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TOPEX/ERS-2 Analysis Jan 10 2001
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a
TOPEX/ERS-2 Analysis Jan 28 2001
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TOPEX/ERS-2 Analysis Mar 5 2001
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C
Fig.16 Distribution of SSDH in Sagami bay and around Izu islands corresponded to XTB cast line of T/S Seisui-maru.
a: on January 10,2001, b: on January 28,2001,
c: on March 5-6, 2001.
 2001年1月に発生した暖水塊については,1月12日, 1月30日,3月5〜6日の3回,勢水丸によるXBT観測を実施し,暖水塊の存在を確認している。それぞれの観測結果をFig.15a, b, cに示し,ほぼ対応する時期の海面高度分布をFig.16a, b, cにそれぞれ示す。1月12日の観測では,Stn.1を除き,暖水塊の中央部が観測されており,単調な断面が示されている(Fig.15a)が,その部分での200m深の水温は18℃前後の値を示しているのが注目される。この海域での黒潮流軸の指標となる水温は,200m深で15〜16℃であるから,このことは黒潮流軸よりもさらに沖側の高温水が暖水塊に取り込まれたことを示している。1月30日の観測は暖水塊の縁辺部に沿って観測線が設定されたので,200m深の水温は15〜16℃と比較的低くなっている,ほぼ中心点付近(Stn.5)まで観測できた3月5〜6日での200m深の最高水温は17℃を超している。3月5〜6日には,暖水塊の直径は著しく減少しているが,発生後約2ケ月経過しても,中心部の水は黒潮流軸よりも沖側の特性を保持し続けていることがわかる。
 Fig.16に示された海面高度分布を見ると,1月10日(Fig.16a)および1月28日(Fig.16b)には暖水塊に対応する等高度線の閉じた高高度部が認められる。この両日の分布図を比較すると,高高度部の位置が若干西へ移っている。これに対応する暖水塊の西方への移動は, Fig.15aの海況図とFig.15bの海況図の間でも認められ,このような現象も衛星海面高度分布の情報から得られることが示唆される。しかし,高高度部の位置は,海況図の暖水塊の位置よりも東方に見られる傾向がある。一年間の衛星海面高度画像を全部調べて見ると,伊豆半島のすぐ沖に高高度部が認められる頻度が非常に大きい。海洋現象としてこのような高高度が現れることは考え難く,これは基準のジオイド面の歪みに基づく可能性が高い。そうであれば,暖水塊に対応した高高度部の位置が東にずれて現れることは極めて自然である。これに対し, 3月5日の海面高度分布には閉じた等高度線を持つ高高度部は現れない。しかし,東経137度30分付近で等高度線の南への張り出しが見られ,おそらくこの部分が暖水塊に対応しているようである。しかし,Fig.15cの水温断面図を見ると暖水塊の直径は小さくなっているものの深い構造を維持しており,かなりの水位上昇が起こっていると思える。今まで見てきた,種々の例でも,熊野灘付近の暖水塊の存在が,海面高度分布には明確に認められない傾向がある。一年間の海面高度分布を概観してみると,この部分に低高度部がしばしば現れるが,これも基準ジオイド面の歪みに原因している可能性がある。しかし,伊豆半島沖に見られる高高度部ほど頻度が高くないようで,次章に述べる2000年1月発生の暖水塊ではこの部分に高高度部が現れており,さらに検討を加える必要がある。
 2000年3月と2001年1月に発生した暖水塊はいずれも,伊豆半島沖から西方に向かって生じた黒潮のくびれ・暖水舌の侵入から生じた。南は,1984年の4月に同様の経過で発生した暖水塊を報告している3)。この暖水塊は1〜2ケ月の寿命を持っていたようであるが,衛星資料やADCP資料が十分でなく詳しい経緯はわからない。しかし,当時の限られた資料によっても明確に示されていることから考えて,伊豆半島沖から西方への黒潮のくびれから生じる遠州灘沖暖水塊は,規模が大きく,強度(暖水の及ぶ深さなど)も強いものになる傾向があるのではなかろうか。








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