(5)底泥の化学的特性と生育特性の関係
[1]pH、強熱減量
底泥のpH及び強熱減量とヨシ茎個体数密度との関係を図4.2.16に、それらの値別ヨシ存在コドラート数の頻度分布を図4.2.17に示す。
図4.2.16 底質分析値とヨシ茎個体数密度の関係
図4.2.17 底質値別ヨシ存在コドラート数
前節の1元配置分散分析においては、pH、強熱減量ともにヨシの生育指標に対して有意な関係を示さなかったが、データの分布特性に着目すると、以下に示すような傾向的特徴が認められた。
先ず、pHについてみると、今回のサンプルデータは、全体にばらつきがあるものの全体的傾向として中性のやや酸性寄り付近に比較的集中しており、ヨシ密度の高いデータもこの付近の値を示すものが多い。
pHが7.5以上のアルカリ寄りの領域にもヨシ密度の高いものを含め4データが存在するが、pH5.5を下回る弱酸性領域には密度が低く背丈も低い1データが存在するだけである。
これらの分析結果からは、底泥条件としてやや酸性寄りのpH6.0〜7.0付近が最もヨシの生育が集中する環境であることがうかがえる。
強熱減量についてヨシ密度との関係の図を見ると、強熱減量の値の低い側にデータが偏っている傾向が見られる。強熱減量5%以上の領域に分布しているのはヨシ存在コドラートでは2データのみであるものの、その2データはともにヨシ密度が平均値以上のコドラートである。
頻度分布より、強熱減量1〜2%のコドラート数が最も多く、それを超えるとコドラート数が大幅に減少していることから、少なくとも現状で大半のヨシが生育している環境の強熱減量の条件は、概ねこの1〜2%の領域と見られる。
ただ、底泥中の多少の有機物はヨシに限らず植物の生育に必要と考えられるため、上記の結果をもって、必ずしも強熱減量が低ければ低いほどヨシに好適な条件であるとは言えない。強熱減量0〜1%のコドラート数が1〜2%のコドラート数と比べて少なくなっているのは、そのことに関係している可能性もあると思われる。