、精進を舞台にぶつけ、白熱した競吟が行われました。会場もいつのまにか立ち見ができ、本コンクールへの関心の高さをうかがいしることができました。
 当のコンクールといえば、今回はレベルが均衡した、高水準の決選大会という印象がありました。実際、講評でもそのことが述べられていました。そのことは、吟界の発展を願う多くの人にとって明るい材料であり、音楽性、芸術性の高い吟詠を提唱する財団の意図が着実に浸透していることの証でもありましょう。ただ、大舞台の重圧か、タイムオーバーや絶句、誤読する方がかなりあり、少壮吟士への道がいかに厳しいかを知らせてくれました。さらに、今回は詩文の紙を持つ方が多いように感じました。ルール的には持っても減点とはなりませんが、すべての詩文を自分の記憶の中に入れて吟じるほうが、感情の移入がしやすいのではないかと思われました。
 すべての吟詠が終了すると、河田神泉副会長が講評に立ちました。その話を要約すると、
 
●発音審査の成績はA1が四十三名、A2がニ十七名で、アクセントは半数が良い成績を収め、高い実力のコンクールになった。ちなみにB1は三十九名、B2が十二名、C1が二名、D1が二名いた。
●言葉を伝えることは、心を伝えること。もっと発声技術を磨いて欲しい。
●母音がはっきりしない人がいた。笹川鎮江会長が常々おっしゃっていることで、母音の発音には気をつけたい。
●同じ母音が重なると、続けてしまう人がいた。
●伴奏に完全にのれた人は三名。大半は伴奏と調和できていない。今後の課題として勉強して欲しい。
 
 などが話され、出吟者ばかりか、会場に詰め掛けた愛吟家の方々も真剣な面持ちで講評に聞き入っていました。そして、いよいよ結果が発表され、プログラム番号と名前が呼ばれるたびに、出吟者とその関係者の一喜一憂する姿が印象的でした。今回見事に少壮吟士候補となったのは二名で、出吟番号七十四番の八代美恵さん(宮崎)と、百二十三番の久保早苗さん(香川)でした。そのお二人を見ていると、単に吟詠のうまさだけではなく、吟詠家として人間として、これから少壮吟士の名にふさわしい人格が求められることでしょうが、少壮という名の重圧も跳ね除け、立派な少壮吟士になられることと感じました。
 入賞者一人ひとりに表彰状が手渡され、?群華要常任理事が閉会の辞を告げると、長く熱い一日にも幕が下ろされました。今回、入賞した方も、できなかった方も、全力でぶつかった全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会は、見る者に吟詠の素晴らしさ、感動をあたえてくれました。来年はどんな大会になるのか、どんな吟詠家が出てくるのか、吟界のリーダーである少壮吟士の新たな登場に胸が膨らみます。
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閉会の辞を述べる?群華要常任理事
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壇上で晴れて表彰を受ける入選者の皆さん








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