第2章 地域間交流事業の動向
1 全国における地域間交流事業の動向
(1) 地域間交流事業の取組状況
●計画中も含めて回答団体(59.4%)の約8割の地域で地域間交流事業を実施
(財)地域活性化センターが平成10年9月に全国市区町村(計3,255団体)を対象に行ったアンケート調査結果(1,952団体が回答、回収率59.4%)によると、回答市区町村の約77%が「地域活性化のための連携・交流」を実施しており、計画中の団体を含めれば約8割の市区町村が地域間交流事業に取組んでいる。
また「取組を行っていない」(20.3%)理由としては、「ニーズがない」(34.3%)という消極的な回答が第2位に挙げられているのの、「きっかけがない」(37.5%)、「事業資金の不足」(21.4%)、「話し合いの場がない」(20.7%)、「地域資源の不足」「人材不足」(ともに18.6%)など地域間交流事業の重要性は認識しているが、これらの理由により具体的な取組に至っていないことがわかる(図表2−1)。
図表2−1 地域間交流事業の取組状況
資料:(財)地域活性化センター「地域間の連携と交流のあり方に関する調査研究」平成10年度
(2) 地域間交流事業の目的
●経済振興はもとより、教育・文化振興、意職高揚など地域全体の活性化を目指す
また、同センターが平成3(1991)年5月に全国市区町村に行った調査(計3,238団体、回答率100%)で地域間交流事業の目的をたずねているが、「経済の活性化」(14.8%)を筆頭に、「教育・文化の振興」(13.1%)、「情報交換・提供の場」(11.7%)、「人材育成」(8.8%)、「住民意識の高揚・視野の拡大」(8.1%)など地域住民や地域文化の育成など地域全体への還元を期待している(図表2−2)。
図表2−2 地域間交流事業の目的
(単位:%)
資料:(財)地域活性化センター「地域間交流とまちづくり」平成4年度
(3) 地域間交流事業の形態
●「エリア型」(57%)、「点と点型」(33%)、「軸型」(8%)など地域の特性に応じた多様な形態を持つ
交流・連携の形態では、広域行政圏やその一部、県境や山岳の周辺圏域など「一定のエリアを形成している連携」(以下「エリア型」)が過半数(56.5%)を占め、次いで都市・農村交流やサミット提携などの点と点の連携」(以下「点と点型」)が33.0%、道路、河川などに沿って広域的に展開する「軸状につらなった連携」(以下「軸型」)は8.1%となっている(図表2−3)。
図表2−3 地域間交流事業の形態
資料:(財)地域活性化センター「地域間の連携と交流のあり方に関する調査研究」平成10年度
※形態別の事例は本資料4頁「交流・連携事例全国一覧」を参照
区分 |
連携パターン |
エリア型 |
■既存の圏域
・広域行政圏、ふるさと市町村圏、郡単位での取組など
・地域開発・振興制度による圏域(地方生活圏、地方拠点都市地域、テクノポリス指定地域、ニューメディアコミュニティ指定地域、脳立地法による集積促進地域、半島振興対策地域など)
・協議会や連合会(商工会連合会、JA連合会、過疎地域活性化協議会構成市町村、地場産業振興協議会構成市町村など)
■既存の圏域を越えた近隣市町村によるもの
・複数の行政圏域にまたがるもの |
軸型 |
■地理的なつながりによるもの(歴史的文化的つながりが背景となるものも多い)
・道路 (高速道路、旧街道など) =テーマ例「住民交流」 「観光振興」
・河川 (川の両岸や川上、川下など) =テーマ例「環境」
・山岳 (名山の周辺など)=テーマ例「過疎」 「高齢化」
・その他 (鉄道、沿岸、島嶼など) |
点と点型 |
■同名
・市町村名に同じ文字・音を含むもの
■歴史適文化的なつながり
・歴史的事件や伝説など
■経済的文化的背景が類似しているもの
・産業、観光資源、伝統芸能、特産品など
■環境の違い
・都市と農村、海と山、豪雪地帯とその他など
■民間活動
・ボランティア、企業による福利厚生活動など |
資料:図表2−3と同様
(4) 地域間交流事業の内容
●「イベント関連」、「情報の共同発信」、「教育・文化交流」などが多い
●近年、防災や施設の共同利用などの実利的な事業やITの活用が目立つ
取組んでいる事業内容については、「広域イベント・イベント共催」(37.6%)、「情報の共同発信」(29.3%)、「サミット開催・協議会の設置」(27.9%)、「教育・文化交流」(27.0%)などが多く行われている(図表2−4)。
また、事業内容の経年変化(下図)をみると、1985年頃から取組が急増している。特に近年では「経済提携」、「広域イベント・イベント共催」、「情報の共同発信」、「遠隔地での防災協定」、「公共施設の共同設置・利用」など、実利的な事業やITの利活用が増加している(図表2−5)。
図表2−4 地域間交流事業の内容
注)経済提携:産直提携、物産展共催、商品の共同販売・開発、カード共同発行など
教育文化交流:体験学習、農村留学、ホームステイなど
情報の共同発信:ガイドブック・広域誌の共同発行、インターネット共同運営など
資料:図表2−3と同様
図表2−5 地域間交流事業の経年変化
資料:図表2−3と同様