3-4 2000年1〜2月および2000年12月の暖水塊
2000年には3月に発生し,数ヶ月持続した暖水塊の他に,2月と12月にそれぞれ暖水塊の発生が観測されている。2000年2月の場合は,Fig.17に示すように1月20日頃に黒潮流路に東経138度付近でくびれが生じ(Fig.17a),1月27日には黒潮流路のくびれの先端が北緯34度近くまで達し,そこから北西方向に暖水舌が伊勢湾口付近まで延びていた(Fig.17b)。2月3日には黒潮流路のくびれは小さくなり,黒潮は北緯33度付近まで戻った(Fig.17c)。しかし,暖水舌はそのまま取り残された形となり,2月9日の海況図はこの暖水舌から暖水塊が形成されたことを示している(Fig.17d)。この暖水塊は2月17日には熊野灘に移動し,その後黒潮本流に飲み込まれたのか消滅した。
Fig.17のそれぞれの海況図に対応する海面高度分布をFig.18に示す。1月19日の海面高度分布(Fig.18a)で,黒潮流路の北方へくびれに対応した海面高度の高まりが御前崎沖に見られるが,さらにくびれが発達した1月27日の海面高度分布(Fig.18b)では,より明確な高高度部が,北緯33度45分,東経138度を中心に認められる。この高高度部の影響はFig.18aの場合よりもさらに南方に延びていて,北緯32度から33度付近に見られる構造的な低高度部を東経137度30分あたりで,東西に分離した形を生み出している。基準ジオイド面に現れる構造的な低高度の帯を考慮すれば,この形状は,流路のくびれに伴う黒潮水の北方への侵入によく対応しているといえる。黒潮流路が南へ戻った2月3日の分布(Fig.18c)では,この高高度部はより拡散した形となっているが,取り残された暖水舌の存在を示している。遠州灘沖に孤立暖水塊が生じた2月9日の分布(Fig.18d)では,高水位部が西に移動し,高まりの中心は伊勢湾湾口になっている。西方への移動そのものは,海況変化に対応しているが,Fig.18の図全部で,伊勢湾口から大王埼付近に高高度が現れる傾向がある。前章で述べたこの付近で低水位がよく見られるとしたことと矛盾するが,このことについてはさらに検討を加える必要がある。
2000年12月に生じた暖水塊は,紀伊半島潮岬すぐ東のところで生じた黒潮流路の小さなくびれから生じたものである。この暖水塊は12月7日頃発生し,12月末には消滅した短命の暖水塊であるが,比較的明確に暖水塊が認められた12月14日について,海況図と海面高度分布図をFig.19に示す。この場合には海面高度分布には,暖水塊の存在を示すような兆候はほとんど認められない。Sekine and Okubo4)は,同様に潮岬東方で発生した小暖水塊について報告しているが,その場合の暖水塊の構造は浅く40m程度であった。2000年12月に発生した小暖水塊も同様に浅い構造をしていたとすると,海面高度分布にその存在が現れないのは当然であろう。
a
b
C
d
Fig.17 Oceanographic condition in Sagami bay and around Izu islands when a warm eddy was observed in February 2000 in the Enshu-nada sea along the Pacific coast of central Japan. (from prompt report of MIRC)
a: on January 20,2000, b: on January 27,2000,
c: on February 3,2000, d: on February 9,2000.