(6) UJIターン先を選ぶときの決め手
●「仕事」と「自然」
「希望する会社や仕事があるから」(58.5%)、「山や海など、自然環境に魅かれるから」(41.8%)、「出身地もしくは出身地の近く」(30.9%)の順。
図表3-9 UJIターン先を選定時の決め手
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資料:国土交通省都市・地域整備局地方整備課「平成12年度UJIターンに関する報告書」(平成13年3月)
(7) UJIターン検討時の行動
●半数が「自治体への問い合わせ」、次いで「観光」、「体験」など現地との交流
「自治体に問い合わせする」(51.1%・Uターン希望者は62.3%)、「観光などで独自に訪れてみる」(27.8%・Iターン希望者は32.9%)、「体験ツアーに参加する」(11.9%)の順。
図表3-10 UJIターン検討時に行うこと
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資料:国土交通省都市・地域整備局地方整備課「平成12年度UJIターンに関する報告書」(平成13年3月)
(8) UJIターンに際し自治体から提供して欲しい情報と入手手段
●8割弱が「求人」。次いで「住宅」、「生活関連」情報。
●インターネットの利用が急増
「求人情報」(79.5%)、「住宅情報」(51.2%)、「生活関連情報(教育環境、医療、買物)」(42.7%)、「住宅支援情報(助成金など)」(35.2%)の順。
入手手段は「ホームページでの情報提供」(44.2%・前年より10P増)、「UJI情報誌(自治体発行)の定期的な郵送」(39.8%)、「説明会やフェア、面接会の開催」(31.0%)、「民間情報誌への掲載」(30.5%)、「東京の窓口での情報提供・相談」(25.3%)の順。
インターネットを利用した情報提供では、「ホームページ」(44.2%・10P増)、「電子メールによる情報提供」(19.7%・3.3P増)、「電子メールによる応募」(10.0%・0.8P増)と他の手段がすべて減少しているのとは対照的な結果であった。
図表3-11 自治体に提供して欲しい情報
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図表3-12 自治体からの情報入手手段
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資料:国土交通省都市・地域整備局地方整備課「平成12年度UJIターンに関する報告書」(平成13年3月)
(9) 自治体に期待する支援内容
●「就職情報」、「説明会」、「仕事体験」など就職関連が上位3位。以下住宅関連
「求人情報の提供」(43.5%)、「就職説明会やフェア、面接会の開催」(31.4%)、「企業での仕事体験」(27.4%)と就職関連が上位3位を占め、次いで「引越費用の補助」(26.1%)、「賃貸住宅や空き家の紹介、斡旋、仲介」(24.4%)、「住宅情報の提供」(23.7%)など住関連が続く。
図表3-13 自治体に期待する支援内容
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資料:国土交通省都市・地域整備局地方整備課「平成12年度UJIターンに関する報告書」(平成13年3月)
3 若者定着施策の枠組みと地方公共団体の支援制度
国及び全国地方団体のUJIターン施策や過疎対策などから、若者定着施策の考え方と枠組み、支援制度などを整理した。
(1) 若者定着施策の考え方
ア 対象者を明確化し、対象者のニーズに応じた効果的な施策対応が必要
若者定着施策を考える場合には、まず対象者を明確化し、対象者のニーズに応じた施策を複合的かつ効果的に展開することが必要である。
まず対象者は、「在住者」と「在外者」に大別される。在住者に対しては、より魅力的なまちづくりが主目的となり、働く場の確保や生活利便性を向上させる施策が中心となる。
在外者は、さらに「出身者(Uターン者)」と、それまで当地に直接縁のない「無縁者(JIターン者)」に分類される。出身者には、家業の継承や、親との同居で住宅の改築などの財産継承などへの支援に対するニーズが高い。一方、無縁者にはまず、当地のよさを知ってもらうための情報提供からはじまり、実際に当地での交流・体験などを経て、定着へといくつかの段階的な対応が必要となる。以上のように対象者によって提供すべき施策内容の違いがあることを念頭に置き、在住者、在外者それぞれに決めの細かい対応が必要である。
イ 居住環境の充実、就労機会の確保が大前提
一方で、在住・在外者に関わらず、生活者として教育、医療、買物、住居などの居住環境
の充実や、就労機会の確保は不可欠である。例えば在住者が働く場がない、土地や家賃が高
いなどの理由で流出することと、既述のUJIターン者アンケートにおいても「仕事」、「収入」、
「住居」がUJIターン時にとくに不安と感じているということは、生活者という立場では全
く同様のニーズである。居住環境の充実や就労機会の確保は、まちづくり全体に関わる大き
