第2章 ヨシに関する既存の知見等
本調査研究を進めるに際しては、ヨシの生態特性や種々の生育環境条件との関わり、ヨシ群落の機能等に係る基本的な情報、ならびにヨシの植栽工法に関してこれまでの研究等により蓄積されてきた知見を踏まえる必要がある。
また、今回、琵琶湖岸の既往ヨシ植栽地等における現地調査を実施するに当たり、その調査地区の選定や調査データ解析の条件設定等の観点から、琵琶湖岸でのヨシ植栽の現状と実績・問題点等を把握しておくことも不可欠である。
このため、本章では、上記に係る種々の文献や既存の調査報告書、その他淡海環境保全財団または滋賀県が保有する資料等を収集し、整理した。
2.1 収集した文献・資料とそのDB化
ヨシに関連する文献・資料について、論文、雑誌、書籍、行政・研究機関の報告書等を収集した。
結果、計257の文献・資料が収集されたが、その資料が相当な量に上ることから、これらについてひととおりの目通しを行った上で、この中から本調査の主旨に概ね沿って参考にし得ると思われる文献・資料を抽出した。
最終的に抽出した文献・資料数は計117であり、これらについては、抄録を単票の形に整理するとともに(ただし図鑑等の類を除く)、今後、目的に応じて検索可能なDB(データベース)として利用可能なように、パソコンの表計算ソフトを用いて文献一覧を作成した。
DBとして整理した項目は概ね次のとおりである。
1)連番
2)文献種分類
(論文、雑誌、書籍、記事、単報、報告書等)
3)著者、編者
4)文献タイトル
5)発表年
6)雑誌名・出典
7)巻、号、ページ
8)要約・関連事項
9)カテゴリ分類
(ヨシの生理・生態・生育環境条件、ヨシの植栽工法、ヨシの環境保全機能等)
本書では、上記により整理した内容のうちから、文献名等の一覧を表2.1.1に示すとともに、次節において、ヨシの生理・生態、ヨシの環境保全機能、ヨシの植栽工法の大きく3つの観点から、既存の知見の概要をとりまとめた。
なお、次節の文中における文献引用番号は、表2.1.1の整理番号に対応している。
本章の文献引用は全てこの表をもとにしていることから、章末の引用文献リストの掲載は省略した。
表2.1.1 収集・整理したヨシ関連文献・資料一覧(1)
No. |
著者 |
タイトル |
発表年 |
雑誌名、出典(出版社) |
巻(vol) |
No. |
ページ |
分類 |
生理 ・生態 |
環境保全機能 |
植栽工法 |
その他 |
項目 |
1 |
琵琶湖研究所 |
湖岸システムの機能とその評価に関する総合研究報告書 |
1987 |
滋賀県琵琶湖研究所プロジェクト研究報告書 |
- |
86A1 |
65-102,
110-131 |
○ |
  |
  |
  |
サイズ、生育場所 |
2 |
近畿地方建設局、水資源開発公団 |
淡海よ永遠に |
1993 |
琵琶湖開発事業誌 |
5 |
- |
281-311,
313-349 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(地盤)
大株法、ポット法、小株法、地下茎法、付帯施設 |
3 |
細見正明 |
河口域の湿地生態系による窒素浄化機能の強化に関する研究 |
1995 |
環境研究助成成果報告書 |
14 |
2 |
37-103 |
○ |
○ |
  |
  |
生育場所(塩分、水位)
水質浄化(ヨシフィルター) |
4 |
Bittmann, Ernst |
Grundlagen und Methoden des biologischen Wasserbaus |
1965 |
Der biologische Waaserbau an den Bundeswas- serstrassen |
- |
- |
17-78 |
  |
  |
○ |
  |
ビットマン法 |
5 |
桜井善雄 |
水の風景(総集編1) |
  |
  |
  |
  |
106-136 |
  |
  |
  |
○ |
  |
6 |
松尾友矩、
大垣眞一郎、
浅野孝、
宗宮功、
丹保憲仁、
村上健 |
水質環境工学下水の処理・処分・再利用 |
1993 |
技報堂出版 |
- |
- |
675-740 |
  |
○ |
  |
  |
水質浄化(緩速濾過、人工湿地) |
7 |
滋賀県 |
環境白書 平成10年度版 |
1999 |
- |
- |
- |
80-85 |
  |
○ |
○ |
  |
景観保全(保全地区、保護地区、昔通地区の定義)
その他(滋賀県による植栽管理方法) |
8 |
滋賀県生活環境部 |
ヨシ群落保全条例のあらまし-平成8年度増補改訂版- |
1996 |
- |
- |
- |
6-19 |
  |
  |
  |
○ |
ヨシ群落保全条例文 |
9 |
びわ湖を守る県民共闘会議 滋賀県職員労働組合 |
びわ湖総合開発と滋賀県民の生活 |
1970 |
びわ湖を守る県民共闘会議 滋賀県職員労働組合 |
- |
- |
