「深層の流れ」
日本海の北部の深層では1993年以来、多くの長期係留測流が行われ、その結果を集計したのが図6(永野、2000)である。海底地形の傾斜部では海底地形に沿った反時計回りの循環が卓越し、平坦な部分では中規模渦の活動が活発であることも確認されている。図7は1993年夏から3年間の日本海盆中央(M3)での測流結果(Takematu et al., 1999)であるが、M3は海盆の比較的平坦な部分にあるため、中規模渦の活動が活発で、時には30cm/sを超えるような振幅と数ヶ月程度の時間スケールを持ち、鉛直方向にコヒーレントな流速変動が観測される。その時間変動は明瞭な季節変動特性を持ち、夏季には流速は弱く、晩秋から徐々に流速変動が激しくなり、冬の終りから2〜3ヶ月間がもっとも流速変動が激しい。これらの流速変動は中規模渦によってもたらされていることは赤外画像による海表面水温に現れる中規模渦と流速変動が強い相関を持つことからも推測される。
図6. 過去の測流データから計算した日本海の深層の平均流.
図7. 1993年夏から3年間の日本海盆中央(M3)での測流結果.