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国連危険物輸送専門家小委員会
 第19回会合議事概要報告
1. 会期、参加国、議題及び議長等
1.1 会期及び開催場所
  会期 : 平成13年7月2日〜6日
  場所 : 国連欧州本部(Palais des Nations、ジュネーブ)
1.2 参加国等
1.2.1 国及び国際機関
(1) 委員国:アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、チェッコ、フィンランド、フランス、ドイツ、インド、イラン、イタリー、日本、メキシコ、オランダ、ノールウェー、ポーランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国及び米国(24カ国、モロッコ及びロシア欠席)
 今回から新たに委員国としてオーストリア、フィンランド及びイランが加わった。
(2) オブザーバー国:バハマ、ブルガリア、ポルトガル、スイス及びチュニジア
(3) 国連専門機関及び政府間機関:UNEP、IAEA、ICAO、ILO、IMO、WHO、EC及びOTIF
(4) 非政府国際機関:CSPA、ECMA、E1GA、FEA、FIATA、HMAC、IATA、ICCA、ICCR、ICDM、ICPP、IRU、ISO、IRU、SEFEL、UIC及びWNTI
1.2.2 わが国からの参加者(敬称略・順不同)
  二股英雄(日本煙火協会)
  八十川欣勇(国連危険物輸送専門家委員会委員・日本海事検定協会)
1.3 議題の採択及び議長等の選出
1.3.1 議題の採択
 第17回小委員会の予定議題(ST/SG/AC.10/C.3/37)は、修正なく採択された。
1.3.2 議長等の選出
 第20回委員会(2000年12月)において今次2年間(2001〜2002年)の議長及び副議長としてMr.S.Benassai(イタリー)及びMr.F.Wybenga(米国)がそれぞれ選出されており、この二人がそれぞれ議長及び副議長に就任した。
1.4 検討結果
1.4.1 今回会合における各提案に対する検討結果は、資料UN2S11-3,UN2S11-4及びUN2S11-5の各結果欄に示した。
 
2. ガス輸送に関する追加規定
2.1 ガス輸送規定
2.1.1 ガス輸送規定は前回委員会で承認されたが、米国は未解決事項が残されていることを指摘した。小委員会はこの米国の問題提起に同意し、次回会合において本件に関するW/Gの設置して検討することとした。
2.1.2 ISOは、ガス容器(TC58)、酸素関連(TC197)及び超低温(TC220)に関するTCでの検討状況を報告した。
2.2 ガスシリンダー標札
2.2.1 標札のガスシリンダーへの貼付方法に関してIS0基準に基づき重ね貼りを認めるとするオーストリア提案(01/1)は、いかなる場合にも主危険物標札が完全に認識できなければならないとの条件付きで承認した。
 
3. タンク
3.1 タンクの構造設備規定
3.1.1 タンクの構造設備規定の改正に関するスペイン提案(01/3及び01/4)は、小委員会の同意が得られず次回会合に改めて提案することを申し出た。タンクの特別検査に関する提案(01/30)は、新造タンクについて規定しているモデル規則にこのような規定を入れるのは妥当ではないとして支持されなかった。
3.2 関連提案(第4.2及び6.7章)
3.2.1 タンク等の容量限度の削除に関する英国提案(01/18)並びに第4.2及び6.7章関連する米国の改正案(01/5)は、修正の上採択された。
 
4. コンテナによる固体物質輸送の新規定
4.1 英国/ドイツ共同提案のコンテナによる固体物質輸送規定案(01/20)については、輸送許可物質、輸送条件、海上輸送への適用等について様々な意見が出された。英国/ドイツは今回会合での意見を踏まえ、次回会合に修正案を提出することを約束した。
 
5. 小型容器、中型容器及び大型容器
5.1 性能試験
5.1.1 ISOでの国連容器性能試験の補足的基準を検討中に判明したし問題点についてのISO提案(実質的提案者は英国代表団の容器専門家)(01/24)は、その殆どが採択された。
5.2 関連提案(第4.1、6.1、6-5及び6.6章)
5.2.1 即席食品加熱用の水反応可燃性物質に関するSPPの新設に関する英国提案(01/17)は、提案のような限られた物質に対するものではなく、もっと一般的なこの種物質に適用できる規定案とするべきであるとの意見から、英国が次回修正提案を提出することといた。
 
6.感染性病原体等の輸送(第6.2章の見直し)
6.1 本議題に関する正式文書の提案はなかったが、豪州は感染性病原体等の輸送における通報に関するモデル規則の特別規定の改正をINF.Paperとして提案ししたが、十分な検討時間が必要であるとして次回に正式提案するように要請した。
6.2 事務局から生物多様性条約に基づく生物安全に関するカルタヘナ議定書(2000年1月29日採択)における遺伝子組み換え生物の取扱い、輸送、容器包装及び識別に関する規定(第18規則)の紹介があった。
 