22-25,
48-79 |
  |
  |
  |
○ |
  |
10 |
橋本敏子、
井澤博文、
岡本拓、
水田満里 |
「ポット植栽による水質浄化システム」開発と地域住民の水質浄化への取り組み |
1998 |
全国公害研会誌 |
23 |
2 |
23-29 |
  |
○ |
  |
  |
水質浄化(有孔ポット) |
11 |
中村圭吾 |
湖の環境を守る人工浮島 |
1998 |
かんきょう |
23 |
1 |
38-39 |
  |
○ |
  |
  |
水質浄化(人工浮島)
生物保全(人工浮島)
護岸(人工浮島による消波) |
12 |
長谷光展 |
ヨシ、マコモのイカダ栽培で湖沼のクリーンアップ |
1995 |
福井県農業試験場 福井県園芸試験場福井県畜産試験場研究速報 |
72 |
- |
10-11 |
○ |
○ |
○ |
  |
生活環(刈り取り)
物質代謝(植物体NP含有)
水質浄化(イカダ植栽)
その他(ヨシのイカダ栽培への刈り取りの影響) |
13 |
中村圭吾 |
霞ヶ浦におけるヨシの人工浮島の研究 |
1999 |
関西自然保護機構会報 |
21 |
2 |
249-255,
p250欠 |
  |
○ |
  |
○ |
水質浄化(文献)
その他(人工浮島の機能)
文献調査 |
14 |
田中周平、
藤井滋穂、
山田淳、
市木敦之、
佐藤伊知朗 |
琵琶湖湖岸ヨシ植栽地における植栽2年目のヨシ生育状況について |
2000 |
日本水環境学会年会講演集 |
34 |
- |
504 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(水位)
マット法、土のう法、地下茎、ポット法、大株法、ビットマン法 |
15 |
原稔明、
加藤正典 |
琵琶瑚におけるヨシ植栽地での生育調査とヨシ刈り効果 |
  |
近畿地方建設局管内技術研究発表会論文集「環境・地域づくり部門」 |
  |
  |
2-1〜2-8 |
O |
  |
  |
  |
生活環(刈リ取り) |
16 |
上坂良夫、
西嶌照毅、
宇多高明 |
琵琶湖の砂浜保全及び湖辺植生環境の保全、利用に関する研究 |
1995 |
環境システム研究 |
23 |
8 |
1-6 |
  |
○ |
  |
  |
護岸(総合解説) |
17 |
中村宣彦、
山下祥弘、
北牧正之 |
琵琶湖におけるヨシ植栽 |
1993 |
ダム工学 |
- |
9 |
66-76 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(水位、底質)
ポット法、大株法、小株法、地下茎法 |
18 |
細見正明 |
湿地生態系の持続的保全、修複、創生手法の確立(文部省S) |
1996 |
人間地球系研究広報平成7年度研究成果報告書A06-E00、講演要旨 |
- |
- |
228-230 |
○ |
  |
  |
  |
発芽(塩分、温度) |
19 |
須藤隆一、
XU K-Q、
山田一裕、
千葉信男、
熊谷幸博 |
ヨシ原の創出手法の確立及びその水質浄化機能の評価 |
1996 |
建設工学研究振興会年報 |
- |
31 |
54-62 |
  |
○ |
○ |
  |
水質浄化(人エヨシ原)
種子苗、ビットマン(茎植)法 |
20 |
佐藤弘、
田沢龍三、
樫内孝信ほか |
ウェットランドシステムの開発 人口ヨシ湿地の創出と汽水域浄化 |
1995 |
アーバンインフラ テクノロジー推進会議技術研究発表論文集 |
6 |
- |
27-32 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(底質、塩分)
種子苗、群植え、ビットマン(茎植)法 |
表2.1.1 収集・整理したヨシ関連文献・資料一覧(2)
No. |
著者 |
タイトル |
発表年 |
雑誌名、 出典 (出版社) |
巻(vol) |
No. |
ページ |
分類 |
生理 ・生態 |
環境保全機能 |
植栽工法 |
その他 |
項目 |
21 |
桜井善雄 |
抽水植物群落復元技術の現状と課題 |
1990 |
水草研究会全国集会講演 |
  |
  |
69-86 |
  |
  |
○ |
  |
大株法、地下茎法、ビットマン(茎植)法、播種、付帯施設(浸食防止) |
22 |
桜井善雄 |
土木工事と水性植物群落-その現状と問題点- |
1988 |
水草研究会会報 |
- |
33・34 |
52-54 |
  |
○ |
  |
  |
景観保全(一般論)
生物保全(一般論) |
23 |
森田尚、
太田豊三 |
マット植栽法によるヨシの植栽(滋賀県水産試験場報告) |
1995 |
滋賀県水産試験場事業報告 |
1994 |
- |
90-91 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(波)
マット法 |
24 |
