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骨粗鬆症の予防と治療
細井 孝之
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〔略歴〕千葉大学医学部医学科卒業。昭和61年米国テネシー州バンダービルト大学医学部研究員。平成8年東京大学医学部老年病学講師。平成10年東京都老人医療センター内分泌科医長。
 
 骨粗鬆症は骨の量が減少し、その結果骨折しやすくなる病気です。このような骨折には脊椎の圧迫骨折、前腕骨の手首に近い部分の骨折、大腿骨頚部(太ももの付け根)の骨折があり、中高年齢層で発症頻度が増します。骨折は疼痛や身長の低下、背中の変形をもたらすのみならず、寝たきりの原因になることもあります。高齢化が進む現在、「健康長寿」を実現するためには骨粗鬆症の予防と治療が大切です。中高齢者の骨量は若年期に得られた骨量とその後の加齢に伴う骨量減少の程度によって決定されます。このため、骨粗鬆症の予防には、若年期により高い骨量を得ることと、骨量減少をなるべく進まないようにすることが2つのポイントになります。さらに高齢者においては骨折に結びつき得る転倒を予防することも重要です。骨量を決定する因子は多数ありますが、それらは生活習慣の中にあるものと遺伝的なものとに分けられます。これらの素因がどのようなものであるかを理解することが正しい骨粗鬆症予防の第一歩となります。成長期、青年期、壮年期、そして高齢期のそれぞれに骨粗鬆症やそれによる骨折の予防にむけた予防法があります。
 骨粗鬆症の診断を行う時は骨量の測定と鑑別診断を行います。鑑別診断とは、骨量減少をきたす他の疾患がないことを確認する作業です。最近では、血液や尿に含まれる骨由来の物質(骨代謝マーカー)を測定することによって、骨の減り方を推測することも行われています。骨粗鬆症と診断され、治療を始める時にはこのような検討を行った上で、食事・運動の指導に加えて多くの場合、薬物療法を行います。骨粗鬆症の治療薬にはさまざまなものがあり、個々の状態にあったものを選択します。骨折予防を目的として、骨量や骨代謝マーカーの推移を目安に治療を進めます。適切な治療によって、骨量の増加と骨折予防効果が期待されます。また、高齢者においては転倒予防の指導も重要です。








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