なテーマでもあり、総合計画をはじめ各種個別の施策事業との連携を図ることが必要である。
ウ 連携・交流による個性化と魅力あるまちづくり
本市若者層へのインタビューでは、まちのにぎわいや、伝統産業や豊かな自然、歴史文化などの地域資源を活かした、個性的で魅力あるまちづくりを求める声が各層からあった。またUJIターン希望者の約8割は、出身地以外の地域を希望(
2章2(2)参照)しており、地域の個性化を図り、魅力あるまちづくりを進めることが在住者の流出抑止やUターン促進にもつながることを示している。在住者はもとより、当地にゆかりのない人を惹きつける魅力を備えた「訪れてよく、住んでよいまち」であるかが、定着地として選ばれるまちの基準となろう。
個性的で魅力あるまちづくりには、自らの手でまちづくりを推進する市民の発掘やリーダーの育成とともに、外部との連携や交流が不可欠である。在外者との交流は在外者が地域にふれる機会となるだけでなく、地域住民が地域外の人にふれる機会でもあり、まちの魅力の再発見や、地域文化やコミュニティの再生・創造などの若者定着促進の気運づくりにもつながる。人々が訪れ、地域との交流・体験を深めるなかで、まちがにぎわいと活力を取り戻し、在住者は誇りを持って地域に暮らし、在外者は機会があればそこに住みたくなる(定着)まちへとつながっていくのである。
(2) 若者定着施策の枠組みと地方公共団体の支援制度
既述の若者定着の考え方をふまえ、全国地方団体のUJIターン及び定着施策などから、若者定着施策の枠組みを整理し、対象者毎に有効な施策を関連付けた。
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資料:財団法人地域活性化センター「これでわかるUターンJターンIターン」、国土交通省都市・整備局「平成12年度UJIターンガイドブック」、ライフデザイン研究所「生活者意識データ集'01」などから作成
4 若者定着の全国動向からみた本市の可能性と課題の整理
これまでの資料分析やインタビュー調査結果などから、本市の若者定着の可能性と課題を整理した。
(1) 外部との交流・連携を視野に入れた総合的な若者定着施策の必要性
本市では若者の定着を喫緊の課題として、平成13年3月に策定した第3次長期総合計画において若者定着プロジェクトを重点施策に位置付けており、庁内横断的な検討組織である「人口減少対策検討協議会」を設置するなど、今後全庁的な取組を行う体制を整えつつある。これまでも子どもの豊かな創造性の育成や、多世代交流を目的とした「わんぱく公園」や、にぎわいのあるまちの顔づくりとして、海南駅前周辺や中心市街地の整備、保健福祉センターの整備など施設整備(ハード志向)に重点を置いた若者定着促進施策を推進しており、施設整備においては一定の成果を上げつつある。
近年講じられた若者定着関連施策では、とくに「楽しむ場」を中心に新規施策が関係各課において実施されているが、各担当課個別の取組となっており、施策間の連携や相乗効果がみえにくいのが現状である。今後は、庁内横断組織の検討協議会との連携を図りながら、住民ニーズに即した総合的かつ効果的な施策展開が望まれる。
また、全国動向をみると他の地域との交流・連携による取組が多くみられるが、本市においては外部との交流・連携事業は積極的には行われていない。外部との交流・連携は、異文化交流による相互補完や融合による新しい文化の創造、わがまち意識(海南らしさ)の再認識や再生につながるなど、定着促進のみならず地域の活性化に寄与する。ハード(施設)からソフト(企画)へ、地域に閉じた施策対応から内外の交流・連携促進へ、個別対応から相乗効果が期待できる総合的な取組が今後の対応として望まれる。
(2) UJIターン者の受け皿としての基本条件を備える海南市
UJIターン希望者の選考条件の上位に挙げられた「自然」、「のんびり」、「趣味」、「30万人以下の中小都市」などという地域イメージから、海山の豊かな自然環境に恵まれ、「魅力あふれる生活都市 元気・快適・ほのぼの海南」をまちづくり(第3次長期総合計画)のテーマとして今後の展開を図ろうとしている本市は、まさにUJIターン者の受け皿としてのポテンシャルは高い。
(3) 生活条件の充実が必要条件
しかし、UJIターン希望者が実際に移住を決めるのは地域のイメージだけでなく、「就労の場」や「住宅」など生活条件の確保が前提となる。市内在住の学生が働く場がないといってやむなく市外へ流出していく現状や本市の地価が、和歌山市並に高く、独力で戸建て住宅を取得することが困難な状況を改善しなければ、UJIターンはもとより、若者の流出に歯止めを掛けることはできない。
(4) 推進役、調整役としての行政の役割の重要性
UJIターン希望者の半数以上が検討時にまず「自治体に問い合わせる」と回答していることや、観光や体験などの交流で地域の感触を観て、触れてから定着するかどうかを決めるという流れからも、まずは、地域住民・団体・企業・行政などが一体となって、魅力ある地域づくりを進める必要がある。そのためには、まちづくりのコーディネーターとして行政が果たす役割は大きい。
またインターネットの急速な普及による情報受発信の効果的なあり方も視野に入れる必要がある。