日本財団 図書館


(3) 浦賀地区
 
ア 主要視点場からの眺望調査
 
(ア) 建物の配置・階高の状況
 「平成7年度 神奈川県都市計画基礎調査」において示された建物階高の調査結果、及び現地調査を基に、対象地区内の建物の配置・階高の状況の把握を行った。
 調査結果は以降に示す(図表4-13)が、浦賀地区における建物の配置、階高の特徴は以下のようにまとめられる。
 
● 湾奥部の埋立地に立地する住友造船所
 湾の最奥部の埋立地には、住友重機械工業横須賀造船所浦賀工場が立地しており、周辺一体には、工場建物やクレーンをはじめとする工作施設が建ち並んでいる。
 
● 浦賀駅周辺に立地する商業施設
 京浜急行浦賀駅周辺には、商業施設が立地している。これら建物は概ね2〜3階程度の低層の建物である。
 
● 湾沿いの低地部に立地する低層の戸建住宅
 住友造船所より湾口側の海沿いの低地部一帯は、東岸部、西岸部共に、低層の戸建住宅が主である。
 
● 湾沿いの低地部に立地する大規模高層マンション
 しかしその一方で、湾沿いの低地部には10階以上で規模の大きい高層マンションが3棟立地している。1棟は東岸側の低地部に立地する「ライオンズヒルズ横須賀浦賀」であり、残りの2棟は西岸側のシティマリーナヴェラシスの一角に立地する「ヴェラシス浦賀1番館」「ヴェラシス浦賀2番館」である。
 
● 谷筋(谷戸)に立地する低層住宅
 沿岸の低地部から内陸部に向かって続く、細い谷筋(谷戸)には、低層住宅の立地がみられる。
 
● 丘陵上部の低層住宅団地
 凹状の湾部を取り囲む丘陵斜面地の上部には、低層の戸建て住宅団地が立地している。
 
(イ) 主要視点場からの眺望の状況
 
a 視点場の選定
 浦賀地区は、空間モデルにおける「浦モデル」に該当する地区であり、市街化以前は「湾両側の丘陵地から、内水面(湾)越しに、対岸の集落とその背後の丘陵地の緑が眺められること」「湾口の端部から、周囲を緑豊かな丘陵斜面地に抱かれた集落を、内水面越しに見返すことができること」「海と直交する道路や坂道から水面及び対岸が見通せること」が、本地区の空間構造に根ざした景観上の大きな特徴であったと考えられる。
 以上から、主要視点場としては、湾の左右岸の斜面上に立地し、湾の水面及びそれぞれの対岸を俯瞰できる神社として「[1]西叶神社」「[2]東叶神社」を選定した。
 また、湾口部の突端に立地し、周囲を丘陵斜面地に囲まれた浦賀地区全体を見返すことのできる視点場として「[3]燈明堂」を選定した。
 さらに、沿岸の低地部から内陸部に向かって続く細い谷筋(谷戸)の坂道上の視点の一つとして「[4]浦賀文化センター前の坂道」を選定した。また、湾沿いの道路上の視点の一つとして「[5]県道209号上」を選定した。
図表4-12 視点場とその選定のポイント(浦賀地区)
視点 選定のポイント
[1]西叶神社 湾の西岸の斜面に立地し、水面及び対岸を俯瞰する視点として
[2]東叶神社 湾の東岸の斜面に立地し、水面及び対岸を俯瞰する視点として
[3]燈明堂 湾口部の突端に立地し、周囲を丘陸斜面地に囲まれた地区全体を見返す視点として
[4]浦賀文化センター前の坂道 坂道から、湾の水面及びその対岸を見通す視点として
[5]県道209号上 湾沿いの道路上の視点として
 
 上記「[1]西叶神社」「[2]東叶神社」「[3]燈明堂」については、古くからの特別な場所であることから、そこからの眺めは古くよりこの地区を代表する眺望として位置づけられる。
 これに対して、「[4]浦賀文化センター前の坂道」「[5]県道209号上」は、あくまでも地区内に数多く存在する谷筋(谷戸)の坂道上の視点、沿岸の道路上の視点の1つであるが、その中でも現在の浦賀の景観の特徴が明示できる視点場として選定した。
 
b 眺望の状況
 前記[1]〜[5]の視点場からの眺望の状況を、次頁以降にまとめて示す。また、次頁以降に、対象地区に立地する建物の階高の状況と主要視点場の位置図を示す(図表4-13)。
視点[1]: 西叶神社
《眺望の特徴》
 湾の内水面及び、水面越しの対岸の丘陵斜面地への眺めが得られ、浦賀地区の地形構造に根ざした特徴的な景観が比較的保全されている。
 しかし部分的には、沿岸部に立地する3階建ての建物によって、対岸の丘陵斜面地が隠されており、今後予想される建物の立て替えなどに伴って、水面及び対岸への眺めがさらに阻害される点が危惧される。
 
視点[2]: 東叶神社
《眺望の特徴》
 浦賀地区の地形構造に根ざした眺望である、湾の内水面及び、水面越しの対岸の丘陵斜面地への眺めが保全されている。
 しかし部分的には、対岸に立地する高層マンションによって、その背後の丘陵斜面地のスカイラインが切られており、今後予想される建物の高層化に伴って、このような事態がさらに進展される点が危惧される。
 
視点[3]: 燈明堂
《眺望の特徴》
 沿岸部に立地する高層マンションによって、背後の丘陵斜面地及びそのスカイラインが隠されている。
視点[4]: 浦賀文化センター前の坂道
《眺望の特徴》
 埋立地に立地する造船所施設によって、水面を見ることができない。さらに、対岸に立地する高層マンションによって、その背後の丘陵斜面地の緑が大幅に隠されており、谷筋の坂道からの特徴的な景観が大きく阻害されている。
視点[5]: 県道209号上
《眺望の特徴》
 埋立地に連続して造船所施設が立地していることから、海への視界が完全に遮られている。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION