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「ニアミス」  奥貫 博
 
 おそらくは、不時着模擬訓練でもしていたのでしょうか。河原に、格好の場所を見つけ、進入したところ、たまたまそこが、航空機が活動中の場外離着陸上であったと言うわけです。またVHFの周波数が出発飛行場のフライトサービスの周波数であったため、122・6MHZでのボイスも確認できなかったのでしょう。そして、正面を右旋回で回避する機体に気がついて、慌てたということなのでしょう。真正面から接近する機体同志の場合、背景が地面ですと極めて視認しにくく、したがって離陸する私の方が先に発見し、回避できたのですが、それにしても、正直、驚きました。
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ひと騒がせな侵入機(後日撮影)
 上の写真が、その時の侵入機体です。もちろん極めて危険なことですから、飛行場へ電話して、厳重に抗議しておきました。まあ、色々と事情はあるのでしょうが、航空地図を見れば、場外離着陸場があることが一目瞭然なのですから、地図の確認も不充分であったということでしょう。特に、エアワークに熱中しますと地図の概念がおろそかになります。利根川上空のように、一見安全そうな場所では、警戒心も薄れがちなのでしょうが、実は河川敷上空は、ラジコン、グライダー、飛行機のアクロ、モーターパラ、パラシュート等、様々なものが飛んでいる危険地帯なのです。従って、十分な注意を払う必要があります。繰返しになりますが、先ずは、飛行計画段階での情報確認、そして空中では目と耳を総動員した確実な見張りと、ルールに従った早めの回避、これをきちんとすることに尽きると思います。
 航空機同志の空中での異常接近、いわゆるニアミスは,良好な視界の状況であっても、思いもよらない時に発生するようです。信じられないような場面であっても、衝突に至る事態を防ぐ最後の砦は、パイロット自身の意識、即ち、目と耳を総動員した確実な見張りであることは、論を待たないでしょう。また、そのニアミスの事実を明確に相手に伝え、更に多くの人に知っていただいて、共に注意し合うことであろうかと思います。
 要は、有視界気象状態でのニアミスは、パイロット自身の意識の問題であると認識することでしょう。
 先日、そういったニアミスの一歩手前と言ったことがありました。
 離陸の時ですが、滑走路の安全を確認し、122・6MHZでのローカルボイスを送信し、機体の軸を滑走路に合わせました。尾輪式の機体ですから、その時点からしばらくは、前方が見えません。離陸滑走を開始し、速度がついて、尾部が上がり、前方が見渡せるようになった時、突然、正面から進入してくる飛行機が目に入ったのです。
 こちらの存在に気がつかないのか、よける気配も無く進入してきます。既に離陸を中止できる状況ではありませんから、先ずは離陸し、ゆっくり右旋回して回避しましたところ、相手もようやく気がついた模様でした。
 一体何事かと見れば、侵入機体は、特に機体の異常と言ったことも無いようで、ゆうゆうと上昇していきます。このまま放置することはよろしくないので、侵入機に少し接近して機番を確かめましたところ、すぐ近くの飛行場の所属機体であることが分かりました。








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