序 研究の概要
1 背景と目的
少子高齢化や環境問題の深刻化などを背景に、地方自治体の行政課題は、福祉、子育て(教育)、環境、地域づくりなど、市民に身近な生活課題へとシフトしつつある。
また、地方分権の推進への対応上、自治体の施策展開も市民参加や市民団体との“協働”(ここでは、“協働”を市民や市民団体と行政とのイコール・パートナーにもとづく協力関係と定義する。つまり、“協働”は市民参加が発展した形態といえる)により推し進めていくことが重要になりつつある。
藤枝市では、地方自治体を取り巻くこうした環境変化に対応し、第四次総合計画(平成13年度〜)において、「市民の行政への参加の仕組みづくり」と「(市民団体などによる)市民活動の支援」を充実させることにより“市民参加のまちづくり”を推進していく方針であり、今後の施策展開が期待されている。
一方、NPO法(特定非営利活動促進法)の制定を契機に、今後はNPOやボランティア団体の活動が活発化することが予想されている。NPO・ボランティア団体は、福祉や教育などの特定分野において、高い専門性や強い意思を有する地域の有志からなる団体(ここではテーマ型団体と呼ぶ)である。藤枝市では伝統的に自治会などの地縁団体の活動が活発であり、様々な分野において重要な役割を果たしてきたが、これらの地縁団体とは異なる分野において異なる活動が期待される。
上記のような背景にもとづき、本調査では、市民団体へのアンケート・ヒアリング等により市民活動の実態と支援ニーズを把握・分析し、協働に関する先進的な事例をもとに、藤枝市における市民団体との“協働”のあり方と支援策を明らかにすることを目的とする。
注) 用語の解説
市民活動:市民が自主的に行っている営利を目的としない活動で、地域運営に必要な社会的な活動をいう。
市民団体:本研究では、市民活動を主たる活動としている団体で、趣味などの自己実現や会員相互の親睦だけを目的とする団体は基本的に対象としていない。市民団体は、自治会・町内会といった地縁団体と福祉や環境、教育といった特定のテーマ・分野に関する活動を行うテーマ型団体に大きく分けられる。
市民参加:市民がワークショップヘの参加や公園の清掃など地域運営に参加すること。一部の市民参加は協働と捉えることもできる。