骨の健康:基礎から実践へ
江澤 郁子
〔略歴〕
昭和38年 |
日本女子大学大学院家政学研究科
食物・栄養学専攻修士課程修了
日本女子大学家政学部食物学科
助手、講師、助教授を経て |
昭和60年 |
日本女子大学家政学部食物学科教授〜現在に至る |
昭和53年 |
学位取得 医学博士(東京大学) |
平成4年 |
日本女子大学家政学部通信教育課程長(〜平成7年) |
平成8年 |
日本女子大学家政学部長・理事(〜平成11年) |
平成12年 |
日本女子大学理事〜現在に至る |
平成13年 |
日本女子大学大学院人間生活学研究科委員長(現在に至る)
日本女子大学大学院家政学研究科委員長兼務(現在に至る) |
〔社会における活動など〕
文部科学省 大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)特別委員
文部科学省 学校法人運営調査委員、厚生労働省 健康科学総合研究評価委員
東京都骨粗鬆症予防対策事業推進委員
財団法人骨粗鬆症財団理事、財団法人日本食生活協会理事、
東京骨を守る会会長、他評議員・委員
〔受賞〕
昭和62年 |
日本家政学会賞受賞(カルシウム代謝に関する研究) |
平成8年 |
日本栄養・食糧学会賞受賞
(カルシウム代謝および骨粗鬆症予防の基礎および応用に関する研究) |
平成8年11月 |
社団法人全国栄養士養成施設協会より表彰 |
平成9年10月 |
栄養士養成功労者として厚生大臣より表彰 |
平成13年4月 |
平成13年度日本農学賞受賞
(カルシウム代謝および骨粗鬆症予防の基礎および応用に関する研究)
第38回読売農学賞受賞
(カルシウム代謝および骨粗鬆症予防の基礎および応用に関する研究) |
平成13年11月 |
紫綬褒章受章
(動物生理・代謝学研究) |
「体」という字は、以前は「體」と書きました。つまり、健康な体づくりは豊かな骨づくりが基本です。
骨は、主にコラーゲン(たんぱく質の一種)を主成分とする基質と、リン酸カルシウムを主成分とする骨塩から成り立っています。このうち、たんぱく質は国民栄養調査結果からみても必要量を充足しており、リンについては過剰摂取の心配はあっても、不足することはほとんどありません。ところがカルシウムだけは、この飽食時代といえども、いまだに不足状態にあります。
生体におけるカルシウム量は、成人で約1kgですが、このうち99%強が骨と歯に、残り1%弱が血液や体液、軟組織中にあります。ここで、とくに重要なのが生命活動に直接関わる血液中のカルシウムで、常に一定量に維持されています。したがって、カルシウム摂取不足が続くと、これを補うために、骨を犠牲にしてまでも、骨からカルシウムを溶かし出すようにカルシウム代謝調節因子により、巧妙に調節されています。
そこで、栄養バランスのとれた食生活はもちろんのこと、カルシウム不足にならないようにカルシウムを多く含む食品を積極的にとるよう、献立や調理法の工夫に心がけることが大切です。
また、近年とくに食品のもつ機能性が注目されるようになりました。たとえば、カルシウム供給源としての代表的な牛乳・乳製品に含まれるたんぱく質や乳糖が、重要な栄養素であるばかりでなく、カルシウムの吸収を促進するとか、微量に含まれる乳塩基性たんぱく質が、骨形成に関わる骨芽細胞を活発にし、骨破壊に関わる破骨細胞の活性を抑制するなど解明されてきています。また、大豆に含まれるイソフラボノイドが骨を護る働きがあることや、納豆に多く含まれるビタミンKが骨芽細胞を活発にし破骨細胞を抑えるなど、食品のもつ神秘的な機能が次々と明らかにされています。
しかし、食事はトータルで考えることが大切です。子どもの頃からの楽しい食生活や生活活動量が、その人の一生を左右するといっても過言ではないでしょう。したがって、将来を担う子ども達が、心身ともに豊かに育つためには、智育・徳育・体育とともに、それら全てに関わる「食育」が最も大切といえるでしょう。
骨の健康は、まず良い食習慣から!
〔主な著書〕
新病態栄養学双書 ―歯・骨― |
(第一出版) |
|
骨粗鬆症 ―基礎と臨床― |
(協和企画通信) |
|
日本人の食習慣の特徴と疾患 |
(第一出版) |
|
今からでも治る防げる骨粗鬆症 |
(農文協) |
|
骨粗鬆症を防ぐ食事と生活 |
(主婦と生活) |
|
女性の低骨密度・骨粗鬆症予防 |
(女子栄養大学出版部) |
|
カルシウムと骨 |
(朝倉書店) |
その他 著書、論文多数 |
本講演要旨集は日本財団の助成金を受けて作成しました。