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7. おわりに
 なぜ,日本海の「高密度水形成機構」にブレーキがかかり,深層循環様式がモードAからモードBヘシフトしてしまったのか? 図4に示したように,日本海底層水の酸素濃度の減少傾向は日本海の主要な海盆(日本海盆と大和海盆)に共通して観測されることから,日本海全体にわたる現象と考えてよい.しかも20世紀前半まで遡るほど長期にわたって継続していることは,日本海だけのローカルな環境変化に起因すると考えるよりも,何らかの地球規模の環境変化とリンクしていることを強く示唆している.
 そのような要因としてまず思い浮かぶのは,地球温暖化に代表される産業革命後の地球環境の急速な変化である.日本海北部のシベリア沿岸域の冬期の最低気温の記録を調べてみると,今世紀を通じて4〜5℃増加してきたことがわかる(Gamo, 1999).また,冬期の北西季節風の強さも,ここ30年間の間に約1m/sほど弱まってきたといわれる(Varlamov et al., 1997).これらの気候変動が相乗的に作用して冬期の北部日本海表面水の冷却を妨げ,十分に密度の高い表面水の生成を阻止しているのではないだろうか.
 このような気候変動は,IPCC報告等にあるように今世紀にはさらに顕著に現れてくる可能性が大きい.地球環境変動のモニタリングという観点から,日本海調査の重要性はますます高まるであろう.より充実した観測とモデルの開発が望まれる.








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