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「HANGAR FLYING」
レーシングフォト・クラブ  永井 幸雄
 
 リノ・エアレースに行ってきました。今年で38回となるエアレース史上最長の連続開催となるビッグ・イベントです。
 今回は、世界中で数多く開催されている航空イベントでも唯一のエアレース・イベント、リノ・エアレースのリポートと旅の模様で記録をまとめるつもりだった。だが例の飛んでもないテロ事件で全てが狂ってしまった。
 9月9日、サンフランシスコ経由でリノ(タホ)インターナショナル空港へ。通関や乗り継ぎ時間を含めて、成田発からおよそ15時間。レンタカーを借りて、レース会場のステッド飛行場へ急ぐ。ここから一本道で北へ約30キロ、40分程で到着。明日から始まる予選に備えて、大はレース・エンジンに積み替えたり、小はピカピカに機体を磨き上げるなど、各クラス各チーム共、それぞれのペースで整備に勤しんでいる。顔馴染みのカメラマン連中と情報交換などしながら日没まで過ごす。疲れと眠さでヨレヨレ状態だが、それをギリギリまでガマンしてホテルへ入り、ガッと眠ると、一発で時差ボケは吹っ飛んでしまう。
 翌日からは薄明りの中を起き出して、朝7時から日没の19時30分頃まで、毎日12時間以上、1週間をステッド飛行場に棲息する”謎の東洋人”になるのが例年の習わしのようなもの。
 翌日も朝から快晴。各クラスのタイム・アタック、予選がスケジュール通りに消化された。そして9月11日。日本本土に台風16号が接近しているとの事から、70ch超えるプログラムから日本の放送をキャッチして、その様子を見ていた。なんと東京直撃だ。この日、僕が企画したリノ・エアレース・ツアーに参加した先発メンバーの数人が成田を出る事になっていたので、これはどうやら到着が遅れるかな、などと思いながら、8時近くまで見ていた。
 さあ飛行場へ出かけようと思いながら、本日の天候のチェックのため、チャンネルをローカルへ切り替えた。
 サンフランシスコかな…、海に突き出した高層ビル群が盛大に煙を噴き出している。凄い大火事だ…、リノが終わったら2日間サンフランシスコに滞在することにしているんだけれども、どうかな。と、画面をスッと黒い虫のような物が横切った。途端、高層ビルの上部が突然に爆発し、噴煙を吐き出した。何がどうなっているのか分からない内に、画面が木々に覆われた公園のような風景を映し出した。しかし静かな公園の奥の建物から、やはり盛大に煙が上がり、周囲から消火のための放水が行なわれている…。
 僕のいるリノは西海岸時間で、東海岸時間とは2時間30分の時差がある。だから8時を回って見た映像は、あの事件が起きてから、1時間以上も経過した録画であり、リアル・タイムの対岸からの遠景の映像では、ただビル群全体がこれ以上ない秋の優しい日差しに包まれて、ボアッとした煙の上に顔を出している。
 ほかのメジャーにチャンネルを合わせると、場所はニューヨークであり、4機の飛行機がクラッシュした!と伝えている。全身に鳥肌が立ったような、戦慄に襲われた。何なんだこれは…。
 やがて途轍もないテロ事件だということが見えてきた。飛行機、それも旅客機を使って乗客をも道づれにした体当りテロだった。
 時間経過(2日後くらいから)と共に、第二のパール・ハーバーだという形容がニュース放送などで使われた。冗談じやないと思った。その意味を仲間のアメリカ人カメラマンに聞いてみた。
 それはアメリカの国土が突然に攻撃された。という事実を指してのことで、「日本による奇襲」とか、「日本が…」という意味とは異なるということなのだが、今一つ訳然とはしていない。
 テロ事件以後の「飛行機の環境」を巡る情勢をさらに追求したい。
以下次号








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