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序 調査研究の概要
1 調査研究の背景
 本調査研究の対象地である桑名・員弁地域(1市8町:桑名市、多度町、長島町、木曽岬町、北勢町、員弁町、大安町、東員町、藤原町)は、車社会の進展や名古屋大都市圏に接していることもあって、地域住民の生活圏の広域化が進み、地域自治体の広域圏形成がなされている。広域圏では、ゴミ処理、消防など基礎的な事業についての広域処理は実現しているが、住民の生活の広域化に対応した各種行政サービスの拡充が必要となってきている。
 一方で、図表 序-1に示したように、情報通信基盤を形成するインターネットは世帯普及率が3割を越え、携帯電話を通じ個人にも急速に普及しつつある。行政サービスについても電子政府・電子自治体化がe-JAPAN戦略(5年以内に日本を世界最先端のIT国家にしようとする国家戦略。平成13(2001)年1月策定)の重点施策とされて、急速に進んでいる。電子自治体化は各自治体の行政効率化を果たすだけではなく、オンライン申請や電子認証などを通じて地域住民がどこでも行政サービスを享受できるようになる。まさに広域生活対応の事業とみることができよう。
 地域のほとんど全ての人が、地域に根ざしたサイトにおいて自治体の認証を得て、安心して取引をし、広域行政サービスを受ける新たな生活圏としての「桑名・員弁デジタルコミュニティ(※)(仮称)」が形成される時期も間近いのではないだろうか。
図表 序-1 インターネット普及率の推移
2 調査研究の目的と範囲
 本調査研究は、地域の経済社会、地域自治体を巻き込みつつ、急速に進展するIT化の中で広域連合が構成自治体と連携して提供するべき行政情報サービスのあり方を検討するものとし、インターネットを活用した広域的地域情報システム「桑名・員弁デジタルコミュニティ(仮称)」構築に向けた取組方向と課題の明確化を目的とする。
 調査研究に際しては、並行して進められている北勢地域電子自治体構想との連携を考慮し、「広域的な行政情報の提供」、「広域的な公的施設の電子予約」、「行政機関をまたがる電子相談」などの公的情報サービス、市民団体や企業、住民間の広域的情報交換、BtoC (Business to Consumer:企業が消費者を相手に行う電子商取引)などの広域的なサービスに重点を置いて検討する(図表 序-2)。
図表 序-2 本調査研究の範囲
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3 調査研究の視点
(1) 自治体業務の内容、生活の広域化をふまえて広域行政情報サービスのあり方を検討
 地域住民の生活は、通勤、通学、購買、通院などさまざまな面で広域化し、情報やサービスを行った先々で入手している。浜松市を始めとして、多くの自治体もこうした状況に対応して、体制やシステムに知恵を絞り、その境界を越え、連合してサービス提供を開始している。また、多くの法定委任業務も平成15(2003)年までには法制度面を含めオンライン化の目処がたてられようとしている。
 桑名・員弁地域においても、住民それぞれの生活の広がりを的確に捉え、自治体業務の内容、先進事例におけるサービスの状況をふまえて、住民の生活状況に合わせた広域行政情報サービスのあり方を検討する必要があると考える。
(2) 情報ネットワークに載せるべき広域サービスを明確化
 広域サービスも、新宿で埼玉県内市町村の行政サービスを行う埼玉県領事館のように、情報ネットワークによらなくても実現されるものは多い。利用頻度を考えると情報サービスに載せる必要のないサービスもある。
 住民の利用状況、利用者の生活時間、位置、サービスに必要な情報基盤整備状況、電子自治体の動向などを多面的に評価し、広域情報ネットワークで実現することが、効果的な広域行政情報サービスを明らかにすることとしたい。
(3) 広域圏と構成自治体、住民、地域産業が連携して「桑名・員弁デジタルコミュニティ(仮称)」を構想
 広域圏や自治体だけのサービスで、地域住民にとってのポータルサイト(※)が実現されるわけではない。日頃サービスや商品を提供する構成自治体、地域の企業、情報発信に積極的な地域住民団体、個人などが密接に協力して、情報やサービス面で厚みのあるものとすることで、はじめて多くの人々を引き寄せる地域ポータルサイト(住民や企業、来訪者が必要とする地域情報が統合され、利用者に使いやすい形で提供されているネットワーク上の場所)「桑名・員弁デジタルコミュニティ(※)(仮称)」実現の可能性が出てくる。
 今回の調査では、さまざまな主体の情報発信力を捉え、委員会や幹事会、電子会議などにおいて構成自治体、地域企業のメンバーが討議することを通じ、桑名・員弁デジタルコミュニティにおける情報発信、情報サービスの可能性を発見することを目指す。
 
 (注)(※)印は、資料編の用語説明を参照。以下同様。
4 調査研究の流れ
 本調査研究は、以下のような流れで実施した(図表 序-3)。
図表 序-3 調査研究の流れ
5 調査研究体制
(1) 実施主体
 本調査研究は、桑名・員弁広域連合と、(財)地方自治研究機構の共同調査研究事業として実施した。
(2) 実施体制
 本調査研究にあたり、有識者による調査研究会を設置し、検討を行った。また、委員会のもとに幹事会を設け、本調査研究の具体的な推進に必要な事務・調査、調整を行った(図表 序−4)。
(3) 組織構成
 委員会および事務局の構成は以下の通り。
(委員会)
○学識経験者
○圏域内関連情報通信事業者
○各種団体
○広域連合構成自治体担当課室長
○桑名・員弁広域連合
○(財)地方自治研究機構
(幹事会)
○広域連合構成自治体担当課長
○広域連合構成自治体担当職員
(事務局)
○桑名・員弁広域連合
○(財)地方自治研究機構
(基礎調査機関)
○(株)富士総合研究所
図表 序-4 組織構成








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