2.10 減速逆転装置
舶用減速逆転機とは、主機関の回転数を減速してプロペラ軸に伝えたり切ったりすると共にプロペラ軸を任意の方向(右又は左)に回転させる装置で、通常船舶の推進装置として用いられるものである。
この装置の主要部分は、クラッチ部(摩擦により機関の出力をプロペラに伝えたり切ったりする部分)と歯車部(機関の回転を減速並びに切ったりする部分)で構成されている。
1) クラッチ
(1) クラッチの種類と構造
クラッチには、いろいろな構造のものがあり、最も簡単なものは船外機などに用いられている噛合式クラッチ(通常はドグクラッチと言っている)もあるが舶用機関に多く使用されているのは摩擦式クラッチである。摩擦式クラッチにもいろいろな形式のものがあり、種々分類されているがその一例を下記に示す。
(イ) ユニオン式クラッチ
小形機関に広く用いられてきたクラッチで、2・202図に示すような部品で構成され、ハウジングに拡張環を固定すると、推力軸はクランク軸と同じ方向に回転し、ハウジングを制動帯で固定すると推力軸は、クランク軸と反対方向に回転する。
なお、この拡張環式のユニオンクラッチは、伝達トルクが大きくなるとスリップ等の問題が出てくる。2・204図に示すクラッチは、拡張環の代わりに多板式の摩擦板を使用して、伝達トルクを大きくした摩擦板式ユニオンクラッチである。このクラッチは、クラッチドラムの中に、内側と外側にスプライン状の溝を切った摩擦板を交互に並べ、テコ式の締め付け金具により締め付けることによりクラッチドラムの回転を推力軸に伝達する構造となっている。又ブレーキバンドを締め付けることにより、拡張環式ユニオンクラッチ同様推力軸は反転する。
2・202図 拡張環式ユニオンクラッチ
2・203図 拡張環式ユニオンクラッチの作動図
2・204図 摩擦板式ユニオンクラッチ