事業の実施状況II.[地域伝統芸能公演 その他]
10月12日(金) |
開催記念公演第一部 グランシップ中ホール
開催記念公演第二部 グランシップ大ホール
司会 吉川 精一(フリーアナウンサー)
柘植 恵水(NHKアナウンサー) |
開催記念公演第一部は「街道に刻まれた伝統芸能」をテーマとし、下田街道は静岡県河津町の見高三番叟(みたかさんばそう)から始まった。このフェスティバルの開催を祝うにふさわしい「式三番」で、古い型を残したおごそかな演目である。次からは昨年の第八回地域伝統芸能大賞を受賞した3演目が続いた。まずは山陽道、岡山県笠岡市の白石踊(しらいしおどり)で、一つの音頭と大太鼓で女踊、男踊など数種類の踊りが一つの輪になって踊られた。続いても山陽道、山口県下関市からの先帝祭上臈参拝行事(せんていさいじょうろうさんぱいぎょうじ)は、豪華絢爛の衣装を着けた太夫の「外八文字」という歩き方のあでやかな姿や、太夫に従う官女や禿、警護の行列の華やかさは観客を魅了させた。第一部の最後は信州街道、地元静岡県の水窪町からの西浦田楽(にしうれでんがく)で、中世から脈々と受け継がれてきた伝統の重みを感じさせるものであった。
開催記念公演第二部は会場を移し、「東海道をゆく」をテーマとし、多目的ホールである大ホールの特設舞台で行われた。最初は東海道の宿場である三重県鈴鹿市の広瀬町(ひろせちょう)かんこ踊りから始まった。笛や法螺貝、大太鼓が鳴らされる中、踊り手は「かんこ」とよばれる直径60cmもある大きな太鼓を胸に抱えて全身を大きく揺らしながら打ち鳴らし、勇壮な動きの踊りである。次からは地元静岡県のものが3演目続いた。まずは東海道、大井川町の藤守(ふじもり)の田遊(たあそ)びで、素朴な農作業を表現する踊りと、万燈花で飾った者が踊る華やかな踊りが好対照であった。次は東海道筋秋葉道の森町からの山名神社天王祭舞楽(やまなじんじゃてんのうさいぶがく)である。全国的にも例の無い珍しい「蟷螂(とうろう)」というカマキリの舞を演ずるのだが、舞手は頭の上に昆虫のカマキリの作り物を乗せている。このカマキリのカマが舞いに会わせて動き、観客は目を凝らして見入っていた。東海道筋下田街道の伊豆長岡町からは鵺(ぬえ)おどりである。これは「源三位頼政公の鵺退治」の故事にちなんだ「鵺ばらい祭り」で演じられるもので、踊りは舞台だけでなく会場全体を使い、鵺が観客席の間を逃げ回る際には、予め配られた豆を観客が鵺に投げ付け、会場全体が沸いた。続いてはまた東海道、神奈川県小田原市の箱根馬子唄(はこねまごうた)・長持唄(ながもちうた)である。客席後方の通路に柘植アナウンサーを乗せた山駕篭が登場し、チョンマゲ頭で雲助姿の駕篭掻きが担ぎ、リズミカルな掛け声とともに舞台に向い、途中で数回ひと休みする際に長持唄を歌い、舞台に到着してからは、馬の蹄の音と鈴を伴奏に馬子唄を朗々と歌い上げた。1日目最後の演目は昨年の第八回地域伝統芸能大賞の一つである奥州街道筋の栃木県烏山町の烏山(からすやま)山あげ祭りである。竹と和紙でできた高さ7.5mもある舞台背景である「山」を人力で立ち上げ、やはり竹や和紙でできた大道具である「館」の前で、常磐津の三味線にのって所作狂言が演じられた。「山」は途中で1回切り返しにより背景が変わり、「館」は途中人力で数度180度回転させられる度に背景が変わり、観客からはその度にどよめきの声が上がっていた。天井の高い大ホールでなければできない演目である。
全ての演技が終了した後、烏山山あげ祭りの背景のままの舞台上に、出演者全員が勢揃いしフィナーレを迎え、この日の終演となった。
記念公演第一部 (10月12日 グランシップ中ホール)
オープニング「東海道五十三次」のスライド上映
見高三番叟(静岡県河津町)
白石踊(岡山県笠岡市)
先帝祭上臈参拝行事(山口県下関市)
