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「不純物」  奥貫 博
 
 先日、少しばかり訳がありまして、一ケ月間の着陸回数が120回に達したことがありました。サンデーフライヤーとしては、極めて珍しいことです。これほど飛べば、もう、飛行機は手足のように、と言いたいところですが、現実は、そうはいきません。どうも様子がおかしいのです。
 1日あたりの着陸回数は最大25回でしたが、満足の行く着陸があるかないかといった状況なのです。その上、何かが変です。気持ちもすっきりしません。この場所で飛び始めた頃の、充実した満足感が無いのです。
 一体どうしたのかと、ある時、自分自身の着陸を冷静に観察して見ましたら分かりました。着陸操作が不純物だらけになっていたのです。理想の着陸とは、早め早めの判断により、必要最小限の操作で、思ったところに、毎回同じように、正しい姿勢と速度で気持ち良く接地することなのでしょうが、それが変になってしたったのです。
 適当な判断で進入し、地面近くになってからあれこれと操作して、何とかそれなりの場所に接地といった状態なのです。つまり、不純物だらけの着陸になってしまったという訳です。正直言いまして、一体いつの間にといった所です。おそらくこういった事を続けていますと、すぐにどうのこうのと言ったことは無いにしろ、いつか、ひどい目に合うのでしょう。
 アマチュアが、一人できちんと飛びつづけるのは難しいものです。ここ一ケ月間の100回を超えるフライトも、その前も、全てが一人でのフライトでしたから、毎回気がつかない程度に、少しづつネジが緩んでしまったと言うことなのでしょう。理由は色々あります。臨機応変の判断と行動が出来るようになったのも確かです。一見、すっかり飛行機に慣れて、一人前になったと錯覚しそうな気さえします。しかし、それと引き換えに基本がどこかへ行ってしまったとしますと、これは困ったことです。
 考えてみれば、最初の頃の充実感とは、教わった通り、あるいは、思った通りのことが、きちんとできた満足感と言うことなのでしょう。それがこうしたいと言う理想を追う気持ちが希薄になってしまったために、その結果としての満足感も得られない。ひどい時は、その辺の感覚が一切無くなり、滑走路が正面から追ってきて、さすがに接地姿勢と速度はきちんと整えなければなりませんから、そこではシャキっとしますが、それだけのことなのです。
 さて、そこで気がついて一念発起、基本に戻そうとしたのですが、これが難しい。一度変な癖をつけてしまいますと、元に戻すのは大変なものです。教わった時の教官の声を思い出しながら、ひとつひとつ直して行きませんと、容易に元に戻りません。自己流の応用操作、即ち不純物が、つい出て来てしまうのです。
 そういったことで大層苦労もしましたが、気がついて良かったとも思っています。結論から言いますと、自己流に流れ、不純物だらけになるのは易しく、逆に元の基本の姿に戻すには、大変な苦労が必要ということでした。従って、これからのフライトにおいては、改めて基本を遵守し、安易な気持ちでの応用に走ることが無いよう、肝に銘じた次第でした。
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基本通りの着陸は易しいようで難しい








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