木村保夫 |
大湖沼における水生植物群落の復元-諏訪湖の事例- |
  |
第3章[3]発表論文:人 |
  |
  |
107-108 |
  |
  |
○ |
  |
その他(他植物の事例) |
25 |
森田尚、
鈴木隆夫 |
2)植栽されたヨシの生育状況 |
1998 |
滋賀県水産試験場事業報告 |
1997 |
- |
52-53 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(底質)
マット法、株植法 |
26 |
田中周平、
藤井滋穂、
山田淳、
市木敦之 |
琵琶湖岸ヨシ生育に及ぼす植栽工法・条件の影響 |
1999 |
日本水環境学会年会講演集 |
33 |
- |
218 |
  |
  |
○ |
  |
マット法、土のう法、地下茎法、ポット法、大株法、ビットマン法 |
27 |
中村圭吾、
門倉伸行、
大室政英、
酒井義尚、
村橋和夫、
小西正郎、
玉木和之 |
消波浮島による湖岸植生帯の保全 |
1999 |
日本水環境学会年会講演集 |
33 |
- |
122 |
  |
○ |
  |
  |
護岸(人工浮島) |
28 |
内田泰三、
丸山純孝 |
ヨシの幼苗生産に関する新たなる試み |
1998 |
日緑工誌 |
24 |
2 |
104-108 |
  |
  |
○ |
  |
倒伏法、刈取り法、浸漬法 |
29 |
山田晋 |
耕作放棄水田におけるヨシPhragmites communisの刈り取りが種構成と群落構造に及ぼす影響 |
1999 |
都市公園 |
- |
147 |
88-96 |
○ |
  |
  |
  |
生活環(刈り取リ)
他植物との関係(刈取りの影響) |
30 |
内田泰三、
丸山純考 |
刈り取り高さがヨシ(Phragmites australis(Cav.)Trin.)の再生反応に及ぼす影響 |
  |
日緑工誌 |
24 |
3・4 |
162-174 |
○ |
  |
  |
  |
生活環(刈り取り) |
31 |
天野景敏、
牧恒雄 |
堤防などの法面簡易舗装工法に関する研究 |
1981 |
東京農業大学農学集報 |
29 |
2 |
129-140 |
○ |
○ |
  |
○ |
生育場所(底質、障害物)
護岸(護岸工法)
土木技術的検討 |
32 |
田中周平、
藤井滋穂、
山田淳、
市木敦之 |
水ヨシ生育に及ぼす植栽条件の影響に関する研究 |
1999 |
環境工学研究論文集 |
36 |
- |
253-261 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(水深、地盤)
マット法、土のう法、地下茎法、ポット法、大株法、ビットマン法 |
33 |
桜井善雄、
苧木新一郎、
田代清文 |
湖岸・河岸帯の植栽時における土壌侵食防止材料の検討(第2報) |
1991 |
水草研究会会報 |
- |
44 |
100-105 |
○ |
  |
  |
  |
生育場所(底質、その他) |
34 |
桜井善雄、
渡辺義人、
村沢久美子、
滝沢ちやき |
湖沼沿岸帯における抽水植物の立地条件 |
1986 |
日本陸水学甲信越支部会報 |
- |
11 |
138-139 |
○ |
  |
  |
  |
サイズ(地下部)
生育場所(底質) |
35 |
桜井善雄、
苧木新一郎、
上野直也、
渡辺義人 |
ヨシ植栽地の土壌条件に関する実験的検討 |
1989 |
水草研究会会報 |
- |
38 |
55-58 |
○ |
  |
○ |
  |
生育場所(底質)
ビットマン(茎植)法 |
36 |
桜井善雄、
苧木新一郎、
田代清文 |
湖岸・河岸帯の植栽時における侵食防止材料の検討 |
1989 |
日本陸水学甲信越支部会報 |
- |
- |
- |
  |
  |
○ |
  |
その他(30〜50cmの若い苗)
付帯施設(浸食防止マット) |
37 |
細井由彦、
城戸由能、
三木理弘、
橋本一郎 |
ヨシの成長過程の現地観測とそのモデル化に関する研究 |
1994 |
土木学会年次学術講演会講演概要集 |
50 |
2 |
1290-
1291 |
○ |
  |
  |
○ |
物質代謝(実測、モデル)
成長モデル作成 |
38 |
陣野信孝、
梅野美佐 |
長崎県諌早市本明川水系におけるイネ科植物(ヨシ、ツルヨシ、アイアシ、オギ、ススキ)の生育地の土壌性質 |
1995 |
長崎大学教育学部自然科学研究報告 |
- |
53 |
19-26 |
○ |
  |
  |
  |
分布
生育場所(底質、水質)
他植物との関係 |
39 |
中村圭吾、
門倉伸行、
宗像義之、
島谷幸宏、
宇多高明 |
消波浮島による湖岸植生帯の復元に関する研究 |
1999 |
環境システム研究-全文審査部門論文- |
27 |
- |
305-314 |
  |
○ |
  |
  |
護岸(人工浮島) |