7. 危険物の分類
7.1 物理的性状による正しい国連番号の付け方
7.1.1 危険物の物理的性状(固体、液体、溶液、溶融状)に基づくUN No.の付け方を明確にすべきであるとのオランダ提案(14/01)については次の原則が同意され、ドイツ及びオランダが次回具体的改正案を提出することとなった。
(1) 固体及び溶液は別UN No.とする。但し、溶液の輸送量が多く別UN No.とすることが必要な場合等、その適用はcase/caseとする。
(2) 現在固体/液体の双方が含まれているUN No.は、夫々別UN No.とするとする
7.2 水質汚濁物質の分類
7.2.1 水質汚濁物質の分類に関する前回会合への英国提案に対するベルギーの修正提案(01/15)については、英国がこれを考慮して次回修正して提案することとなった。この修正提案にはOECDで検討が終了した混合物の分類に関するGHS分類基準を採り入れることを要請した。
7.3 錠剤状次亜塩素酸カルシウム
7.3.1 錠剤状次亜塩素酸カルシウムの新エントリー追加に関する南ア提案(01/25)は、ドイツにおいて本物質に関する試験を実施中であることが報告され、南アはドイツと共同で次回本件に関する修正案を提出することとなった。
7.4 金属に対する腐食性基準
7.4.1 金属に対する腐食性基準に関するドイツ提案(00/24)は、継続検討されることとなり、ドイツが本件に関する追加文書を準備する。
 
8. 爆発物、自己反応性物質及び有機過酸化物
8.1 煙火の分類
8.1.1 花火(ここでは主として打揚げ花火を対象としている。)の分類基準の策定に関するオランダ提案(01/13)については、この問題が試験に多大の費用が必要とすることや等級が厳しくなれば輸送が拒否されること等から輸送しようとする花火に不適切な分類基準を適用することにあることが指摘された。この問題を解決するためには主管庁による分類基準の啓蒙や履行の確認が必要とされる等の意見が出された。
8.1.2 試験によらない(非試験)花火の分類法開発に関するオランダ提案には若干の国が賛意を示した。この方法は既に若干の国では実施されているが、それらは各国の輸送、貯蔵、使用等に関する法律の要請に適合させるために策定されている。非試験分類システムは、試験マニュアルの分類基準に基づいていなければならないことが注目された。
8.1.3 小委員会はオランダ提案の趣旨及び同国が提案した本件に関する会期外W/Gの開催を承認した。会期外W/Gは、本年10月16日〜18日、ハーグ(オランダ)で開催され、次の事項に関する提案を作成することとなった。
(1) 試験シリーズ6(a)、6(b)及び6(c)における試験結果の判定の調和
(2) 現存するシステムに基づいた非試験分類システムの開発及び勧告へのこのシステムの採入れ方法
8.2 硝安エマルジョン等
8.2.1 硝安エマルジョン等に関しては、会期外W/Gの報告書(01/06)を基礎資料としてW/Gにおいて検討された。W/Gの検討結果(UN/SCETDG/19/INF.44)は本会議において検討され、次の事項が承認された。
(1) UN3375(硝安エマルジョン等)に対するSP306(試験によりクラス1とならない物質に適用できる。)を削除し、SP309の最終文を「試験マニュアルの試験シリーズ8に合格する物質とする。」趣旨に改める。
(2) 本エントリーに対する提案包装方法P505は、包装方法の基準原則(固体・液体に対する包装法基準、PO01・PO02)に添ぐわず、実務的にもその必要性に疑問があるので、包装方法はP099(主管庁許可)とする。
(3) タンク及びIBCsによる本物質の輸送については、今後更に検討する必要があることが同意された。米国は2002年7月会合に具体的提案を行なうことに同意した。
(4) 本物質分類のための試験シリーズ8に関する分類フロー図(10.4表)案(01/06)は承認されたが、8(d)試験(Vented Pipe Test)に係る部分は[]付き(継続検討)とする。
(5) W/G報告書により提案されている8(a)試験、8(b)試験及び8(c)試験は承認されたが、8(d)試験(Vented Pipe Test)は継続検討されることとなった。
(6) クラス1となる硝安エマルジョン等の新エントリーを設けるとするスウェーデン提案(01/23)は、0332(EXPLOSIVE,BLASTING,TYPE E:Explosives, emulsion)と重複することから採択されなかった。この提案中のエマルジョン(1.5D)のタンク輸送については、既に世界的に輸送されている実績もあることから本小委員会の作業計画に含めることが同意された。
(7) 本物質に対する試験マニュアル第18節試験シリーズ8については、8(d)試験を除き採択された。8(d)試験に関する18.4.4の規定は、試験装置図を含め[]付きとされ、継続検討されることとなった。
8.2.2 8(a)、8(b)及び8(c)の各試験規定については、それぞれ18.4.1.5、18.4.2.5及び18.4.3.5にカナダ/フランス/ドイツ/英国の共同提案(UN/SCETDG/19/INF.19)による試験結果例を加えることとなった。
8.3 新UN圧力容器試験の開発
8.3.1 今回会合には新UN圧力容器試験の開発に関する提案文書がなく、討議は行なわれなかった。
 