西浦田楽(静岡県水窪町)
司会者によるインタビュー
記念公演第二部 (10月12日 グランシップ大ホール)
広瀬町かんこ踊り(三重県鈴鹿市)
藤守の田遊び(静岡県大井川町)
山名神社天王祭舞楽(静岡県森町)
鵺おどり(静岡県伊豆長岡町)
箱根馬子唄・長持唄(神奈川県箱根町)
烏山山あげ祭り(栃木県烏山町)
レセプション「出演者交歓の夕べ」 |
10月12日(金)19:30〜21:O O
於:ホテルセンチュリー静岡「クリスタルルーム」 |
第1日目の式典・公演を無事終了したその夜、会場をホテルセンチュリー静岡に移し、「出演者交歓の夕べ」が開催された。高円宮同妃両殿下をはじめ、各出演団体の代表者、「地域伝統芸能大賞」受賞者並びに全国、県内のご来賓など約200名余りが出席した。
交歓会は「駿府木遣」が流れるなか高円宮同妃両殿下のご入場で始まり、歓迎の舞「清沢神楽」、歓迎挨拶と鏡開き、乾杯のあと、会半ばには出演団体の紹介、「大道芸パフォーマンス」の披露と体験が行われた。会場内では、いずれも静岡県内産品を材料にした料理に舌鼓を打つ姿や、両殿下及び県内外の出演団体の方々の談笑の輪が広がり、終始和やかなうちに終了した。
駿府木遣 (静岡県静岡市)
清沢神楽(静岡県静岡市)
出席者とお話をされる両殿下
雛のつるし飾り(静岡県伊豆長岡町)
10月13日(土) |
地域伝統芸能公演 グランシップ大ホール
司会 吉川 精一(フリーアナウンサー)
柘植 恵水(NHKアナウンサー) |
この日の地域伝統芸能公演は「東海道を東へ北へ、街道をゆく」をテーマとし、まずオープニングに東海道筋下田街道の静岡県下田市の下田太鼓(しもだだいこ)が勇ましい演奏で会場の雰囲気を盛り上げていった。中仙道筋巡礼街道の岐阜県久瀬村の東津汲鎌倉踊(ひがしつくみかまくらおどり)は、踊り手が背負う「ホロ」と称する長さ2m60cmのクジャクの羽根を形どった飾りがきらびやかに揺れ動き、華やいだ舞台となった。
次からは地元静岡県からのものが3演目続いた。東海道筋秋葉道の春野町の勝坂神楽(かつさかかぐら)は神楽獅子舞だが、舞手も笛や太鼓の囃子方も全て女性の着物を纏っているのが面白い。東海道筋姫街道の細江町からは細江神社祇園(ほそえじんじゃぎおん)ばやしである。「デビキ」という幕や竹や提灯で飾り付けた太鼓台を曳き回し、笛、太鼓、鉦のお囃子を賑やかに演奏しながら練り歩き、夏祭りの雰囲気が一気に盛り上がっていった。東海道筋秋葉道の引佐町からの寺野(てらの)のひよんどりは鬼の舞を披露した。赤鬼の太郎、黒鬼の二郎、青鬼の三郎、それぞれかわいい名前のついた鬼が出てくるのだが、この鬼の動きがユーモラスで観客の笑いを誘っていた。
東海道をさらに東へ北へ進み、街道の出発点である東京都からは葛西囃子(かさいばやし)である。このお囃子は江戸の祭囃子のルーツであり、それが神田囃子や目黒囃子となり江戸中に広まり、そして参勤交代の武士により全国へ広まったのである。軽快なテンポのお囃子も、おかめやひょっとこの踊りも獅子舞も洗練されている。
江戸を通り過ぎ、水戸街道からは茨城県水戸市の水戸大神楽(みとだいかぐら)が登場。寿獅子舞と縁起の良い名前をつけた曲芸を演じたのだが、出刃包丁の切っ先での皿回しなど、その卓越した技に観客からは感嘆の声が上がっていた。
さらに北に進み、奥州街道筋小本街道の岩手県岩泉町の中野七頭舞(なかのななずまい)が登場。これは神楽舞の一部で、舞手は7組に分かれており、それぞれ太刀や薙刀、杵など7種類の採物の内の1つを持ち、舞い方もそれそれ違うのだが、囃子は1曲で、ある時は交代で、ある時は全員で一斉に舞い、またその舞も跳んだり撥ねたり躍動感あふれるものであり、観客からはおしみない拍手が送られた。
前の演技の余韻がさめぬ内にフィナーレとなり、この日の出演者全員が舞台に再登場し、2日目の終演となった。