4.1.3 MCPVT圧力容器試験の研究
4.1.3.1 試験装置の検討
当該圧力容器試験装置は圧力容器、加熱装置、圧力変換器・温度センサー、及び計測記録装置から構成される密閉式低速加熱装置であり(
図及び
写真参照)、仕様については過去の事例などを参照して改良し、作業性と測定能力の向上をはかった。
(1) 電気炉(電気加熱装置)の検討
当該試験装置については、(株)カヤテック及び(社)日本海事検定協会において同一仕様の物を設置し、試験条件も統一し、ハード、ソフト両面において試験結果を評価できる体制の確立を目指した。
[1] 調査研究の経緯から、基本的には日本提案装置である消防研究所図面に基づく改良型装置の発注を行った。なお、発注先も消防研究所と同一メーカーとし整合性を計った。
[2] 電気炉部分については、初期の仕様ではパワー不足が指摘されていたので、40℃/分の昇温速度に耐えられる仕様とした。また、ブランク測定及び2検体同時測定を考慮して2個掛けの電気炉とした。
:200V、1.8KW×2カートリッジヒーター
ただし、冷却システムは保持していないので連続測定は困難であり、2回/日程度の試験回数となった。なお、当会では吹き付けクーラーの使用により冷却を行った。
[3] 電気炉へのセット時に開放状態となる圧力容器上部は、試験時には真鍮製カバーヒータにて同時加熱し、さらにグラスウール製カバーにて保温することとし(
写真参照)、圧力容器全体の温度均一性を保持することとした。
(2) 圧力容器の検討
[1] 内容積6mlの容器であるが上部導管などのステンレス溶接の作業性を考慮すると、これ以上の小型化は困難であると判断された。今回の容器作成においても、ガス漏れ返品を数回繰り返した後、溶接部位を上部から蓋底面に変更し、溶接部ガス漏れを排除した圧力容器を作成した。
[2] 圧力容器材質について、当初はSUS 316であったが、当該材質は焼き入れが出来ず、銅パッキンとの密閉性が確保できないため、容器下部のみNi-Cr-Mo鋼SNCM 439に変更した。なお、当該鋼の耐用温度は350℃である。
[3] 従来の圧力容器と今回仕様の圧力容器の形状比較を別紙写真に示した。
(3) 計測システム器具・装置
[1] シグナルコンディショナCDV,CDA-700A(アンプ):圧力変換器からのシグナルを記録装置に伝達する装置。
[2] 圧力変換器(ひずみゲージ式)PHS-100KA、10Mpa・102.0kgf/cm2、70kHz:この器具は200℃高温環境で測定可能である。
[3] メモリハイコーダ(高速波形記録計)8835-01:データ取り込み装置。最小1μs。
[4] PCへの取り込み装置一式:膨大なデータでありパソコン処理が必要、ランシステムヘの取り込みを考慮した。
(4) その他の試験器具
[1] 熱電対:常用750℃、SUS 316製、クラス2(0.75等級)、外径1.6mm。測定に際しては石英保護管を装着する。
[2] 試料容器:擦り切り5ml容量の石英管
[3] 密閉パッキン:金属なまし銅。当初提供された1mm厚の物は表面仕上げと硬度の問題で形態追随性が悪く漏れが防止出来なかったが、密閉試験用銅パッキンを導入することにより解決した。なお、専門委員より、なまし銅は測定者自身で製作加工することが無難であるとの指摘もあった。このパッキンは密閉性保持の観点から使い捨てとすることとした。
[4] 安全破裂板(Ni-Mo):35Mpa、450℃を装着した。
4.1.3.2 測定手順の検討
[1] 装置の密閉性確保の観点から容器上部の試験ごとの取り外しは行わない事とした。導管部分を試験ごとに脱着していたのでは気密性が保たれない。従って、容器上部は加熱装置直上に常時吊り下げられる形で設置することとした。また、容器下部との脱着も前記制限により電気炉直近に固定工具を用意することで対処した。
[2] 試験後のガス抜きを考慮して容器上部にガス抜きコックを付けたが、後に試験結果に影響することが分かり削除した。圧力変換器が容器に密接して取り付けられていないと、温度低下、温度低下による反応生成物の凝縮、接続部分の増加に伴う漏れの可能性の増加、導管部分の詰まり、等により測定失敗の直接原因となる。(
写真参照)
4.1.3.3 試験に使用した物質一覧(有機過酸化物)
標準的な試験物質として下記11品目を選択した。
(1) 液体試料
[1] TBPA アルキルパーエステル:t-Butyl peroxy acetate カヤブチルA-50T 純度50.3%
[2] CHP ハイドロパーオキサイド:Cumen hydroperoxide カヤクメンH 純度83.2%
[3] BPB アルキルパーエステル:t-Butyl peroxy benzoate カヤブチルB 純度99.0%
[4] BPD ジアルキルパーオキサイド:Di-t-Butyl peroxide カヤブチルD 純度99.9%
[5] BTC パーオキシケタール:1,1-Di-t-butyl peroxy-3,3,5-trimethyl cyclohexaneトリゴノックス29/40 純度39.7%
[6] DBT0 ジアルキルパーオキサイド:2,5-Dimethyl-2,5-di-(t-buthyl Peroxy)hexane-3カヤヘキサYD 純度85.5%
[7] MEKP ケントパーオキサイド:Methyl ethyl ketone peroxideカヤメックM 純度55%
(2) 粉体試料
[8] DCP ジアルキルパーオキサイド:Di-Cumyl peroxide 三井DCP 純度99.9%
[9] BP0 ジアシルパーオキサイド:Benzoyl peroxide カドックスB-75W 純度 74.3%
[10] TCP パーカーボネート:Bis-(4-t-butyl cyclohexyl)peroxy dicarbonate パーカドックス16 純度 97.3%
[11] POL ジアシルパーオキサイド:Lauroyl peroxide ラウロックス 純度 99.3%