9.I AEA放射性物質安全輸送規則との調和
9.1  IAEA事務局は、1996年版IAEA放射性物質安全輸送規則(TS-R-1/ST-1)の改訂作業について報告した。1996ST-1は第11版国連モデル規則に採り入れられており、IAEAもST-1の改正を従来の10年毎から国連勧告の改正頻度に合わせて2年毎とした。IAEAでの改正作業は200年から開始され、新改正頻度に基づく次回改正は2003年になる予定である。
9.2 1996ST-1の改正作業は2000年9月の第1回改正会合から開始され、2001年11月に次回会合が予定されている。
 
10. 化学品の分類及び表示に関する世界調和システム
10.1 有害表示の形象
10.1.1 IATAは、GHSの有害表示を検討しているILO W/Gの検討結果による有害表示の菱形形象について、GHSの対象ではあるが危険物でない物質に国連勧告の標札と同じ菱形形象を用いるのは、危険物の航空輸送において混乱が生じるので、GHSの有害表示には菱形形象を用いるべきではないことを提案した。
10.1.2 このIATA提案を米国が支持し、輸送とその他の分野での有害表示形象を分けるべきことを提案した。ICAO DGP W/GでもIATA意見を支持したが、ILO検討結果を検討する時間が少なく十分検討されなかった。
10.1.3 これに対し多数の国は、GHSの趣旨からすれば輸送を含み全ての分野で統一された表示形象を用いるべきあり、ILO W/Gの検討結果による有害表示の菱形形象を支持することを表明した。これに関しての票決結果は4(賛成):3(反対:米国、スペイン及びメキシコ):3(棄権:日本、カナダ及びアルゼンチン)となり、本小委員会はILO W/G案を支持することとなった。
10.2 引火性エアゾールの判定基準 物理化学危険性のGHS分類基準で残されていた引火性エアゾールの判定基準は、UN/ILO JWGにおいて検討されて次の最終結論が得られ、これを本小委員会が承認した。
10.2.1 引火性レベル引火性及び強引火性の2つのレベルとする。
10.2.2 引火性成分基準
(1) 引火性成分が85%以上、かつ、燃焼化学熱が30kJ/g以上のものは強引火性とする。
(2) 引火性成分が1%以下、かつ、燃焼化学熱が20kJ/g未満のものは非引火性とする。
(3) 燃焼化学熱の試験方法はASTM、ISO又はNFPAによる。
10.2.3 試験法
 エアゾールの引火性判定試験法は、着火距離試験、密閉着火試験及び泡試験とする。着火距離試験にあっては噴射器の姿勢を最も(+)の結果が得られるようにして試験を繰り返さなければならない。
10.2.4 泡試験における強引火性判定基準
泡試験において強引火性と判定されエアゾールは、次のものとする。
(1) 火炎高さが20cm以上、かつ、火炎持続時間が2秒以上のもの:又は
(2) 火炎持続時間が7秒以上、かつ、火炎高さが4cm以上のもの
10.2.5 噴射式エアゾール
 噴射式エアゾールの引火性判定基準は次ぎのとおりとする。
(1) 燃焼化学熱が20kJ/g未満のものについては着火距離試験を実施し、次により引火性を判定する。
(i) 15cm以上75cm未満の距離で着火した場合は引火性エアゾールとする。
(ii) 75cm以上の距離で着火した場合は強引火性エアゾールとする。
(iii) 15cm未満の距離で着火しなかった場合は密閉着火試験を実施し、次により引火性を判定する。
 ―Time equivalentが300s/m3以下又は爆燃密度が300g/m3以下のものは引火性エアゾールとする。
 ―上記以外のものは非引火性エアゾールとする。
(2) 燃焼化学熱が20kJ/g以上のものについては着火距離試験を実施し、次により引火性を判定する。
(i) 75cm以上の距離で着火した場合は強引火性エアゾールとする。
(ii) 上記以外のものは引火性エアゾールとする。
10.3 引火性エアゾールの表示
10.3.1 UN/ILO JWGは、ILO GHS W/Gが採択した引火性エアゾールの表示(形象、注意文言及び有害情報)に賛成することとした。
10.4 爆発物等の分類基準
10.4.1 UN/ILO JWGは、区分1.1〜1.6並びに自己反応性物質及び有機過酸化物A〜Gの定義及び判定基準をGHSに含めるべきこととした。
10.5 10.2〜10.4項までのUN/ILO JWGの検討結果は、本小委員会で承認された。
 
11. 次回第20回会合は2001年12月3日〜12日(am)に開催される予定である。なお、SCEGHS第2回会合は2001年12月12日(pm)〜14日に予定されている。








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