(2) 秋谷地区
ア 主要視点場からの眺望調査
(ア) 建物の配置・階高の状況
「平成7年度 神奈川県都市計画基礎調査」において示された建物階高の調査結果、及び現地調査を基に、対象地区内の建物の配置・階高の状況の把握を行った。
調査結果は以降に示す(図表4-10)が、秋谷地区における建物の配置、階高の特徴は以下のようにまとめられる。
● 海岸線を通る国道134号沿いに点在する中高層マンション
海岸沿いを通る国道134号の沿道一帯の低地は第一種住居地域に指定されており、低層の戸建住宅の立地が主である。その一方で、10階以下の中高層マンションも幾つか点在しており、これらのいくつかは、国道の海岸側に海に面して立地しているものもみられる。
● 丘陵斜面地に点在する低層住宅
都市計画区域に指定された丘陵斜面地には、主に低層の戸建て住宅が立地している。これら住宅は、主に斜面の比較的低い位置に立地しており、丘陵の頂部は開発が行われていない場合が主である。しかし、その一方で、仲里地区では丘陵の頂部に都市計画区域(第一種低層住居専用地域)が指定されており、低層の住宅が立ち並んでいる。
● 谷筋に立地する低層住宅地内陸の丘陵部から相模湾に流れ込む浜田川、久留和川沿いに形成された谷筋には、主に低層の住宅が立地している。
(イ) 主要視点場からの眺望の状況
a 視点場の選定
秋谷地区は、空間モデルにおける「磯浜モデル・丘陵迫り型」に該当する地区であり、市街化以前は「丘陵斜面地から水面(海)、弓状の汀線(海岸線)が見晴らせること」「海上から丘陵斜面の緑と集落が眺められること」「汀線の端部から、弓状の汀線、後背の丘陵斜面地が眺められること」「海と直交する道路や坂道から海への通景が得られること」が、本地区の空間構造に根ざした景観上の大きな特徴であったと考えられる。
以上から、主要視点場としては、海岸の突端に立地し、海岸線及び、背後の丘陵斜面地を眺める視点場として「[1]長者ヶ崎」 「[2]立石公園」 「[3]久留和漁港」を選定した。
また、丘陵斜面上に立地し、水面(海)、海岸線を俯瞰できる神社・仏閣として「[4]熊野神社」を選定した。
さらに、沿岸の低地部から内陸部に向かって続く細い谷筋(谷戸)の坂道上の視点の一つとして「[5]浜田川沿いの坂道」を選定した。
上記[1]〜[4]については、古くからの特別な場所であることから、そこからの眺めは古くよりこの地区を代表する眺望として位置づけられる。
これに対して、[5]はあくまでも地区内の坂道上の視点の1つであるが、その中でも現在の浦賀の景観的特徴が明示できる視点場として選定した。
なお、現代の秋谷地区においては、海上の視点は一般的ではないことから、これについては特に視点の設定を行っていない。
図表4-9 視点場とその選定のポイント(秋谷地区)
視点 |
選定のポイント |
[1]長者ヶ崎 |
海岸の突端に立地し、海岸線及び、背後の丘陵面地を見返す視点として |
[2]立石公園 |
海岸の突端に立地し、海岸線及び、背後の丘陵面地を見返す視点として |
[3]久留和漁港 |
海岸の突端に立地し、海岸線及び、背後の丘陵面地を見返す視点として |
[4]熊野神社 |
丘陵斜面上に立地し、水面(海)、海岸線を俯瞰する視点として |
[5]浜田川沿いの坂道 |
坂道から、水面(海)を見通す視点として |
b 眺望の状況
前記[1]〜[5]の視点場からの眺望の状況を、次頁以降にまとめて示す。また、次頁以降に、対象地区に立地する建物の階高の状況とともに、主要視点場の位置図を示す(図表4-10)。
視点[1]: 長者ケ崎
《眺望の特徴》
海岸道路沿いの建物の高層化は進行しているものの、立石方面へ続くと水際線に沿った印象的な眺めは保たれている。
また、丘陵斜面部については、市街化の進行に伴い斜面上の宅地が目立ち始めている。
視点[2]: 立石公園
《眺望の特徴》
海岸道路沿いの建物の高層化は進行しているものの、長者ヶ崎へと続く水際線に沿った印象的な眺めは保たれている。
また、丘陵斜面部については、市街化の進行に伴い斜面上の宅地が目立ち始めている。
視点[3]: 久留和漁港
《眺望の特徴》
海岸道路沿いの建物の高層化は進行しているものの、久留和湾部の水際線に沿った印象的な眺めは保たれている。
丘陵斜面部については、市街化の進行に伴い斜面上の宅地が目立ち始めている。
視点[4]: 熊野神社
《眺望の特徴》
海岸道路沿いの建物の高層化は部分的には進行しているものの、海への眺望は保たれている。
視点[5]: 浜田川沿いの坂道上
《眺望の特徴》
沿岸部に高層の建物が立地しておらず、海への通景は保たれている。
図表4-10 秋谷地区の建物階高の状況と主要視点場の立地
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